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サマーサイエンスキャンプ報告③

 農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センターで実習をしたR.H.くんのレポートです。

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 今回のサイエンスキャンプの中で最も印象深かったのは、慣行水田と有機水田における生態系の形成に大きな違いがあった点です。この二つの水田に生息する生物を調べる為、三つの方法で生物を採取して調べてみると、有機水田にはハエやヤゴ、クモなどの昆虫が多く見られた一方、慣行水田には昆虫がほとんど見られず、ヤゴなどの被食者となるカエルやオタマジャクシが多く見られました。これは、イネの害虫となるウンカの発生を抑えるために昆虫に効く農薬を使用したためで、農薬一つ使うか使わないかでここまで棲んでいる生物が変わり、それぞれの環境に応じて生物が多様な生態系をつくっていることに驚きました。
 また、水田の植物についても調べました。雑草や埋土種子の採取を行い、調べたところ、雑草は水生と陸生にわかれていて、このことを考慮すると畑から水田への転向によって埋土種子の発芽が抑えられ、元々水生雑草が少ないため、選択的な除草剤の使用で雑草の繁茂が防ぐことができ、植生を上手く利用すれば、慣行農法もありなのではないかと思いました。
 他にも、水田の全体の様子を調べるために簡易空撮気球を使って空撮をしました。上空からの写真を見ることでで、イネの生育状況がわかり、肥料の使用量を調整できるそうです。農業といっても、色々な分野が深くかかわっていると思いました。
 今、食の安全が注目されるようになり、その影響もあって有機農業に注目が集まっていると考えていましたが、実際、有機農業に期待されていることは他にもあり、半永久的に持続可能な農業というものを考えた時、慣行農業では化学肥料によって土壌荒れてしまうので限界があり、逆に有機農業は生態系を上手く利用することでそれが大いに可能だということ、農薬にアレルギーがある人が安心して野菜が食べられることなど、より広い点で期待されていて、農業でも何に対しても、広い視野で見ることが大事だとあらためて思いました。また、有機農業でも慣行農業でも作物の栄養価や味に大きな差が出ないこと、有機農業は慣行農業に比べて生産性が低くなってしまい、安定した生産を確保するために長い年月を要すること、有機農業を行っている農家に対して国からの補助が降りないことなどから、有機農業を行う農家が少ないといった問題もあるそうです。期待もあるけど、デメリットが多いのは一つの課題だと思いました。
 そして、研究者の皆さんが日々研究をしている現場に実際に行けたことは貴重な経験だと思います。本当に研究内容が多様で、それぞれとてもやりがいのある仕事だと思いました。また、この経験は自分に大きな影響を与えてくれました。とても充実した三日間でした。

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