選特生物 授業の補足22
神経の伝導や伝達を扱い始めました。研究の歴史については、新潮新書「イカの神経ヒトの脳みそ」(後藤秀機著)に詳しいので、それを参考にしてください。図書室にも置いてあると思います。
さて、神経毒について触れました。神経細胞の興奮は細胞膜に存在する膜タンパク質によってイオン分布が変化することによって起こります。膜タンパク質であるイオンチャネルに作用する物質は神経毒として作用し、麻痺 paralysisを引き起こします。例えば、フグ毒の成分であるテトロドトキシンTTXはナトリウムチャネルを抑制します。
また、神経細胞間は神経伝達物質によって興奮の伝導がおこります。神経伝達物質としてアセチルコリンAChを挙げました。クラーレ(ツボクラリン)は神経末端の筋接合部でアセチルコリンと拮抗するため、骨格筋を麻痺させます。放出されたアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼによって速やかに分解されますが、サリンのような神経ガスは酵素の阻害剤としてはたらくため、アセチルコリンが除かれず、神経伝達を阻害します。