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常務理事便り
2024年11月12日
Vol33 剣道のシーズン
~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~
ようやく秋も深まり始めました。スポーツも各所で盛んに行われています。私がやっている剣道は本来、終生を通じての修行を貴びますから、シーズンという概念はありません。ただ、体が動きやすくなる春や秋には、試合や審査が盛んに行われます。11月3日、文化の日は恒例の剣道日本一を決める「全日本剣道選手権」でした。従来は男子の大会で、女子は別日程、別の場所でやっていましたが、今回は武道の殿堂たる日本武道館で男女同時の開催でした。女子は今まで日本武道館ではない場所で行われ、TV放送もありませんでした。ジェンダーギャップの解消という視点もあり、今回は日本武道館で男子と一緒に行われ、初めてTV放送に女子選手の姿が映し出されました。
この写真は本文と関係ありません
また、女子は竹ノ内選手と同じ警視庁に勤める近藤選手が昨年の覇者、渡邊選手の連覇を阻み、初優勝しました。近藤選手は、上記の世界選手権の覇者でもありますので実力は十分で、上位進出も何度かありましたが、10回目の出場にして頂点にたどり着いたのです。
開始直後の初太刀(ショダチ)は見事な「面」でした。剣道では「初一本こそ命」と言って初太刀をどのような機会にどのようにして打ち切るかが修行の大きなポイントになっています。なぜなら、刀であれば一端、振り下ろせば、ほとんどの場合、その一太刀で生き残るか、死するかは決まり、後はありません。残念ながら、映画の殺陣のような立ち回りにはなりません。そうした刀の概念を剣道は引き継いでいますから、命に係わる初太刀の一刀は最も重要視されるわけです。従って、段位審査などでも初太刀は極めて重視されます。即ち、切るか切られるかの刹那に、恐懼疑惑(きょうくぎわく)を捨てて切り込んでいく積極性が最重要視されるのです。近藤選手は開始直後にわずかなスキを見出して、一閃の面を放ちました。その瞬間、場内にどよめきが起こり、見事な「面あり」が宣言されました。おそらく、厳しい稽古が引き出した無心の初太刀であったと思います。
人生においても竹ノ内選手のように「後ろ姿が美しい」処し方をしていきたいものです。また、仕事にあたっては、近藤選手のように「初一本」の精神であとはない、この一閃にかける、という覚悟で臨みたいものです。