8月6日・7日の2日間でAcademic Summer in 同志社を開催しました。
1日目は、同志社大学構内の史跡を廻り、かつて同地にあった相国寺・二条家邸宅・薩摩藩邸のことを詳しく伺いました。
相国寺の例を見ない大きな講堂の跡などが、同志社の構内に残っています。
今回は同志社大学文化史学科1回生の学生さんと一緒に先生のレクチャーを聞き、実際の学生さんたちが勉強する姿勢も、生徒たちには大変刺激になったようです。
そして、自分たちの足で歩いてみた情報をもとに2枚の古地図を見比べて、江戸時代の中期から後期へ、同志社大学周辺から京都大学周辺地域がどのように変遷したのかを全員で考えます。
最初は古地図の中で、現在自分たちが立っているポイントを探すことも難しかった生徒たちでしたが、先生から少しずつヒントを与えて頂き、徐々に「ここかな?」「ここに今出川って書いてあるよ!」と自分たちから意見を出し合うようになり、興味津々でした。
こちらは、発掘調査データなどをまとめて下さったデータです。
最後に、相国寺の史跡を自分たちで実際に歩いてみて、現在にも残る何気ない土の盛り上がりなどからたくさんのことが読み取れることを感じ取ったようです。
調査事務所では、最近二条家から同志社大学へ寄贈された長持を見せて頂いた場面も。
この写真では見えませんが、菊の御紋が入っていて、二条家へ輿入れした内親王の持ち物だったことが分かります。
普段ではまず見せて頂けない貴重な資料を間近で見せて頂き、生徒たちはおっかなびっくりといった様子でした。
1日目のプログラム終了後は、有志で時間を取り、先生のお話で出てきた京都御苑から、かつて鴨川の河原が広がっていた東端の京都大学まで歩いてみました。
自分たちの足で歩いてみると、京都御苑の大きさや鴨川の位地なども把握でき、「京都御苑がこんなに大きいなんて!」「やっぱり自分の足で歩いてみると違う」と感じたようでした。
2日目は、発掘現場から出てきた資料を手にとって、考古学ではどのように歴史を考察してゆくのか、その過程を実際に体験します。
まずは、京都では珍しい奈良時代の遺物を手にとり、注記と接合の作業を行います。
出土地区を墨で書き込む作業ですが、何も語らない遺物が対象である以上、これが後々の研究にまで影響を及ぼす大切な作業となります。
生徒たちは最初、遺物を素手で触ることに目を白黒させていましたが、こわごわと書き込んでいたのが段々と熱中してきて、遺物の特徴なども検討しはじめます。
接合できる遺物がないか、と自分の手元にある遺物と同じような特徴を持つ遺物を探しながら注記していく様子は、短い時間の間に生徒たちが遺物を見る目が変わったことを感じさせ、大変頼もしかったです。
そして、接合できる遺物を見つけると大喜び!
全部接合できたらどれくらいの大きさになるのか、これはどんな形のものだったのか、などを先生と検討してゆき、とても楽しそうでした。
そして、みんなで注記した遺物を並べて、特徴を見抜いて時代順に並べます。
過去のデータから、この遺物は5世紀末から6世紀にかけて、飛鳥時代のものだと分かりました。
ではなぜ、同じ場所から出土した遺物に、こんなに時代の幅があるのか?
先生の指導のもと必死で推理し、いくつかの仮説を立てて検討しました。
生徒たちは、考古学というのは出土遺物自体は何も語るものではなく、その遺物からいかにデータを読み取るか、ということが仕事なのだ、ということを肌で感じ取ったようで、「金銀財宝を掘り出す!という考古学のイメージが変わった。すごく地道な作業だけど面白い!」と言っていました。
次に、自分たちが注記した土器の表面のデータを取るため、拓本の作業を行います。
紙と水、墨を使っての作業に悪戦苦闘していましたが、模様が浮き出てくることはとても楽しかったようです。
他に、銭貨や軒丸瓦が出てくると、生徒たちは大喜び!
銭貨について先生に積極的に質問をしたり、大きな瓦を取り合って拓本を取っている風景は微笑ましいものがありました。
拓本を乾かしている間に、先生に同志社の研究室や研究システムのことをお聞きしたり、進路のことや大学選び、学問とは何か、など深く幅広くお話をして頂くこともでき、生徒たちは真剣に聞き入っていました。
大学の先生が受験や進路のことをどう考えていらっしゃるか、率直にお聞きできる機会はなかなかありません。
先生も2日間時間を過ごした生徒たちということで、本当に親身にお話下さり、とても貴重な時間を頂きました。
生徒たちには、本当に意義ある時間となったのではないでしょうか。
そうしているうちに、拓本が完成。
生徒たちは自分たちが作った拓本を嬉しそうに持ち帰っていました。
考古学はエジプト考古学のイメージや徳川の財宝を見つける、などのイメージが一般には先行してしまいがちのようです。
しかし実際には、地道で泥臭く、忍耐のいる学問です。
そして文系に分類されつつも、案外体育会系のカラーが強いことも特徴です。
生徒たちは「華やかなイメージがあったけど、小さなことをたくさん積み重ねていかなきゃいけないんですね」「物を探すだけじゃなくて、そこから何を読み取るかが一番大切なんだ」「すごく体力がいるし、チームワークが大切な学問なんだ、と思いました」と感想を口にしていましたが、考古学の本当の姿や魅力が少しでも伝わったのではないかな、と思えた2日間でした。