学園ブログ

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常務理事便り

2025年01月10日

Vol42 おぉ~寒い!

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 年が明け、二十四節気の小寒を過ぎ、大寒をまもなく迎えますが、その言葉にふさわしい寒さが訪れました。通学の児童生徒の多くは、マフラーを分厚く巻いて、外套のポケットに手を突っ込んで、肩をすぼめながら足早に専用通路を歩いていました。北陸や東北地方は警報級の雪に警戒する必要があるようです。このクラスの寒さが来ると私は学生時代の寒稽古を思い出します。
 母校の寒稽古は例年、小寒に入る1月5日くらいから10日間行われました。入学したころは5日間でしたが、昔の武道専門学校では1か月間にわたり行われたという話がでて、それでは大学共通一次試験や大学後期試験が始まる1月中旬までの10日間でやろうということで、確か2年生の時から10日になりました。
 50年前は今よりかなり気温も低く、校内の池も氷で覆われている時が多かったように記憶しています(今はめったに凍りません)。また、厳冬の夜明け前の6時から、体育館の窓も開け放ち、準備体操を始めます。吐く息は白く濁り、素足の足の裏は冷たさで感覚がなくなりました。激しい切り返しと掛かり稽古を約1時間、その後、互角稽古を30分くらい行います。終わるころにようやくからだが温まり、今度はからだから湯気が出始めたのを覚えています。三日目くらいになると激しい稽古で足、腕、腰等いたるところが筋肉痛になり、足の裏は皮がむけたり割れたり、絆創膏やサポーターだらけとなりました。また、全身の疲れもピークになりますから、頭もボーっとした感じになってきます。
 しかし不思議なものでそのピークを過ぎると体が順応し始めるのでしょう。痛みや疲れが徐々に軽くなってきて、ついにはパワーアップしたような感覚になります。
 当時は嫌でたまらなかった寒稽古、わざわざ厳しい環境に身を置く、理不尽とも思われる稽古を先人はどうして続けてきたのでしょうか。ちゃんと理由はあるのです。その一つは冬は気温が低いがゆえに運動量を大きく増やしても体が耐えられます。暑いとすぐにバテますが、夏とは違い体温が中々上がりません。感覚的には夏場の3倍くらいの運動量でも大丈夫という感覚です。その結果、体の芯が太くなり、強くなります。そして、もう一つは克己心の育成です。早朝5時ころには目覚めますが、道場へ入るまでの足取りの重いことと言ったらありません。また、冷たくなった胴着に袖を通すときのつらさはなんと表現したよいかわかりません。そして、「もう堪忍!」というくらいの激しい稽古を10日間も続けるのですから、上手い、下手に関係なく、やり終えた時の達成感や満足感は大きなものがあります。また、それに伴ってなんとなく自分に対する自信もつくのです。「俺、私もやればできる!」と思うのです。またやり終えた仲間への連帯感や尊敬の念も芽生えます。
 合理性がないと見える伝統的な稽古には、そのように隠された合理的な秘密もあるのです。
 「寒さ」は人を鍛える!理不尽と思えても、時には歯を食いしばって頑張ることも必要です。知らず知らずのうちに人を成長させているからです。