校長通信
3学期始業式 第86号
2023/01/10
3学期始業式を授業前に行い、式辞としてお話をしました。以下要旨です。
今年の書き初めは、夢と志を書いてみました。志は「高志」として教室にも掲げられています。夢と志の違いは何でしょうか?昔は「志」という言葉をよく使っていました。
夢とは、達成できたらいいなという個人の目標や希望であり、あいまいな場合もあります。一方、志は個人の願いだけでなく、よりもっと公的で、周りの人を幸せにしたい という想いであり、行動も伴っているものかもしれません。「志」は対象が自分以外にもいるためにあきらめられにくく、願いも続き果たされやすいとも言えます。
ソフトバンクの孫社長は講演の中で「夢と志は違います。夢は漠然とした個人の願望であり、志は個々人の願望を超えて多くの人々の夢を叶えようとする気概です。夢はこころよい願望だが、志は厳しい未来への挑戦です。」と語っています。
吉田松陰や坂本龍馬の歴史的人物や現代では孫正義氏など多くの企業経営者が「志」の大切さを話しています。「志」を持つことが希薄になった今だからこそ「志」の重要性を今一度考えてほしいと思います。
「夢」と「志」のどちらを持ったほうがよいのか?答えはないと思います。「夢」が自分の興味・関心から始まるとすれば、「志」はその興味・関心の輪が大きくなり、自分という関心を超えて世界に広がることとなり、どの段階から「夢」が「志」になるのかはわからないものなのです。最初は「夢」を持つことからはじまり、いつの日か、何かのきっかけで「夢」が「志」へと昇華するのだと思うのです。どちらかに優劣があるのでははく、順序の問題でしかないと思います。そして「志」を手にしたとき、本当の意味での生きる目的を実感するのではないでしょうか。
その中で、重要だと思うのか、終業式でお話ししたWHOLE CHILD APPROACHです。日本語訳では「全人教育」となりますが、意味の違いがあります。アメリカでは、近年、脳科学や心理学の研究が急速に進み、学力偏重、学力肥大が問題になっています。そこで教育界でもWHOLE CHILD APPROACHが主流になってきています。日本の教育改革もこの課題を投げかけていますが、危機感を持ちながらもなかなか変わることができていません。認知的学力、記憶することが必要でないと言うことでなく、学力のとらえ方と「心と体」へも目を向け、バランスの取れた人間育成が重要であり、本校においても取り組んでいきたい大きな課題です。図の非認知能力の項目については調べてみてください。
創立の精神にも、志、心、体についても言及されています。この1年、創立の精神を意識し、心と体と頭のバランスをとって生活していきましょう。
【参考】非認知能力 シカゴ大学2012調査
学業への態度(academic behavior):時間管理、参加、注意力など
学業での忍耐力(academic perseverance):グリッド(やり抜く力)、自己管理、
学びへのマインドセット(academic mindset):帰属意識、成長Mindset、やり遂げられると思う力
学ぶ力(learning strategies):自立型学習。目標設定など
ソーシャルスキル(social skill):人間関係力、共感力、協働する力。責任感など
参考文献:『新・エリート教育』竹村詠美著
【参考】Social Emotional Learning(SEL)
自分を理解する力 SelfーAwareness
自己マネージ力 SelfーManagement
他者を理解する力 SocialーAwareness
人間関係スキル Relationship Skills
責任ある意志決定をする力 Responsible decision-Making
参考文献:『スタンフォードが中高生に教えていること』星友啓著