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研究者の条件

「少年ぽさ、オタク性、無邪気さ、内気さ、凝り性…」 これって私のこと?と思ったのですが、これは、朝日新聞4月23日付け別刷り紙面「be」一面の「フロントランナー」に紹介された福岡伸一さんのイメージを記事の冒頭で列挙した言葉です。
福岡さんは50歳ですから私と同世代です。現在、青山学院大学の教授で分子生物学者。講談社現代新書の『生物と無生物のあいだ』は大ベストセラーとなり、サントリー学芸賞、新書大賞を受賞しました。また、『動的均衡』(木楽社)も生物学の本としてだけではなく、様々な問題を考えるヒントとして、多方面の人々に読まれています。
それぞれの書物のポイントは、生徒の皆さんには是非自分で読んで考えてもらうこととして、福岡さんの本を読んで私が感じたことを少し書いてみたいと思います。
まず、福岡さんのような優れた研究者に必要な条件は何か、ということです。それは、まさに冒頭に書かれた言葉に表されたことではないかと私は思います。優れた直感と好奇心をもって何事にも積極的に取り組み、常識にとらわれず、チャレンジするということではないでしょうか。
また、もう一つ、やはり優れた叙述力が必要だということです。福岡さんの文章は、大変読みやすいのですが、そこに書かれていることは極めて奥深いことが書かれています。そうした文章を書くためにはそれを養う読書量がものをいうということです。『生物と無生物のあいだ』に引用された書物のジャンルの、それは幅広いこと、驚くばかりです。文章を読むのが、書くのが苦手だから理系にした、という生徒がいるかも知れませんが、それでは理系の研究者としても成功しないでしょう。さらにいうと、文系の研究者であれば、日本語だけで勝負できる分野は多くありますが、理系の研究者は、英語の論文が書けないと学会(もちろん世界的な、ですよ)ではまともに評価されません。
 今高3の皆さんは自分の進路をつかみ取るために、一生懸命に学校で習う教科の勉強をしているわけですが、それは実は本当の勉強の材料を準備しているに過ぎません。受験のための勉強に忙しいでしょうが、積極的に幅広い読書を心掛け、自分の知識の土台をしっかりと固めて下さい。それは将来きっと役立つはずです。

《連絡》
☆前期クラス委員の認証を行いました。各委員さん、頑張って下さい。