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選特生物 授業の補足20

 京大理学部の講座でも出てきた光合成反応についての補足です。光合成には太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する明反応light reactionと、二酸化炭素から糖を合成するカルビン回路Calvin cycleがあります。明反応のしくみがわかりにくかったようなので、補足しておきます。

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 葉緑体には複数の色素が含まれていますが、光合成の中心となるのがクロロフィルaです。クロロフィルbやカロテノイドは補助色素ともよばれ、利用できる光の波長域を拡げています。これらの色素はすべてチラコイドthylakoid膜に組み込まれ、光捕集系とよばれる複合体に組織化されています。ある色素分子が光量子photonを吸収すると、その色素の電子の1つがエネルギーを得ます。このことを電子が励起したといいます。通常、励起した電子はすぐに余分なエネルギーを熱エネルギーの形で失い、基底状態に戻ります。
 チラコイド膜では、クロロフィルが他の分子とともに組織化されて光化学系photosystemを構成しています。光化学系にはクロロフィルaやクロロフィルb,カロテノイドからなる数百の色素分子の集団が存在します。この色素分子の集団は光を集めるアンテナとして機能し、光量子が色素分子に吸収されると、エネルギーは反応中心reaction centerに到達するまで分子から分子へと移動していきます。反応中心はクロロフィルaとそれに隣接する一次電子受容体とよばれる分子からなります。一次電子受容体は反応中心のクロロフィルaから捕捉したエネルギーを使って、ATPとNADPHをつくります。水を分解する光化学系ⅡやNADPHを生成する光化学系Ⅰ,水素イオンの濃度勾配によってATPを生成する光リン酸化については、授業中に説明しましたね。

 詳しい説明を読みたい人は担当まで声を掛けてください。「エッセンシャルキャンベル生物学第4版」を参考にしているので購入しても構いませんが、高校生が参考書にするにはちょっと高いね。