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カガクする分野

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先日の事業仕分けで科学技術予算が廃止,縮減対象となったことに大学学長および科学者からの反発が相次いだ。初の「理系内閣」であり,鳩山首相の所信表明演説で科学重視の姿勢を明確に打ち出しただけに,大きく期待を裏切られた格好となった。

初の「理系内閣」――鳩山内閣には首相を含めて4人の理系がいる。鳩山首相は東京大学工学部を卒業し米スタンフォード大工学部で博士課程を修了した工学博士である。平野内閣官房長官は中央大学理工学部,川端文部科学大臣は京大工学部,菅直人国家戦略担当相も東京工業大学理学部応用物理学科卒だ。以前の内閣にも理系出身者がいたが,今回のような重要ポストに理系を配した内閣はなかった。確かに,「初の」本格的な理系内閣だ。

2009_11_29_1.jpg2009_11_29_2.jpg 海外に目を転じてみると,ドイツ・メルケル首相はカールマルクス・ライプツィヒ大学(現ライプツィヒ大学)で物理学を専攻した理系人だ。1977年,環境相として地球温暖化防止京都会議にも出席した。イギリス・マーガレット・サッチャー元首相は,オックスフォード大で化学を学び,後に弁護士の資格を取って政治の政界に入った。
 中国・胡錦濤国家主席は精華大水利行程学部卒の技術者,温家宝首相は北京地質学院地質鉱産物第1学科地質測量及び探鉱コース卒のエンジニアだ。さらに,共産党政治局常務委員9名のうち,8名が理系である(もっとも,中国の場合,文化大革命によって文系エリートが追放されたため,残ったテクノクラートが抜擢されたからだという指摘もあるが)。

 理系は政治に向かない,無縁であるとの思い込みは,広く世界で見れば全く通用しない。むしろ,これまでの文系内閣では解決できなかった多くの問題には理系の合理性と論理が有効ではないかと期待される。この国の,科学する分野がまた広がった。