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親孝行・やってみなはれ
2017年12月15日
「挨拶」「清掃」は心の鏡―「人間力」が「学力」の基盤―
40年間高校生に対して進路指導をやってきて断言できるのは、学力を上げる最も近道は、人間力をつけることだということです。
現在、雲雀丘学園は、幼稚園から高等学校まで、皆、挨拶の励行に努めています。「挨拶」は心の鏡です。『おはようございます』『ありがとうございます』『失礼します』『すみません』『はい・いいえ』などは、心が曇っていてはできません。呼名されて『はい』と気持ちよく返事し、『ありがとうございます』と言える人は、間違いなく教えられ上手です。
掃除もまた、その人の心が現れます。掃除で思い出深い二人の生徒がいたので、今回はそのうち28年前に担任した一人の生徒のことを書こうと思います。
その生徒は、高校2年から成績が下がってきて、その焦りもあってか、掃除当番でも、一切せずにサボって帰っていました。注意すると、掃除しているふりをするだけでした。夏の保護者との三者面談で、私はお母さんに「申し訳ありませんが、お子様に進路指導する言葉を持っていません。何度か注意しても、彼はまじめに掃除をしません。いやなことを他人にさせて、自分だけよければよいと思っている人に社会のエリートになってもらいたいとも思いません。自分の力で文1に行ってください」と、本当に申し訳ないと思ったのですが、自分の正直な気持ちを伝えました。その夜、彼の父親から電話が入りました。怒りの電話だと覚悟していたのですが、「今日は面談ありがとうございました。子供とゆっくり話してみます」とのこと。翌日から、彼は掃除をするようになりました。私が見ているからだろうと思い、2週間目からは陰に隠れて見ていたこともありました。しかし、手を抜くことなく皆が帰っても丁寧に掃除をするのです。まるで別人でした。
5か月後の冬の面談で、再び母親が来られ「迷惑をおかけしています。子供はまだ面談していただけるレベルではないと思いますので、本日もこれで帰ります」と。私は彼の変化を話し、「彼は変わりました。だから、絶対に文1に合格させてあげたくなりました。今から、面談をさせてください」と申し上げたところ、お母さんは涙を流しながら、あの日父親が子供にいろんな話をしたこと、そしてそれから彼が変わり、今まで馬鹿にしていた妹にも丁寧に勉強を教えるようになったことなどを話され、子供の変化が一番嬉しいと言われたのです。
センター試験が終わり自己採点したところ、彼は文1の足切りになりそうな点数でした。文1の出願を諦めるようにと話したところ、彼は「これは天罰です。足切りになっても来年のために精一杯努力するので、出願させてください。足切りで受験できない場合は、学校に来て勉強します」というので、「では、どんなことがあって自棄にならず、毎日、最善の努力をしていくか?」「もし、受験票が届いたら、それを合格通知に変えるぐらいにやってみなさい」といった言葉に、彼は「はい」と答え、その日から誰よりも早く学校に来て、最後まで質問して帰るという日々を過ごしました。彼の得点の1点下が足切りで、受験票が届いたのです。そして、なんと、二次試験で大逆転して、彼は見事、文1に現役で合格しました。ご両親は文1に合格したことも喜びだったと思いますが、それよりも子供さんの人間性が良くなったことが最高の喜びですと、何度も何度も言われました。
彼は今、多くの人に好かれながら、他人のために役立つべく活躍している。人道を尽くして生きていくことこそ、本当の意味で豊かな人生を送れる近道だと思う。
(中学校・高等学校 教頭 大森茂樹)