9月14日(日)、環境大使とそのご家族、担当教員とで晴天のすがすがしい篠山へ行ってきました。まずは辻営農生産組合の青野様に本日の作業と、現在の農家のかかえる問題についてお話を聞きました。
・丹波篠山黒大豆
過日、大使が植えた黒豆、このように成長しました。今年は大雨に見舞われて、もともと水はけの悪い畑の場所だったこともあり、田んぼのように黒豆畑が水で満たされてしまいました。茎疫病が流行って、たくさんの黒豆が枯れてしまい、大使の植えた範囲の畑だけでも135本の黒豆が立ち枯れして、それを抜く作業をしました。丹波篠山黒大豆は10月5日に出荷解禁を迎えます。それまでにでている黒豆は違う黒豆ということになります。誇りをもって作っています。収穫を楽しみにしていてください。
・水害にからめて、林業のお話
みなさんの立っている周りにたくさんの杉の木が植わっているのがわかりますか?そして松の木が全くないのもわかりますか。松が生えていない理由はなんでしょうか?それは、戦中に松は飛行機や武器をつくるための油の原料として採取されたからです。「松ヤニ」という言葉、聞いたことがあるでしょう。
その後、杉の木は建材になるため多く植えられました。広葉樹が減り、針葉樹ばかりの森になりました。広葉樹は落葉してフカフカの地面をつくり、水を保ちます。昔の森は水を蓄える木々がたくさんあったので、雨が降っても3日は・・少なくとも3~4時間は、このような山の傍でも水がおりてくるまでの時差がありました。今では(アスファルトの都会よりはましとはいえ)雨がふれば、すぐに水が流れてきます。水害はこうした環境とも深く結びついています。
そしてこの杉の木は、おじいさんが孫のために植えた木です。林業は、祖父の代が植えた木を売り、また、自分たちが子孫がくらしていくための苗木を植えることで受け継がれてきました。しかし今、祖父が植えたこの杉の木を私が売ることはありません。なぜだかわかりますか。安い輸入材木がたくさん入ってきて、木の値段は5分の1とも10分の1ともいわれています。木を伐り出す作業をするだけで赤字になってしまいます。
・稲について
今年は大雨がたくさんあった年でした。広島などの土砂災害が報告されていましたが、篠山でもあちこちで土砂災害がありました。稲にも影響があり、篠山一帯は収穫時期が早いので毎年この時期には収穫も終わっているのですが、見ての通り、まだたくさんの稲が田んぼに植わっています。雨が多く、稲がぬれたり倒れてしまったりした影響がでています。
農家と米の関係も大きな変革を迎えています。温暖化で鹿児島などの南の地方では、今までの品種がうまく作れなくなり、気温の高い場所で作れるように品種改良したコメを作り始めています。また、米作の北限は今まで東北あたりと言われていましたが、気温の上昇と共に北海道でいいコメが作られるようになっています。「温暖化」といわれますが、みなさんのくらしの中にも具体的に影響がでています。
・畑整備、下草刈りとは
畑の周りの樹木の下草を刈ることは、畑の日照を守り、良い畑の環境を守るために非常に大切です。農道に車を入れる時も周りの茂った木々の枝が垂れ下がってきていて、車の屋根にドンドンと当たっているのが見えましたね。こうしたことが起こらないように、畑の周りの木を刈ることはその畑の持ち主の権利として認められてきました。そして、昔は炊事や風呂などのエネルギーを得るためにこうした下草を薪としても使っていました。毎日のくらしの中に下草刈りは自然と組み込まれて、「権利」としての整備をしてきた歴史があります。今は畑周りの木々の整備をすることは農家の「義務」になりました。「義務」と「権利」は紙一重ということはこうした農作業にも限らず、経済の中でみなさんの周りにもたくさん生じていることと思います。もはや薪は必要なくなりました。暮らしの中でまわっていたものを、今はあえて「作業」としてしなければなりません。このように下草刈りも農家の負担の一つであり、畑の環境を守る事の一つになっています。環境大使に入っているみんなは「環境」に意識も高く、興味もあると思いますが、畑の環境ひとつとっても、人の暮らしなどのエネルギーや、農作業の移り変わりが深く関わっていることがわかることでしょう。
・節のない檜をつくる
出雲の遷宮の話題を耳にした人も多いでしょう。出雲大社につかわれる檜の建材には節がひとつも!ありません。どうやってつくるかわかりますが。節は枝が生える場所にできる・・そう、枝を綺麗に剪定し続けて、まっすぐで節のない建材をつくります。非常に手間がかかり、高価な建材です。
吹き抜ける風の中で、木々が揺れ、黒豆の緑が光っています。人の暮らしと農業と、私たちの生活、遠くつながっていないように感じていたものが一つ一つむすばっていきます。大使達も静かに耳を傾けていました。
お話を聞いて、早速作業下草刈りのに入りました。のこぎり・なた・鎌・・どれも初めて使う道具ばかりです。安全に使えるように説明を受け、コツも教えていただきましたが、初めは苦戦しました。「こんなに大変な作業とは・・」と、「出雲大社の節のない檜をつくるなんて、どんなに大変か・・」と、青野さんのお話も実感として味わいました。たくさんの枝をはらい、道がどんどん綺麗になって、達成感がありました。大変な作業で、疲労困憊しながらも、この日もやはり笑いと元気と発見がたくさんの作業になりました。山の斜面を登り、枝をはらい、力強く運んでいた姿が眩しかったです。大使のみなさんお疲れ様でした。次回の作業もがんばりましょう。
黒豆畑で 青野さんのお話を聞く
道具の使い方を聞いて 作業開始
斜面をのぼり 枝を運び
綺麗になってきた 時にはこんな出会いも・・
ツタも引いて・・ お疲れ様でした!
以下大使感想
・木をいっぱい切った。トゲがいっぱいあって大変だった。
・楽しかった!とても疲れたけどみんなでお弁当を食べて復活した。直径5cmくらいの木を切った!
・ナタは縦に入れるのではなく、斜めに入れると切れるとわかった。
・のこぎりは木に垂直に!「〇〇と鋏は使いよう」上手につかいたい。
・道に出てジャマになっている木を切って、下草を払った。道具は工夫して使うとさらに効率があがる!
・木の周囲にはたくさんの虫(ザトウムシ・ムカデ・アリ・ダニ?など)がいることがわかった。
・木の枝が絡むと伐採するのが思ったより大変だった。
・道具を使い慣れるのに少し時間がかかった。
・とてもきれいになったのを見て、やりがいを感じた。ムカデがいないかが怖かった。
・木が重かった。みんな頑張っていたので自分も頑張ろうと思った。
・気温が良かったから活動しやすくて良かった。
・帰りのバスで疲れて寝てしまった。もっとみんなど話したかった。
・意外に綺麗になっておどろいた。役に立てた感があり、嬉しかった。
・ナタの使う方向を間違えていた。
・道具に慣れるのに少し時間がかかったが、15人以上でぶっとおしでやったので、すごくきれいにすることが出来た。
・のこぎりで力を入れすぎて手が痛い・・でもものすごくキレイ!やりがいがあった!
・疲れたけど、伐採した木をフェンスにかからないように遠くに投げ入れる作業が楽しかった!
・風が気持ちよかった。汗がどんどんでて焦った。水分をたくさん持って来よう。