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学園自然百景
2023年10月06日
85.「宝暦12年の春」
~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~
ひばりの里の入口を入ったところの木に巣箱があります。これは、今の6年生の児童が2年生の頃、この里に持ってきた自作の巣箱です。入口が小さく、小さな鳥が棲み着いてくれるといいなと願いながら設置したものです。
時折覗いてみるのですが、その痕跡は今のところありません。と、ある時巣箱の蓋を開けてスマホを入れて写真を撮ったところ、鳥ではない住人がいました。
その住人はヤモリでした。最初は体の一部しか撮れなかったのですが、数日前に全身が撮れました。少し、ニホンヤモリとは違った模様があり、調べたところ、ワタヤモリという種類で、絶滅危惧種であることがわかりました。大発見でした。このまま増えてくれるといいなと思っています。
17年江戸後期、安永2年に西村白烏(にしむらはくう)が発表した「煙霞綺談(えんかきだん)」という書物の中に、ヤモリを取り上げた話があります。古くなった家の壁の雨除け板を替えて数年経ったところ、板を打った釘が貫通したヤモリがいたといいます。そのヤモリはクルクル回るように動き回り、元気だったといいます。何故このような状態で元気だったか不思議に思っていたところ、一筋の黒い道があり、そのあとをたどると、どうやら長い間餌をメスが運んでいたようだというはなしです。それが、「宝暦12年の春」だそうです。この随筆には、様々な聞いた話を集めたといいます。根はなしの前には、モズの「はやにえ」や鳥たちが自分の巣を守るための方法について、そのあとには、ある召使いが射た矢がたまたま当たった雁を主人が友人たちを呼んで食べたあと、召使いが当たった雁の場所に行くとメスが悲鳴を上げていたので、その召使いは僧侶になったという話がのっていました。
人間以外の生き物も自分たちの家族を守るために知恵を働かせ助け合い、大切にしていることをこの江戸時代から学んでいたのだとかんしんさせられました。