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2012年10月31日

内田樹さんの本・2

先生はえらい(筑摩書房)
 これは「えっへん、先生は偉いんだからね」という本ではありません
「あなたがえらいと思った人、それがあなたの先生である」から始まります
 高い知識や技術をもっているからえらい先生だ、というわけでもないようです。自分が「えらいなあ」と思わなくてはならないので、出会う前からいい先生というのは存在しません。そして、友達にとってのいい先生が自分にとってもいい先生とも限りません。ましてや、誰にとってもいい先生というのは、存在しないのです

 「尊敬できる先生」とは「恋人」に似ているのだそうです。誰かを好きになるというのは「周りは色々言うけれど、私にはこの人が素敵に見える」という客観的な意見を断固無視した上で成り立ちます
それと同じで、誰も知らないこの先生のすばらしいところを私だけが知っているという誤解というか、思い込みで師弟関係ははじまるのだそうです

 では、どうすればそんな先生に出会えるか?「えらいと思えるようないい先生に会いたいなあ」と待っていても来てはくれません。自分の足を使って、目を皿のようにして探さなくてはいけないのです
 たくさんの人と出会って、かかわりを持ってはじめて気づく事です。では、どういう場合に人は誰かをえらいと思うのか?この本はそんな人とのコミュニケーション論でもあります

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他にも内田さんの著書、共著、多数所蔵しています

2012年10月30日

内田樹さんの本

 11月7日、学園で行われる内田樹さんの講演会を前に、本の紹介です(残念ながら講演会は保護者の方対象ですが・・・)
 
 内田さんの特技は『頭が理解できないことでも、身体が理解できること』だそうです。身体は頭より一億倍物知りなので、身体が「気持ちいい」と言ったら、おとなしくそれにしたがってごちゃごちゃ理屈は言わない
 そんな内田さんの著書は、フランス文学、哲学、武道、身体論と幅広く、「下流思考」(講談社)や「街場の〇〇論」のシリーズなど多数、図書室にも所蔵しています

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私の身体は頭がいい(文藝春秋)
 たとえば、人はみんないろいろな荷物(責任やいろんなもの)を抱えています。そこでちょっと「私の責任は皆の責任」と言って荷物をおろしてみる。そして逆に「皆の責任は私の責任」と切り替え人の荷物をかついでみる。自分の荷物は重く感じるけれど、他人の荷物は軽く、いくらかついでも重みを感じない。そして、自分の荷物の重みはその人が「他人の荷物をかわってかつぐ」という決断をした瞬間に消える

「やりたいこと」「好きなこと」が何かわからなくて、将来について悩んで知る人も多いですよね

子どもは判ってくれない(文藝春秋)
 職業選択というのは「好きなことをやる」のではなく、できないこと・やりたくないことを消去していった果て「残ったことをやる」ものだ。好きなことを仕事にしていいなあ」と見える人は、好きなことがはっきりしているのではなく、嫌いなことや出来ないことがはっきりしている人なのである

 自分に対して敬意をもつべきだ。それにはまず自分の身体を丁寧に扱うことが必要。自分自身がしたがっていることは何か、リラックス?緊張?休息?活動?欲している食べ物は?音楽は?それらを感じ取ること(身体感受性)がまずその第1歩
 身体感受性の働いている人は、他人の身体にも働かせられる。この人はどういう動作をしたがっているか、何をされたいのか、一緒にいる人について理解し自然に反応できる。そういったささやかな積み重ねが、人の気持ちがわかる人という社会的評価につながるのである

 2冊とも雑誌に寄稿した文章やエッセイを集めたものなので、どれも数ページずつのの文章。中高生にも読みやすいですよ 

2012年10月26日

読書週間です

 明日10月27日から11月9日(文化の日をはさんで2週間)、今年も読書週間が開催されます。第66回目となる今年のテーマは<ホントノキズナ>
 先日、カウンターでこの話をしたら、読書週間を学校が独自にやっている行事だと思っている人がいました。これは全国的な規模の行事なんですよ

 『終戦の2年後の1947(昭和22)年、まだ戦争の傷あとが日本中のあちこちに残っているとき、「読書の力によって、平和な文化国家を創ろう」と、出版社・取次会社・書店と図書館が力をあわせ、そして新聞や放送のマスコミも一緒になり、第1回「読書週間」が開かれました
 それから60年以上が過ぎ、日本は世界のなかでも特に「本を読む国民」の国となりました。「読書週間」が、読書のすばらしさを知ってもらうきっかけとなることを願っています    (読書推進運動協議会HPより)

 秋の夜長、積んだままになっている本を、買ったばかりの本を、図書室の本を
手に取ってみましょう
     
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 先日、お知らせした「あなたのイチ押し」POP大募集中!ぜひ、参加してください

2012年10月23日

マリー・アントワネットの靴

 先日、パリで開催されたオークションに、マリーアントワネットの靴が出品され、日本円にして640万円(520万円という報道もありますが、どちらにしろびっくりするような高額です)で落札されました
 世界史の授業でも取り上げられる悲劇の王妃・マリー・アントワネット。18世紀、ウィーンの名門・ハプスブルグ家に女帝マリア・テレジアの娘として生まれます。ある本によると、父親ゆずりの勉強嫌いで派手で浮ついた性格(散々な言われようですね・・・)で自由奔放な幼少期を過ごし、14歳でフランス・ブルボン家の皇太子(後のルイ16世)のもとへ嫁ぎます。王妃になった後も、レースや絹をふんだんに使ったドレス、羽根飾り付帽子、アクセサリーにお化粧、香水・・・贅沢三昧の日々を過ごし、宮廷のファッションリーダーと言われていたそうです
 そんなアントワネットのはいていた靴ですから、写真をみるととてもかわいい。緑と白のシルクリボンでできたハイヒールです。彼女が当時、召使にプレゼントしたもので、現在もきれいなまま残っていたのだそうです
  *彼女のファッションリーダーぶりは、ソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』で楽しめます

 アントワネットにまつわるエピソードは数々残されていて、後に起こったフランス革命時(1897年)には、飢えに苦しむフランス市民の暴動の様子を聞き一言「パンがなければケーキを食べればいいのに」
この発言は有名ですが、言ったかどうか真偽のほどはさだかではありません
 
 その後アントワネットとルイ16世は、王政に対する市民の怒りに危機感を覚え、変装して宮殿から逃亡、目的地まであと少しというフランス郊外の村・ヴァレンヌで発見され、パリへ連れ戻され処刑台で最期を迎えることになります:「ヴァレンヌ事件」   その最後の1日を書いたマリー・アントワネット運命の24時間/中野京子(朝日新聞出版)

 彼女の一生を描いた マリー・アントワネット 上・下/シュテファン・ツヴァイク(角川書店) も中野京子さんによって完全新訳されました

この2冊で著者・訳者をつとめる中野さんは、美術絵画の著書が多く心の底からゾッとする名画の見方を教えてくれる 怖い絵1~3(朝日出版)などでもよく知られています

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アントワネットを取り巻く、フェルゼン、オスカル、アンドレらを描いた
漫画 ベルサイユのばら全5巻、外伝2巻/池田理代子(集英社)も人気
 

2012年10月20日

図書だより、配布しました

 本日、「ひばりの図書室」配布しました
10/27から始まる読書週間へむけてのイベントとして、『あなたのイチ押し、募集!』と題し本のPOP募集のお知らせを掲載しています
 POPというのは、最近は書店の店頭でもよく見かける、店員さんによって書かれた本の紹介カードです。自分のお気に入りの1冊を他の人にも知ってもらうチャンス。思い入れのある登場人物や、大好きな作家の中でも1番のおすすめ、これはまだみんなが知らないだろう、そんな1冊を選んでオリジナルPOP作りに挑戦してみませんか?

 この数日、本をかりに来た人や図書委員に声をかけたところ、「作ってみたかってん!」「どの本にしようかな」と早速、参加表明。どんな作品が届くか楽しみです
詳しいこと、応募用紙は図書室まで!
 作ってみたいけれど、どんなふうに作っていいかわからない・・そんな人は図書室で一緒につくりましょう。出来上がったPOPは展示していきます。コンテストも予定しているので、ぜひ参加してくださいね

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   あなたのイチ押しはなんですか?    これは私が本のオビを利用して作ったPOP

2012年10月17日

思考のレッスン

 この時期、自己推薦文や小論文対策に、頭をかかえている高3生も多いと思います。そこで丸谷才一さんの著書からもう1冊紹介します
 この本面白いよと誰かに伝える時の心の弾みと、どう書けばその本の面白さが伝わるのかという知的好奇心をもって、文芸の中に「書評」というジャンルを確立させた第一人者でもある丸谷さんが、考えるコツ書くコツを語ったのが、思考のレッスン(文藝春秋) です

 まずは考えるコツ。物事を考えるためのベースとして、本を読むこと、名文に接し名文に親しむこと。 読書によって情報が得られ、考え方、書き方が学べる。それが自分の手持ちのカードになる。読み進めていくうちに「不思議だなあ」と自発的に感じたことは、自分の中で良質の『謎』になる
 でも、その答えを探そうと慌てて本を読んでも、そう簡単に見つかるものではないので、まずは考える。自分が今までの人生で手に入れてきた手持ちのカードと『謎』を突き合わせ、あーでもない、こーでもないと考える

 次に書き方のコツ。文章は書きながら考えるのではなく、頭の中でワンセンテンス(1文)を完成させてから、一気に書く。もし、筆が止まってしまったら、今まで書いた文章を始めから読み返す。「だった」「だった」「だった」や「ます」「ます」「です」「です」が続くと、それが気になって肝心の中身がわからなくなる
 書き始めたら、とにかく前へ向かって着実に進み、逆戻りしたり、休んだりしないこと。字数が足りないからと言って水増しするのもよくない。考える時間が短いから、書く時間が長くなる。たくさん考えて書く時間を短く。考えること、それにつきる

maruya5.jpg   丸谷さんは言います。忙しい時こそ本を読まなければ
  ならない。暇な時は本を読まずに思考しよう。忙しい時に
  読んだ本を土台に暇な時にゆっくり考える。それが大事
   
   思考するのにも、『謎』を解くときにも手持ちのカードは
  たくさんあった方がいいですよね

2012年10月16日

丸谷才一さんのこと

 先日、小説、評論、エッセイ、翻訳とあらゆる文筆分野で活躍されていた丸谷才一さんが亡くなられました
「不思議と思うことを大事にしてきた」「学術も芸術も面白がることが大事」と語っていた丸谷さん。旧仮名遣いで書かれた独特な文章、ユニークなエッセイや日本語に関する評論など、著書も多数です

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  桜も さよならも 日本語(新潮社)
 テレビやラジオで耳にするトンチンカンな敬語やアクセント、ら抜き(見られる→見れる)に苦言を呈したり、国語の教科書や大学入試国語問題などについて論じている1冊
 「国語教科書を読む」の項では、国語の授業で取り上げられる読書感想文に対して、読んだ本について何かを書かせようとするのではなく、読むことをすすめ、あとは学校図書館に面白い本を用意しておけばそれでいい
 例えば、男の子たちにこれから野球をしようと提案すれば皆喜ぶけれど、その後に各自、試合の事を作文に書くよう義務付ければ、皆ゲンナリするだろう。読書感想文もそれと同じ。読書から喜びを奪ってしまう。まず教えなくてはならないのは、快楽としての読書である

 「快楽としての読書」 魅力的な言葉です。そんな体験ができる場所にしていけたらいいな、と思います

2012年10月11日

ノーベル医学・生理学賞

 先日、ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥さん。山中さんは2006年に皮膚の細胞に遺伝子をくわえ、あらゆる組織や臓器の細胞に変化する可能性をもった細胞の作成に成功し、iPS細胞(人口多能性幹細胞)と名付けました。再生医療における世界的大きな1歩です
 「患者さんを救いたい」という医師としての一貫した信念を原動力に研究を続けた山中さんは、待っている患者さんのためにも、少しでも早く臨床応用ができることを望んでいます。国内では網膜への臨床応用が来年あたり行われるだろうと言われていましたが、今朝の新聞によると、すでにアメリカでは人への臨床応用が行われたようです。心臓の機能が低下した患者に対し、本人の肝臓から採取した細胞で作成したiPS細胞を増殖させ心臓に注入。その後、患者は回復、健康な日常生活を送れているそうです
 同じ医師でも、大学などで基礎研究をする山中さんのような立場と、直接患者を診る臨床医という立場があります。どちらも重要なポジションです

 また、山中さんは日本の論点2011/文藝春秋編の中で、研究人生を支えてくれた言葉として「VW」をあげています
「VはVision、Wは Work Hard。はっきりした目標をもち、それに向かってハードワークせよ、という意味である。夢中になって一生懸命やるのはいいが、注意しないと、その仕事自体に満足して、その先のビジョンが見えなくなることがよくあるのだ。それでは無駄な努力に終わる」 (本文より) 勉強にもいえることですね

 関連する本の紹介です。この数日、テレビや新聞でiPS細胞とは?と何度も取り上げられていますが、再生医療への道を切り開く iPS細胞 (ニュートンプレス) では絵や写真を用いてわかりやすく、詳しく説明しています

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 また、老化の加減が人によって違うように(老眼になっても髪はふさふさで真っ黒の人もいれば、目は問題ないのに髪は真っ白な人もいる)、臓器もそれぞれ人によって機能の低下加減が違います。再生医療が進んで、病気でなくても機能が低下した臓器をiPS細胞を用いて置き換えてやれば、ヒトは最大寿命である120歳まで生きられるのではという可能性をかいた ヒトは一二〇歳まで生きられる/杉本正信(筑摩書房)  分子生物学に興味のある人は読んでみては?

2012年10月04日

作家の顔

 「先生、この人が村上春樹?」
本の情報誌「ダ・ヴィンチ」10月号の表紙を指さし、尋ねられました。今月号の特集「いまこそ、村上春樹」の大きな見出しと、バック一面に若い男性俳優の写真・・・残念。「違うよー!」と思わず笑ってしまいました
 
今や国民的作家と言われている村上春樹さん。作品はアジアやヨーロッパ、アメリカなどでも翻訳され各国で人気です。中国では「絶対村上(ばっちりムラカミ)」 台湾でも「非常村上(すっごくムラカミ)」などという流行語も生まれたそうです
 最近は作家の方々の雑誌や新聞のインタビュー記事なども増えてきましたが、顔を認識する機会はまだ少ないですよね。特に村上春樹さんは写真を含めほとんどメディアに出ない方です
 たくさんの作家の中には、名前だけでは性別もわからず「男の人と思ってたら女の人やった!」とびっくりしている人も(有川浩さんを男性と思っていた人、多し)
 
 その村上さんが少し前になりますが、9/28の朝日新聞・朝刊に尖閣諸島、竹島など東アジアの領土問題について寄稿しています。中国では村上作品を含む日本の書籍が撤去されたり、文化交流にも影響を及ぼしていました。そんな状況を村上さんはどのように見つめているのでしょう?特有のメタファー(比喩のようなもの)をもちいた文章で書かれています。写真も掲載されているので、この機会に認識してくださいね。今、日本で世界的な文学賞に一番近いといわれている作家です。記事は図書室にも掲示しています

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 村上さんは、長編小説が代表作に挙げられることが多いですが、このようなエッセイなどの作品も多く、初期の作品では阪神間で過ごした高校生までの事を書いていて、案外身近な場所が語られたりしていますよ

2012年10月02日

9月の新着図書

 10月です、今日から合・冬服になりました
以前紹介した七十二候で今日は、蟄虫培戸(むしかくれてとをふさぐ)に入ります。巣ごもりをする虫たちが戸を閉ざし、蛇やカエルなどの変温動物が冬眠の準備に入る頃です。一昨日の日曜日は、中秋の名月でした。すっかり秋です
 でも、中間考査1週間前でもあります。テストに向けて準備に入らねばなりません

 「ひばりの図書室」9月を出し逃してしまいました。10月分は考査後に発行予定です。もうしばらくお待ちください。けれど、本は続々と到着しています。毎回、新着図書をくまなくチェックしてくれている人たちへ、テスト的にこちらで新着図書のリストを掲載してみます

9月新着図書