選特生物 授業の補足27
中間考査以降はずっと問題演習が続いています。問題を解いてくるのに精一杯で質問をすることもままならないようですが,それでもずいぶんと理解度は高まっているようです。腎臓の構造と再吸収の問題でヘンレループが出てきたので解説しておきます。
まず構造の確認です。腎小体は腎臓の皮質側にあります。腎細管はそこから近位腎細管として髄質の方へ延び,折り返して再び遠位腎細管として皮質に戻り,集合管に接続しています。折り返しをヘンレループ,皮質から髄質へ流れる部分を下行脚,髄質から皮質へ流れる部分を上行脚といいます。集合管は髄質のところで集まります。この部分が腎盂です。ここから輸尿管として膀胱につながっています。
さて,腎小体でろ過された原尿は,近位腎細管でグルコースの全部,水分の大部分,無機塩類の大部分が再吸収されます。このときにはホルモンは関与しません。グルコースの再吸収には250mg/分と限界があるので,それ以上高くなると糖尿になります。ヘンレループでは残りの水分の再吸収がおこなわれます。再吸収は能動輸送でおこなわれるので,細胞を電子顕微鏡で見るとミトコンドリアが発達しているのがわかります。遠位腎細管では分泌と再吸収がおこなわれます。分泌とは血しょう中に残っている尿素・尿酸・アンモニア・クレアチニンなどが原尿の方へ移動することです。同時に水分と無機塩類の再吸収がおこなわれますが,これはバソプレシンとアルドステロン(鉱質コルチコイド)による調節をおこないます。
近位腎細管の中の浸透圧は水分も無機塩類も移動するので血しょうとほぼ同じです。下行脚は水の透過性が高く,上行脚は水が不透過でNa+の再吸収をおこなっています。そのため皮質から髄質へ向かって浸透圧の濃度勾配ができます。(皮質は低張,髄質は高張)その結果,対向流交換系が形成されるのです。