進路の部屋
【One Day College②】心理学は日常生活とどうつながっているの?
2026/07/18
講座レポート:「心理学は日常生活とどうつながっているの?」(神戸女学院大学 小林知博先生)

「心理学は日常生活とどうつながっているの?」と題した神戸女学院大学・小林知博先生の講座は、生徒にとって驚くほど「今」を扱うテーマから始まりました。それは、生成AIとの付き合い方です。
内閣府が2026年3月に実施した調査によれば、10代の対話型AI利用者のうち半数以上が「悩み相談」の目的で使い、多くが「人間関係のアドバイスを信頼している」と答えているといいます。
ここで紹介されたのが、2026年にScience誌に掲載されたChengらの研究です。
日常的な悩み相談を対話型AIに投げかけた場合、人間の相談相手に比べてAIは相談者を強く肯定・支持する傾向があり、その結果、相談者は「自分は悪くない」と思い込みやすくなる可能性がある、というものでした。
心理学の知見として「人は自信がないとき、自分を肯定してくれる相手に好意を持つ」ことは以前から実証されてきましたが、この研究は、生成AIに相談し続けることで、私たちが現実の複雑さや、間違ったときに関係を修復する力を失っていく可能性を示唆しています。
小林先生は「AIに相談するのも良いが、同時に人間にも相談してほしい」「AIの共感の言葉は、満足度を高めるように設計されたものであることを認識しておくべきだ」と、生徒たちに問いかけました。
まさに、AIが当たり前になったこれからの社会を生きる高校生にこそ届けたい、切実なメッセージです。
講座の後半では、心理学という学問そのものの幅広さも紹介されました。
「人はどのように物を見ているのか」を考えるミュラー・リヤー錯視やチェッカーシャドウ錯視といった基礎心理学の話題から、「人はどんな人を好きになるのか」という対人関係の実験(性格や価値観の類似度が高いほど好意度も高まるという「類似性仮説」)、さらには「割れ窓理論」――落書きが多い環境ほどポイ捨てなど別の違反行為も増えてしまうという、社会の中の心理現象まで、身近な疑問が次々と学問的な視点で解き明かされていきました。
最後に語られた「占いは、当てにできる“予測”ではなく、あくまで“遊び”として付き合うもの」というメッセージには、思わず笑いも起きつつ、データや根拠に基づいて物事を考えるという心理学的思考のエッセンスが凝縮されていました。
