学園ブログ

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常務理事便り

2023年11月27日

Vol 36 超難関試験

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 今秋三度目の剣道の話です。先日、東京で剣道八段審査が行われました。

合格率はなんと0.5%でした。全国から七段の先生方、1923名が挑戦されたのですが、合格者は9名でした。40歳代、50歳代、60歳代それぞれ、3名ずつ。一次審査で2回、二次審査で2回の演武を行い、八段範士の先生方が審査されます。一次で約10%まで絞り込まれ、最終二次審査で合否が決まります。

 私も20回以上挑戦を続けていますが、今回も一次審査を通過することさえできませんでした。過去2回一次は通過したことがありますが、10回以上一次は通過したが・・という先生方もいらっしゃいます。「心技体が一致」し、いわば、審査員を唸らせるような技を出せることが合否の境目になります。別の言い方では、「相手を遣う(つかう)」とも言います。「心技体の一致」と言葉で言えば一言ですが、これを実践するには相当な練磨と勇気が必要です。

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(審査風景ではありません)
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 「心」とは誠に難しいですが、恐懼疑惑(打たれるのではないかという恐れや疑い)の心を脱して、いつでも飛び込めるという心をもって(これを剣道では先の位といいます)相手に圧力をかけていくことです。「技」とはまさに、打突のことですが、技に至る前の仕掛け(技前とも言います)も含めています。剣道には打突部位は面、小手、胴、突きの四か所しかありません。これらの部位をとらえるには様々な工夫が必要です。相手も一様ではありません。技の中では、自分から攻め込んだ結果、相手が戸惑い、一瞬迷いが出て居ついたところを打つ「先(せん)の技」、あるいは攻め込んで相手がその攻めに反応して、反撃に出ようとするところを捉える「出頭(でがしら)の技」など、打つべき機会を捉え、しっかりと打突できることが評価されます。さらに打ち込むときは身を捨てて打つことも重要視されます。打ち返されるかもしれないという中途半端な気持ちではなく、勇気を出して全精力で打ち切ることが重要です。「体」は体勢、姿勢のことですが、相手の打突を避けるように打突しても評価されません。疑心暗鬼な気持ちを捨て、しっかりと打ち切る、理にかなった正しい体勢をもって打突することが大切です。さらに剣道では打ち切ったあとも「残心」をとることが極めて重要視されます。「残心」とは打突後も油断せず気構え、身構えを崩さないことです。「打ったぞ」とアピールしたり、喜びを表すことは許されません。その瞬間に隙ができ、実践では反撃にあう可能性が十分にあるからです。

 「心技体が一致した技」を出し、相手を「遣う」位で演武することは極めて難しいので、合格率が0.5%という超難関になるわけです。しかし、それだけにやりがいのある挑戦でもあります。先般、ブログでも申し上げましたが、「運気、決断、失敗、努力」の連続で人は高まっていきます。

 何事においても「次こそは」との思いをもって、工夫をし、努力を続けることが目標達成のための唯一の道でもあるということを実感しています。