進路の部屋
東京大学金曜講座ー離散力学系の不思議な構造ーLife Design Building at Hibari
2020/06/08
東京大学金曜講座が行われ、有志生徒が出席しました。今回の講義から、高校2年生、3年生に加え、新たに高校1年生が加わりました。
今日は大学院数理科学研究科のウィロックス・ラフル先生によるご講義で、離散力学について学びました。一定の規則に従って時間の経過とともに状態が変化するシステム(系)、あるいはそのシステムを記述する方法、そしてその記述されたグラフの見方と分析の仕方を、様々な数式も交えて教えて頂きました。また、離散力学がどのように研究されてきたのか、その発展の歴史と先生のこれまでのご研究の流れも伺いました。さらに、力学系の例としては、人口モデル、振り子の振動や自然界に存在する生物の個体数の変動、惑星の軌道などがあり、これらの現象を理解する上でこの学問がどのようにつながっているのかを、数式のご説明を通じて深く知ることもできました。 加えて、天然痘の流行に対して、個人にリスクがあっても強制的にワクチンを接種させることには大きな社会的意味があることを示すため、Daniel Bernoulliが1760年に世界初の疫学モデルを提案していたことを教わりましたが、現在コロナウイルス蔓延防止のために分散登校を余儀なくされている私たちにとって、離散系力学を興味深く学ぶきっかけとなりました。疫学にこの学問をもっといかすためにはどうすればよいのかと高校生からの質問が多くありましたが、数学的には面白いけれども、自然現象への応用は説明できないとのことで、この点において、進路選択への視点を得られた人も多くいるようです。物理学や化学では合理的に解明がなされていくのに対して、疫学や医学となるとそうはいかないところに、高校卒業後の専門とする学問分野の選択において岐路がある。しかし、一旦はその選択をしても学問を追究していくうちに関心が変わり、研究手法が変わることもある。結局は様々な人とのコミュニケーションを大事に追究していく姿勢が大事なのだと、研究者に必要な資質に関するお話もありました。
人間はついつい連続的なプロセスを期待し、離散的な現象は理解しにくいし予測もしにくいけれど、我々の世界は連続的なものではなく、離散的なものではないかという問いに立つ必要がある。物理学の法則でも離散的な方程式が大事になると、物理学のみでは解けない問いに数学的な視点を用いれば、難問がとける可能性がある。予測不能な事柄の事象について、サンプルを集めてそれを分析することができ、そうしたサンプルを分析、解析することで見られる現象が面白い・・・。そのように熱く語られる先生のご講義は、多くの質問に答えながら、いつものように気づけば3時間を超過していました。
*高校1年生対象に、東京大学金曜講座の受講生を募集しています。締め切りは6月10日です。詳細はClassiをご確認ください。