進路の部屋
【One Day College⑥】縄文時代から弥生時代への変化
2026/07/28
講座レポート:「縄文時代から弥生時代への変化」(立命館大学 中村 豊 先生)

「縄文時代」と聞いて多くの人がイメージするのは、教科書の中の遠い昔の世界かもしれません。
しかし中村先生の講座は、その縄文時代が実際にどのように調査され、どんな最先端の科学的手法によって解き明かされているのかを、フィールドの実感とともに伝えるものでした。
現場に立つ考古学
先生はまず、徳島大学時代に手がけてきた発掘調査の実践を紹介しました。
旧石器・縄文時代の遺跡を取り巻く景観や環境を学ぶには、都市化の進んだ京阪神よりも、当時の自然が色濃く残る徳島の方が適しているという指摘は、考古学が単なる机上の学問ではなく、土地そのものと向き合う営みであることを印象づけたのではないでしょうか。
実際に紹介された徳島市那賀町の遺跡調査では、地層の断面から縄文時代早期・後期の土器や、当時の生活面と見られる遺構が発見された様子が示されました。
「実験考古学」という発想
講座の中で特に興味深かったのは、実験考古学の紹介です。雑穀の収穫実験や、石を打ち欠いて磨製石斧を実際に作ってみる製作実験など、当時の人々の技術や労力を、現代において自らの手で再現しながら理解しようとする研究手法が示されました。文献や遺物を読むだけでは分からない、当時の暮らしの手触りに迫るアプローチだったのではないでしょうか。
石の中に眠る産地の記憶——結晶片岩をめぐる研究
講座の後半では、テーマが「結晶片岩の考古学」へと展開しました。
徳島県の眉山・高越山地域周辺でのみまとまって産出する青色片岩は、弥生時代の石斧・石庖丁などの石器の材料として広く用いられていたことが紹介されました。四国東部で出土する青色片岩製石斧の分布を示した地図からは、この地域産の石材が周辺の広い範囲へと運ばれ、利用されていたことが読み取れます。
さらに踏み込んだ内容として、石材に含まれる「ガーネット(ザクロ石)」の含有率という、地質学的な微細特徴を手がかりに、出土した石器がどの産地の石から作られたのかを推定する研究が紹介されました。
携帯型のマイクロスコープを使い、石の表面に現れるわずかな鉱物の粒を観察して産地を絞り込んでいくという手法は、考古学と地質学が交差する最前線の研究のかたちを示すものでした。
過去と現在をつなぐ視点
旧石器・縄文時代は日本史の中でも現代社会から最も遠い時代でありながら、人と自然が最も深く結びついていた時代でもあります。
フィールドワークと室内での分析、双方向からのアプローチによって少しずつ明らかになっていく古代の暮らしの姿は、生徒たちに「歴史を調べる」ことの奥深さと面白さを実感させてくれたのではないでしょうか。
