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親孝行・やってみなはれ

2021年10月22日

小さなお手本

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 我が家の猫にはしっぽがありません。
夏の熱されたコンクリートの道路のど真ん中で、手のひらサイズで小さくうずくまっていた彼を拾った時には歩くこともできず、おそらくその日が命の峠であったと思いますが、うまく開かない目をなんとか開け、なでれば喉を必死で「グルグル」と鳴らし、小さいながら懸命に生きようとしていました。日が経ち、歩けるようになってからも、はじめはまっすぐ歩くことさえもできませんでしたが、いつでもなでれば目を細めて喉を「グルグル」と鳴らし、それが彼の生きている証しのようでもありました。
 我が家には先住犬たちがいたので、皆を明るく照らす唯一無二の存在になるようにと、ラテン語で太陽の意味の「ソル」と名付けました。今では逆に犬を走って追いかけてやんちゃをするくらいに成長しました。
 ソルを見ていると、何不自由なく過ごしている自分が、その日その瞬間を一所懸命に過ごさないわけにはいかないと思い知らされます。命あるものとして最も大切なことは、当たり前ですが、生きていることです。うまくいかないことだってもちろんありますが、それでも生きている限り、完璧でなくても失敗したって何度だってやり直せるのだと思います。
 ソルにはしっぽがありません。だからなのか、他の猫ほどのジャンプ力もありません。でも、彼は太陽のように家の中を照らし、目を細めて嬉しそうに「グルグル」と喉を鳴らして、今も毎日をしっかり生きるということのお手本をみんなに見せてくれています。

(雲雀丘学園中学校・高等学校 高1学年担任 国語科 大角 輝代)