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親孝行・やってみなはれ
2018年07月13日
萬緑
萬緑の中や 吾子(あこ)の歯 生え初むる 中村草田男
私が高校時代に出会った句です。生後4,5ヶ月ほどの乳児でしょうか、緑あふれる大自然の中でわが子の歯が初めて生えた発見とその喜びがあふれています。そこには大自然と幼子の生命力とその力強さとともに、わが子が自然に祝福されているような感動があります。おそらく、当時の私はそんな風にこの句を捉えていたと思います。しかし、今から思えば、「吾子」が気になります。十七音の短詩型の俳句では、わが子は「子」と言えばすみます。あえて「吾子」としたところにも、この句の眼目があるようにみえます。「生まれてくれるだけで親孝行」という言葉もありますが、この句には、手放しに「吾が子」の誕生やその存在がどうしようもないほど嬉しい、そういう実感があふれています。多分、私も人の親となり、それを実感として受けとめ得たということなのでしょうが、始めてこの句を自分のものにできた、腑に落ちたという感覚になりました。「草田男主宰の俳誌」
冒頭の句に戻りますが、吾が子の歯が初めて生えたぐらいのことを手放しで喜ぶ経験を通して、吾が父もまたそうであったであろうことに思いが至る。そういうことも「孝道」の実践、「親孝行」の手始めだといえるのかもしれません。
(中学校・高等学校 高校3年学年主任 守本 進)