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化学演習 授業の補足②

nitrobenzene.jpg
 前回の答からです。順にシクロヘキサン,ベンゼンヘキサクロライド(BHC),無水マレイン酸でした。どうでしたか。ナフタレンにO2を付加させるとどのような生成物ができるかも考えてみてください。

 さて、ベンゼン環に直結する結合が切れる置換反応です。脂肪族の講義の最初に説明したように、接近する粒子には陽イオン・ラジカル・陰イオンの3種類があります。ラジカルではベンゼン環の破壊が起こります。ベンゼン環平面の上下にはπ電子がありますから、陰イオンは近づきにくいでしょう。まず、考えられるのは陽イオンが近づく求電子反応です。求電子置換反応では、陽イオンをどのように生じさせるかがポイントになります。

 一つ目はオキソ酸から-OH基を引き抜く方法です。HNO3やH2SO4から-OH基を中和して引き抜けば、+NO2や+HSO3が生じ、ニトロ化やスルホン化をおこなえます。そのための強酸としてはH+の放出力が強く、温度を上げても安定な濃硫酸が使われます。濃硝酸だけでもニトロ化は起こりますが、電離定数Kaは10^2mol/L程度で、Ka=10^10mol/Lもある濃硫酸を加えたときよりも反応は遅いです。また、濃硫酸だけの場合は加熱をするか、SO3を溶かすことになります。後者は発煙硫酸とよばれます。
 二つ目はハロゲン化物から-Clを引き抜く方法です。そのために用いられるのが、AlCl3やFeCl3など、金属原子のまわりに6個の電子を持った物質です。これによって生じた+CH3からメチル化,+COCH3からアセチル化,+Clからクロロ化がおこなえます。

 では、-OHが置換したフェノールや,-NH2が置換したアニリンがベンゼンの1回の置換反応から合成しにくい理由は分かりますか。これが今回の宿題です。