学園ブログ

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常務理事便り

2025年01月15日

Vol43 お天道様が見ている

~雲雀丘学園常務理事 成地 勉~

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 昨年暮れから、今年の初めにかけて、大人として、あるいは職業人として、恥ずべき話題が新聞やインターネットを賑わせています。この職業の人がこんなことをするか、というこれまでの職業観では考えられない話です。一つは東京証券取引所職員によるインサイダー取引、もう一つは金融庁に出向していた裁判官によるインサイダー取引です。ご存じの通り、インサイダー取引とは職業上知り得た未公表の会社情報をもとに、公表前に株の売買をして利益を得る行為です。いずれの例も多額の利益を親族含めて得たわけです。

 一般企業ではなく、そうした取引があってはならないこととして厳しく規制する監督側にいる人間による規制やぶりです。どうしようもありません。 

 更に、直近では某銀行社員による貸金庫破りです。銀行を信用して貸金庫に預けた金品を当の貸金庫管理者たる銀行員が盗み取るという前代未聞の事件です。銀行は多額の金品を扱いますから、横領など、以前からお金にまつわる犯罪がちょくちょく起きていますが、いわば「禁じ手」破りという点において、これまでの事件とは質的に大きく違います。

 これらの犯罪の共通点は職務柄あるはずはないと思われる規範を破って罪を犯しているところです。職業人としての矜持、誇り、倫理観はどこに捨て去ってしまったのでしょうか。なんでもありの世界になってしまったのでしょうか。「こんなことをしたら世間様になんといわれるかわからない、お天道様に申し訳ない。」といった常識的な規範が日本人の心のベースにはあったはずです。「お天道様」という言葉で表された、社会常識や社会規範が「個」の優先が強まっていく社会の中でどんどんと「弱体化」しているのではないかと思います。

 上記の例は氷山の一角でしょう。我々は個として生きてはいますが、社会的生物でもあります。即ち、社会の中で生きている、社会に活かされているという、側面もあるはずです。しかし、こうした考え方が急速にしぼんできてしまっているように思えてなりません。

 「お天道様が見ている」という倫理観、道徳観の喪失は「自分さえよければ良し」「自分を軸として何でもありの世界」に繋がり、社会に大きな混乱を招くことは間違いありません。そうしたことにならないように我々は「個」であるとともに「公」の存在でもあることを偏りなく伝えていくことがより重要になってきています。