学園ブログ

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学園自然百景

2022年12月02日

45.「あにはからんや」

~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~

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 紅葉の立役者のカエデ、サクラ。そして人気なのが、栽培などが簡単で、気温があまり下がらなくても紅葉するナンキンハゼです。学園にも何本かあります。

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紅葉するナンキンハゼ

 そのうち小学校のナンキンハゼは、伐採されました。子どもたちが、自分の木として選んだり、真っ赤な丸みを帯びた菱形のかわいい落ち葉が人気でした。なのになぜ伐採したのでしょうか。それは、この木の特性からくるものがあったのです。

 

 ナンキンハゼは、名前にあるように中国から日本に移植されるようになりました。それは、日本蝋燭を作るためです。もちろん付随して秋の美しく染まる葉もその、理由でしょう。

 和ろうそくの本来の材料ハゼノキは、琉球から入るようになり、和ろうそくが量産されるようになりました。ただ、ハゼはウルシ科の植物で、かぶれやすいのが難点です。その点、ナンキンハゼは、かぶれにくく、ウルシとはついているものの、ウルシ科ではなく、トウダイグサ科といわれる仲間です。幹や葉からかぶれる汁が出ることはありません。

 果実は、夏は緑。熟すと黒くなり、秋になると実が3つに裂けて中から、白い3つの種が見えます。まるでクリスマスツリーに灯を灯したような感じです。特に冬の葉が散ったナンキンハゼは、残った白い実が輝いています。ただし、種には毒があり口に入れることは厳禁です。鳥たちは丸呑みして、周りの白い蝋物質だけを体に取り込み種だけを排出しています。

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花と実をつけたナンキンハゼ
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白い種がクリスマスツリーに灯りがともったような様子


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実がなる様子
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実がはじけた様子
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種の拡大


 とはいえ、人間にとって鳥にとって素晴らしいナンキンハゼは、日本にとって良い結果をもたらさないものになってしまったのです。

 特に奈良では、シカが食べないこのナンキンハゼがその繁殖力の強さから、駆除対象になっています。

 環境省では、我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)の中で、照葉樹林の環境に影響を及ぼす「その他の総合対策外来種」として挙げられているのです。そんな経緯があり、また、その根が石垣を割るほどの勢いを増してきたこともあり、残念ながら伐採に至りました。

 人にはとても有益な樹木で。花言葉は、「真心」「心が通じる」です。あにはからんや日本の樹木にとっては厄介な存在になるのです。

 育つ環境が大切なんですね。