校長通信
Bohemian Rhapsody 第106号
2019/01/31
先日、映画『Bohemian Rhapsody』を観ました。ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞、主演男優賞を獲得し、興行収入100億円突破の話題作です。正月に高校時代の友人に会ったときに、ほとんどが観ていました。複数回の人も。私は気にはなっていましたが時間が取れずでした。この映画は、ロックバンドクィーンのヴォーカル、フレディ・マーキュリーの人生、HIV感染合併症、肺炎によって死去するまでを描いています。学生時代はエイズに対する知識もなく、偏見を持っていたかも知れません。映画内の音楽によって青春時代が蘇ったというか、素直に感動しました。また、いろいろなことを考えさせられました。
映画の感動が冷めないうちに京都大学の明里教授に「校長通信に映画とHIVのこと書きたいから教えてー」と連絡しました。明里先生は高校時代の部活の友人で、京都大学ウイルス・再生医科学研究所で最先端の研究を行っております。毎年、京大Academic Summerで本校生徒がお世話になっています。今回は私のわがままで文章を寄せてくださいました。生徒たちには何か興味のあることからその関心を拡げてほしいと思います。以下、明里先生の文章を紹介します。
人類とHIVの戦い 〜不可能への挑戦〜
京都大学ウイルス・再生医科学研究所 明里宏文
ヒト免疫不全ウイルス (HIV) は後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスです。1980年代にAIDS発症例が報告されて以来、アフリカ、欧米諸国を中心に急激に感染が広がり、現在もアフリカ・東南アジア圏を中心として約四千万人もの感染者がいます。近年は画期的な抗HIV薬の開発が進み、HIVの増殖を強力に抑制出来るようになりました。きちんと治療を受けている限り、HIVに感染してもAIDSを発症せず生きていけるようになったのです。では問題は解決したのでしょうか?いえ、実は人類とHIVとの戦いはまだ序章に過ぎなかったのです。なぜなら、最新の抗HIV薬でもHIV感染細胞を体から排除することはできず、服用を中断するとHIVが再び増殖しAIDS発症の危険性があるからです。HIVに感染した人は、生涯薬を飲み続けなければならず、薬による副作用や精神的、社会的ストレスなどさまざまな懸案が山積です。私たちは、今の医学では不可能とされている「HIVの排除、根治」実現に向け、新たな治療法開発を目指した研究を精力的に進めています。