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常務理事便り
2023年06月16日
Vol 15 生きる力
~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~
先日報道で、南米コロンビアでの小型飛行機事故が大きく取り上げられました。アマゾンの奥地に墜落した飛行機に乗っていたのは7名、パイロットとアマゾン地域の原住民の家族、お母さんとその子どもたち4名でした。子どもたちは13歳から1歳までの年齢です。お母さんは墜落後3日間は生きていたようですが、ついに息絶え、大人3人は亡くなりました。残された子どもたちは墜落現場から5km離れた場所で、40日後に捜索隊によって無事に救出されたのです。
子どもたちは危険だらけなジャングルの中で、13歳の姉をリーダーとして行動し、食料を見つけ、雨や夜露をしのぎ、幼い兄弟姉妹の命を守りました。記事には、祖父母が子どもたちにジャングルでの生存方法や知恵を教えていたと書かれています。水の探し方や食べられる植物、雨をしのぐ方法など、生き残るための知識が伝えられていたのです。
ひばりの里
泥んこで代掻き中
みんな並んで田植えをしました
この出来事は我々に多くのことを示唆してくれます。現代社会から見れば何もないような大自然の中にも生きていくための方法はあり、それをうまく組み合わせる知恵と知識があれば命をつなぐことができる。自然の中には生き抜くためのヒントが沢山隠されているのです。それらを見つけ繋ぎあわせることが「生きる力」となるのです。日本の教育界で語られる「生きる力」とは生命体として生きるということではなく、社会の中で生き抜いていく力を指しています。主体的、自立的に物事に取り組み、困難に立ち向かいながらも社会で活躍していける力ということです。これがもちろん大変重要な力であることは間違いありません。
しかし、コロンビアの例にもあるように、文字通りの生存や生命を維持するための知識や方法も重要です。現代の子どもたちは自然と触れる機会が減少し、小さな虫やトンボ、カエルに触れることさえできない状況も見られます。また、転んで傷ついたときに血がにじんだだけで驚く子どもたちもいます。
ジャングルで生き延びる能力を身につけさせることを求めているわけではありませんが、少なくとも子どもたちが自然に触れ、川や山の生態を知り、川の水はある方法によれば飲むことができること、山で見つけた果実や植物にも食べられるものがあること、ケガしたときに効能のある植物が存在することなどを体験しておくことは重要です。安全で安心なリスクのない守られた環境だけで過ごす限り、本当の「生きる力」は身につきません。子どもたちだけではなく、大胆に自然に入り込んでいく勇気が、我々大人にも求められています。