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親孝行・やってみなはれ

2024年06月28日

ひとりぐらし

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 19歳になる年,大学入学と同時に上京し,独り暮らしを始めました。朝,起こされないと1人で起きられない癖や,好き嫌いの多い食生活についてなど,母は特に心配をしていたようでした。今のように便利な携帯電話がなかった時代で,公衆電話と葉書が唯一の連絡手段でした。

 身勝手な思いで,大学の近くには住まず,都内に部屋を借りました。大学までの片道が2時間半の道のりで,友人からは,「大学のそばに住まないの? 交通費がもったいないよ。」と珍しがられたものです。電車で通う友達は,すべて都内の自宅からの通学生だったからです。

 独り暮らしは,最初は物珍しく好き勝手できて楽しかったのですが,仕送りは,決して豊かとは言えず,通学時間が長かったせいで,アルバイトもできずに,限られた金額での食事は大変でした。父は,年に数回の東京出張の時に,様子を見に来てくれて,ご馳走もしてくれましたが,母は,一度も上京せず,はがきの便りのみで,『中江藤樹の母』の逸話をひいて,心を鬼にして見守ってくれたのかなと思います。おかげて,4年間も独り暮らしをすると,自炊にも慣れて,調理用具もある程度調い,いくらか手際も良くなりました。

 郷里の姫路に帰って就職し,実家から通勤するつもりでしたが,雲雀丘学園小学校に勤めることとなり,結婚するまで約10年間独り暮らしを続けました。就職してからも自炊を続け,毎日の弁当も自分で作って持って行きました。

 つらいことも少しありましたが,大きな病気やけがもなく独り暮らしができたのは,丈夫な身体に育ててくれた両親に感謝すると共に,道を踏み外すこともなく過ごせたのは幼い頃から親に正しくしつけられた結果だと感じています。そして,親元離れての独り暮らしの経験が,親や家族のありがたさやふるさとへの愛着を強く感じる自分に成長させ,多くを学ばせてくれたと感じています。



(雲雀丘学園小学校 校長 井口 光児)