進路の部屋
【One Day College⑤】経営学を学ぶ:なぜ組織で不正が起こるのか?
2026/07/24
講座レポート:「経営学を学ぶ:なぜ組織で不正が起こるのか?」(神戸大学 髙田 知実 先生)

「経営学」と聞くと、会社経営のノウハウを学ぶ実践的な学問というイメージが先行しがちですが、髙田先生の講座は、その中でも「不正」という切り口から経営学の奥行きを見せてくれるものでした。
経営学とは何を学ぶ学問か
まず示されたのは、経営学が企業や組織に関わる問題を扱う学問であり、「よいことを上手に成し遂げる方法を考える学問」であるという定義でした。
「会社は誰が動かしているのか」「社員はなぜ働くのか」「資金が足りない時はどうすればよいか」など、日常では意識しない問いの一つひとつに、コーポレートガバナンスやマーケティング、ファイナンスといった専門領域が対応していることが示され、経営学の裾野の広さが伝わったのではないでしょうか。
身近なニュースに潜む「不正」
講座の後半では、東京医科大学の不正入試、生命保険会社による契約者への不適切な対応、自動車メーカーの検査不正、企業による利益の水増しなど、近年報道された実際の事例が取り上げられました。生徒にとっても見聞きしたことのあるニュースが、経営学・会計学という学問の研究対象になっていることに、身近さと同時に新鮮な驚きを感じたのではないでしょうか。
不正はなぜ起こるのか——3つの要因
講座の核心は、犯罪学者クレッシーが提唱した不正リスクの理論でした。
不正は「機会」「動機・プレッシャー」「姿勢・正当化」という3つの要因が揃ったときに起こりやすくなるという枠組みが紹介され、これを身近な「テストのカンニング」に当てはめて考える場面もありました。
抽象的な理論を自分たちの生活に引き寄せて理解できる、巧みな展開だったのではないでしょうか。
組織のトップにできること
さらに、この3つの要因のうち「機会」は仕組みや環境を整えることで、「動機・プレッシャー」は無理な要求を課さないことで、「姿勢・正当化」は組織風土の醸成によって、いずれも組織のトップの努力次第で制御しうるという視点が示されました。
そして「機会への対処を徹底している企業ほど、実際に起こる不正は少ないのではないか」という仮説を検証していくことこそが、まさに研究者が取り組んでいる最前線の課題であることが語られました。
学問は完成されたものではなく、今この瞬間も研究者たちの手によって発展し続けているという事実を体感できたことは、大学で学ぶことの意味を考える大きなきっかけになったはずです。
