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こんな本を読んでみませんか 9

 前回はハインラインの「夏への扉」を紹介しました。今回はハインラインやアシモフとともにSF界のBig3と言われているアーサー・C・クラークSir Arthur Charles Clarkeの作品を紹介します。先の2人に比べると、豊富な科学的知識に裏打ちされた想像力を駆使しているのが特徴です。

 「幼年期の終わり」や「太陽系最後の日」なども有名ですが、今回お薦めするのは「2001年宇宙の旅」です。スタンリー・キューブリックStanley Kubrickの映画でも有名ですね。小説は映画の原作ではないのですが、映画よりも論理的に描かれていますから、ストーリーが分かりやすいかもしれません。不朽の名作とされる映画の方はキューブリック監督が効果を高めるために説明を省いてしまっているので、謎めいた部分がたくさんあります。

 三百万年前の地球に出現した謎の石板モノリスは原始的な道具も知らなかった猿人に動物の骨を道具・武器として使う能力を与えます。獣を倒し多くの食物を手に入れられるようになった猿人は反目する同じ猿人に対しても武器を使用して殺害するようになります。時は過ぎ、月面のティコクレーターで発掘されたモノリスは土星に強力な信号を発します。宇宙船ディスカバリー号は土星探査に向かいますが、人工知能HAL9000コンピュータが反乱を起こし、乗組員を次々と殺害していきます。唯一の生存者ボーマン船長はHAL9000の思考部を停止させたのち、モノリスや探査の真の目的を知り、土星で巨大なモノリスに出会って人類より進化した存在であるスター・チャイルドに進化します。

 アメリカではHAL9000を作りたいという動機で人工知能AIの研究を始めた科学者も少なくありません。SFという想像の世界を知って、それを現実のものに変えることは、科学の発展の過程の中でもよくあることのようです。将来、理学や工学の方向への進路を考えている人たちはSFを読んで、人々がどのような夢を科学に託しているのかを知っておくことも大切ではないでしょうか。A.M.
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