こんな本を読んでみませんか 2
「羅生門」や「七人の侍」を手がけた黒澤明監督が自らの集大成と語った作品が「赤ひげ」です。古い映画なので親御さんの世代でも見たことのある人は少ないかもしれません。その「赤ひげ」の原作が、山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」です。周五郎の作品は「樅ノ木は残った」「さぶ」など、名もなき人々が慎ましやかな生活の中で強く生きる様子を描き出しているものが多いと思います。少し古くさいけれど、真っ直ぐな生き方をしようとしている登場人物に、人との関わり方を見つけるかもしれません。
「赤ひげ診療譚」の主人公は意志に反して小石川療養所の見習い医となった保本登です。そこで出会った「赤ひげ」こと新出去定から、「貧困と無知がいかに人間を蝕むものなのか、その中で医師はどのように振る舞うべきなのか」を見せられ、医学的知識だけでは解決できない問題に直面する中で、「医術の限界を知った上で、なお諦めずに生命の尊厳に対して謙虚に向き合うこと」を学んでいきます。
中学1年生のあなたたちも数年のうちには具体的な進路を考える必要に迫られてきます。そのときに自分が得意な科目が何かとか、好きなことは何かといったことだけでなく、自分が社会の中で誰かの役に立つためには、自分は何ができるのかを考えて欲しいと思います。世の中に生まれたすべての人が、世の中で何かの役割を持っているはずです。もちろんあなたたちもそんな存在だと思いますよ。A.M.