学園ブログ

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常務理事便り

2023年03月20日

Vol 52 気骨の弁護士

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 先日、本学園の顧問弁護士を務めていただいた浅田敏一先生のしのぶ会にお伺いしました。私も何度か浅田事務所を訪問させていただきましたが、残念ながらここ数年は事務所に足を運ばれる機会も少なくなられたとのことで、先生と直接お目にかかったのは5、6年前に、当時の事務局長に随行してご挨拶させていただいた一回きりでした。

 今回のしのぶ会にお伺いして、掲示されている写真、新聞記事、実際に使われていた机や法律書等を拝見する中で、浅田先生が残された事績の偉大さやお人柄を垣間見ることができました。

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 一言で言うと「世の中には凄い人がいるものだなぁ」、という感想に尽きます。

 浅田弁護士は民事介入暴力では知らない方はいない程のカリスマでした。犯罪組織の末端の者が犯した犯罪であっても、使用者責任として組織トップまで責任を訴求できる最高裁判決を勝ち取り、反社会的勢力の封じ込めに多大な影響を与え、安心して住める社会の実現に大きく寄与されました。しかし、この判決を勝ち取るまでの10年以上の戦いはすさまじいものであったに違いありません。元々、提訴は無理、と他の弁護団が断念した事案を引き継いだのですが、やはり、一審は敗訴でした。普通の神経であれば、この時点で訴訟を断念することが予想されますが、被害者救済のために敢然と控訴、高裁では逆転判決を勝ち取り、最終は最高裁もこの判決を認め、確定したのです。

 こうした事績を通して、私が驚嘆するのは先生の胆力と人間力(人的魅力)です。きわめて勝利が難しい訴訟、すなわち、負けがみえる訴訟であったにも拘わらず、「あるべき姿」(浅田先生はこの言葉をよく使われていたとのことです)を目指して、火中の栗を拾い、戦いを継続するにはどれだけの胆力がいることか・・。その間、組織からの脅迫や嫌がらせは想像に難くありません。それでも依頼者の要請を実現すべく、ぶれることなく訴訟を進める凄みには驚嘆の言葉しかありません。

 更に、こうした難訴訟を維持するには弁護団や関係者が一体となって行動していくことが不可欠です。表には出てきませんが、弁護団や関係者の揺れ動く心情を理解しながらも一体にまとめていくには人間的魅力なくして為せる業ではありません。多くの方から寄せられた追悼の文章の中には先生の人間力溢れるお人柄が随所にしのばれました。

 「爪の垢を煎じて飲む」という言葉があります。一度しかお会いしたことはありませんが、私にとりまして浅田先生はまさにそのような人となりました。

 ご冥福をお祈りいたします。

                       合掌