学校だより
図書室 こんな本、読んだ。
2021/03/26
図書室から
今年度の最後は司書の私の こんな本、読んだ。
旅する練習/乗代雄介
舞台は昨年の春、サッカーの特待制度を勝ち取って中学受験を終えた亜美は、せっかくの春休みなのにコロナのため大好きなサッカーをすることもままなりません。時間だけはたっぷりある。そんな亜美の相棒になってくれたのが、亜美の相手が出来るくらいのサッカーセンスを持ち気心の知れた小説家の叔父(といっても6年生の亜美は「にーちゃん」と呼んでいるので、それらを踏まえてイメージして下さい。物語の語り手にもなっています)
たっぷり時間をもつこの2人が人混みを避けた旅を計画します。ただただ歩く、時々ボールを蹴る。のんびり1週間かけてある目的のために東京から鹿島に向かって進みます。私はその場所の土地勘がないので、なんとなく大阪北部から京都へ向かう淀川から桂川の河川敷を歩く2人を想像しました。
そんな2人の旅のお供は亜美はサッカーボールで、にーちゃんはペンとメモ。そのメモには途中目にした風景の描写と併せて日々増えていく亜美のリフティングの回数が記録されていきます。亜美がこれから向かっていく新しく広い世界へ向けて抱く希望や不安や期待、繊細であっけらかんなところ、いろんなふわふわした心の動きがみずみずしく描かれています。
芥川賞候補作にも選ばれたこの作品、ジャケ買いならぬ、タイトル買いでした。