学園ブログ

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学園自然百景

2022年10月28日

40.「思案」「略奪愛」

~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~

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 秋の七草の一つ、ハギです。中でもヤマハギという種類だと思われます。

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ヤマハギの写真
 ハギは、万葉集の中で、数多く詠まれている草花です。サクラやウメよりも多いそうです。万葉集では、ハギを女性に例え、鹿を男性に例えていることが多いそうです。その1つに

「我が岡にさを鹿来鳴く 初萩の 花妻どひに来鳴くさを鹿」

 この句は、大伴旅人が詠み人です。萩を妻に例えて、牡鹿がプロポーズをしている場面を詠んだようです。

 萩の花は、少し垂れ下がる枝につき、下を向くように咲いている様子から、「思案」という花言葉がついたようです。





 それに対して「略奪愛」という激しい花言葉。これは、同じハギの仲間ですが、夏の終わり頃から咲き始めるアレチヌスビトハギという花です。

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アレチヌスビトハギの写真
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 子どもたちは、「ひっつきむし」と呼んでいます。この呼び方をする植物は、いくつかあります。このヌスビトハギの他にも、オナモミやアメリカセンダングサ等がありますが、今年は、このアレチヌスビトハギが、特に繁殖しています。

 「ひっつきむし」の名の通り、ひばりの里に行くと、必ず実が服に付いてきます。はがすのに一苦労します。

 これは、実に鈎状のとげが多く出ているためで、マジックテープのような働きをするためです。

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服についた写真
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実の拡大写真
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 その実の中には、つるっとしたマメ科らしい種が入っています。

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種の写真
 実の形が、つま先で歩いたようになっているため、「盗人」の名前が付いたようです。また、知らない間にひっついてきて、繁殖域を広げるということもあるようです。その名前から、「略奪愛」という過激な花言葉がついたようです。

 同じマメ属で、ハギという名の付いた同じ種類の植物ですが、種類としては、別の種類になります。一方は控えめ、一方は活発という所でしょうか。

 ただ、日本では、ヌスビトハギは外来種ですが、北アメリカでは在来種。逆にヤマハギは、北アメリカでは外来種として繁殖、日本での在来種。互いにそれぞれ浸食し合っていると言えます。

 立場を変えて見ると見方もずいぶん変わってくるものです。