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親孝行・やってみなはれ
2022年12月02日
画面の向こうの長男
父が亡くなってから,母は実家で独り暮らしをしています。一人とはいっても近くに姉が住んでおり,そんなに心配をすることはありません。まだまだ車を運転し,習い事にもプールにも通っています。不自由なこともなく,思いのまま,気楽に過ごしているようにも見えます。
3年前,父の葬儀の後片付けを終え戻ろうとしたとき,家の前で見送る母の姿を見て「これから母はこの大きな家で独りなんだ」と少し心配になりました。とはいっても,遠く離れた実家に住みそこから出勤することはできません。もやもやとした気分が心のなかにありました。次に帰省したとき,手元にあったタブレット端末を実家に残してきました。「テレビ電話でもしてみるか」。軽い気持ちでした。
反応は想像を超えていました。端末をしっかりと使いこなし,孫との会話を楽しむ母。雪が降ったら庭の様子を撮影して説明し,和室でシロアリが見つかったら畳の裏の様子を「実況中継」。役所から意味のわからない書類が届いたときは,カメラに書類を近づけ「どうしたらいいん?」。新型コロナで孫が帰省できないときの法事はオンライン。
テレビ電話で話すと声だけでなく表情や生活の様子がわかり,少し安心します。親のことを心配する歳になったとしみじみ感じていますが,これまではずっと心配されていたんだと今更ながら実感します。
今はまだ,心配するだけの「親孝行」。めったに実家に帰らない「画面の向こうの長男」。お父さん,どう思いますか?
(雲雀丘学園中学校・高等学校 教頭 道北 秀寿)