選特化学 授業の補足11
冬期講習では「熱化学」と「中和反応」2つのテーマを取り上げました。中和反応の講義では「酸性雨」のことに少し触れましたが、どのような現象かを確認しておきたいと思います。
「酸性雨」は大気汚染によって発生するpH5.6以下の強い酸性の雨のことです。酸性雨の原因は化石燃料の燃焼や火山活動などにより発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)などです。硫黄酸化物は石油や石炭を燃焼させるときに発生するほか、鉄や銅の精錬でも発生するため、工場や発電所が密集する工業地帯で多く観測されます。窒素酸化物は自動車の排ガスに含まれるので、都市部で多いと考えられます。
19世紀の産業革命時のイギリスでは「マンチェスターのスモッグ」として大気汚染が問題視されるようになりました。公害問題を解決するために、西ヨーロッパやアメリカ東部では、工場の煙突を高くする措置がとられるようになりました。これが国境を越えて、北ヨーロッパやカナダに酸性雨を降らせるようになった原因と考えられています。公害という国内問題が環境破壊という国際問題として認識されるようになった結果、1972年にストックホルムで「国連人間環境会議」が開かれました。「かけがえのない地球 Only One Earth」というスローガンはそのときのものです。開催日の6月5日は環境の日となっています。
化学,地理,歴史…それぞれの知識をつないでいかないと、智慧になりません。知識を集めるだけではなく、それを生かすためにはいろいろな分野に興味と関心を持ち続けることが大切です。この冬に新聞や書籍を読むことがその一歩になると思います。