高3学年通信(64期生)
選択コース〈エア〉修学旅行記⑤(完)
2020/09/17
集合時間まであと20分。 あと20分で終わってしまう。
選択コースは迷わず鹿児島市内散策に決めた。ずっと見学ばっかりだったから、最後くらいは自由に動きたい。でも行ったことのない街のイメージが全然つかめず、計画は難航。というか、なんとかなるだろうと思ってあまり深く考えていなかった。文理の〇ちゃんなんて「熊本ラーメン食べるんだ♪」って言ってたくらいだし。それはちょっとアホすぎるけど。
行き先が二回も変わった時点で「とりあえず行ければどこでもいい」という気持ちだった。本当は北海道に行くはずだったのにな。ツイてないよ。なんでよりによって…。不満を言い始めたら、次から次に出てきて止まらなくなりそうで怖かった。言っても仕方ない。だから期待しないでおこうと思ったんだ。 どこでもいいから修学旅行に行きたい。学校でも家でもないところで、何も気にせず友達とただ一緒にいて喋っていられるだけでいい。そこに美味しいものがあったらそれで最高なんだ。
道路を走る市電が可愛くて行き先も見ずに飛び乗った。3人で盛り上がって喋りまくってるうちに終点「日本最南端の電停」。最南端!?ヤバイ!!って思ったけど、中心部から20分ほどだ。とりあえず記念撮影。地味~。
次どうする?鹿児島といえば白くまと西郷隆盛?とりあえずこの二つを押さえよっか。という話になり、鹿児島市一の繁華街・天文館に向かった。「天文館」って何か建物があるのかと思ったらアーケードだった。江戸時代のお殿様が暦とか天体観測の研究施設を置いたことからそう呼ばれるようになったらしい。由緒正しいんだね。
「薩摩藩は…」
「島津!」
振り向くと⬜︎⬜︎達5人がいた。なぜかどこに行ってきたとか話をして成り行きで一緒にご飯を食べることになった。
「白くま食べたい」
「白くまって何?」
「ふわふわのかき氷でフルーツが乗ってるやつ」
「それ飯ちゃうし」
でもとりあえず、白くまで有名な「天文館むじゃき」を目指す。 着いたら見慣れた制服、見慣れた顔。結局クラスも男女も関係ない15人グループになった。 思えば中1からの付き合いだ。皆んなちっちゃかったのに、いつのまにか高2になって、来年は高3だ。雲雀以外に通う生活なんて想像できないけど、皆んなそれぞれの道を歩み出すまであと1年半しかない。
この店はかき氷以外のメニューもいろいろあった。喋らず食べろなんてさすがに無理な話。何がおかしいかわからないけど涙が出るほど笑った。こんなに笑って食べたのは久しぶりだよ。白くまも、オムライスも本当に美味しかった。
食べ終わってそろそろ出ようかというときに⬜︎⬜︎が言った。
「やっぱ西郷さんに会いにいくしかなくね?」
15人で西郷隆盛さんの銅像を目指す。ガイドブックによるとここから歩いて10分くらいだ。でも誰も地図なんか見てないから永遠に着かない気がしていたら、突如として現れなさった。貫禄ありすぎ。
「展望台があるってよ」
「徒歩20分か。登る?」
「登ろう!」
木々が日差しを遮る遊歩道を皆んなで歩く。ずんずん登っていく男子の背中が大きく見える。最後の方は階段がキツくて止まってしまった。
「あと少しーー!」
大山登山を思い出す。あの時も励まし合って登ったっけ。 たった100Mちょっとの展望台に息を切らしてたどり着いた。そこで見えた景色に思わず声が上がる。
「桜島ーーー!」
「すげーーー!」
「きれいーーー!」
この眺め、文理の〇ちゃんも見たかなぁ。 すると
「☆☆ちゃんも来てたんやね。ここすごいね。あそこにソフトあるよ!食べよー」
〇ちゃんと文理の子たちが15人くらい登ってきた。話したことのない人もいたけどみんな顔は知ってる。
「全員で写真撮ろうや」
桜島をバックに、コースもクラスも入り乱れて集合写真。楽しい。なんて楽しいんだろう。楽しすぎて涙が出そうになる。
あと20分。集合時間まであと20分だ。 終わってほしくない、終わってほしくない。そう思いながら私たちは駆け出した。市電に乗って白くま食べて西郷さんと桜島を見た。それだけだ。でもそれだけじゃなかった。
集合場所の「維新ふるさと館」には1秒の遅刻も許さないYの先生が待っている。
(完)
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