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【One Day College⑧】肝胆膵外科医の真髄

2026/07/31

1 Day College

講座レポート:「肝胆膵外科医の真髄」(兵庫医科大学 北畑裕司 先生)

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「肝臓・胆道・膵臓を専門にする外科医は、日々何を考え、何と向き合っているのか」――北畑先生の講座は、外科医という仕事の実像を通じて、生徒たちに「自分らしいキャリア」を考えるヒントを届けるところから始まりました。

肝胆膵外科医とは、どんな仕事か

まず紹介されたのは、外科専門医から消化器外科専門医、さらにそのサブスペシャリティとしての肝胆膵外科へと至る、長い専門医への道のりです。

初期臨床研修から外科専門研修を経て、高度な技能を要する肝胆膵外科の専門医にたどり着くまでには、多くの年月と積み重ねが必要であることが示されました。

続いて、肝臓・胆道・膵臓という臓器そのものについての解説がありました。

「肝心」「肝要」「肝っ玉」「大胆」「胆力」といった慣用句が、古くから肝臓や胆のうが体の要として考えられてきたことに由来する一方、「膵」という漢字自体は比較的新しく、江戸時代に日本で作られた文字だという説明は、身近な言葉の成り立ちから臓器の重要性に迫る、興味深い導入だったのではないでしょうか。膵臓が消化液の産生(外分泌)とインスリン・グルカゴンによる血糖値の調節(内分泌)という、性質の異なる二つの働きを担っていることも、図とともに丁寧に紹介されました。

がん治療という仕事の重さ

北畑先生の専門は、肝臓・胆道・膵臓の悪性腫瘍(がん)治療です。

日本人ががんと診断される確率は男性で6割、女性で5割を超えるという厚生労働省などのデータを示しながら、がんが誰にとっても身近な病気であることが語られました。中でも膵癌は5年生存率が1割強にとどまり、他の多くのがんと比べて依然として治療が難しいがんであることが、生存率の推移グラフとともに示されました。

手術の方法についても、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術という三つのアプローチが写真とともに紹介され、同じ病気に対しても複数の技術的選択肢があることが伝わってきました。

印象深い患者さんのエピソード

講座の中盤では、60歳代男性・膵癌の症例が具体的に紹介されました。

切除が難しい進行度の膵体部癌と診断されたこの患者さんは、手術前に化学放射線療法を受け、腫瘍マーカーも大きく改善。手術後の病理検査では、がん細胞が治療によってほぼ死滅していたことが確認されるという、治療がうまくいったかに見える経過をたどりました。

しかし、術後5か月の時点でがんの再発が診断され、抗がん剤治療が開始されることになります。

北畑先生は、この症例を振り返り「手術前の治療は効果があり、手術も病理検査も良好な結果だったにもかかわらず、なぜ早期に再発してしまったのか」という問いを、生徒たちに率直に投げかけました。

治療がうまくいったように見えても、がんとの闘いには終わりが見えないことがある――そうした医療の難しさと誠実に向き合う先生の姿勢が、強く印象に残った生徒も多かったのではないでしょうか。

「なぜ研究するのか」という視点

この経験を機に、北畑先生はがんの進行度をより鋭敏に反映するバイオマーカー(生体指標)の必要性を感じ、血液中のがん関連物質を調べる「リキッドバイオプシー」の研究に取り組むようになったといいます。

高額な機器の導入や新しい研究手技の習得を重ね、その成果を国際的な学術誌に論文として発表するに至った歩みは、日々の診療の中から生まれた疑問が、研究という形で医学全体に還元されていく過程を具体的に示すものでした。

恩師である山上裕機教授の「基礎研究は、目の前の一人ではなく、何十万人もの命を救えるかもしれない」という趣旨の言葉も紹介され、臨床と研究がどちらも患者を救うための両輪であることが伝わる場面でした。

「やってみなはれ精神」に込めた思い

講座の終盤では、サントリー創業者・鳥井信治郎氏の「やってみなはれ」という言葉が取り上げられました。

北畑先生はこれを、単なる無謀な挑戦ではなく、「十分に準備し、学び、努力を重ね、周囲から信頼される自分になること」を土台とした前向きな姿勢だと捉え直し、自らの外科医としての生き方に重ねて語りました。

高難度の手術に挑む専門性、数ミリ単位の判断を支える解剖学的な理解、そして患者の命だけでなくその後の生活まで支える総合的な医療――北畑先生が語る「肝胆膵外科医の真髄」とは、治療技術と人としての誠実さの両方を追求し続ける姿勢そのものだったのかもしれません。

生徒たちにとってこの講座は、医療という進路の厳しさとやりがいの両方を、実際の症例を通じてリアルに感じ取る貴重な機会になったのではないでしょうか。

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