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学園自然百景
2023年02月10日
53.「溢れる思い」
少し暖かい日が何日かありました。春がそこまでやってきているようです。
春を前にこの寒い冬の間、実をつけたままの木がひばりの里にあります。
イヌビワの木
イヌビワの雄株の花嚢
イヌビワという植物の実と言いたいところですが、ちょっと違っていて、花嚢(かのう)とよばれるものです。
実はこの植物、ビワと名前がついていますが、イチジクの仲間になります。そう言われれば、似ていませんか?
ビワは、イチジクの前に日本に入って来たので、この名前がついたときには、イチジクがなかったらしいのです。調べてみると、このイヌビワを当時はイチジクとよんでいたらしいのです。ビワには、目立たないものの白い花が咲きます。イヌビワには、外から見て花が咲いているようには見えません。無花果の字の通りなのです。花は、この花嚢とよばれる中に花が咲いて?いるのです。また、この植物は、一種類のイヌビワコバチという昆虫でしか受粉せず、イヌビワコバチもイヌビワにしか卵を産まないというなんとも不思議な植物、昆虫です。その上、雌雄異株といいオスの木、メスの木があり、花は両方に咲くのですが、メスの木(雌株)に咲く花にしか実がなりません。特に雄花雌花が咲くというわけでもないので、見分けにくいのですが、この時期に実をつけているのは、雄株だそうです。というのも、雄株の花嚢は、イヌビワコバチの卵が、冬を過ごすためだけにあるのです。春になって、コバチが成虫になって出て行くと、枯れてしまうそうです。
花嚢の拡大
花嚢の中 ふくらんでいるのが、
イヌビワコバチの卵が入った虫こぶ
雌株の花嚢に入ったコバチは、卵を産もうとするもめしべの管が長く、産み付けることができないそうです。体に付いた花粉が、子房に届き受粉し、実がなります。一方コバチは、潜るときには、羽が取れ、花嚢のふたが閉じ、その中で、一生が終わり、その体は、どうやらイヌビワの中で溶けてしまうようなのです。
イヌがつくと、おいしくないとか食べられないという印象が、ありますが、この雌株の花嚢は、甘い蜜を出し、食べられるそうです。ジャムなどにして食べられることもあると知りました。ただ、この話を聞くとどうも食が進まなくなってしまいますね。
「溢れる思い」という花言葉は、その蜜が溢れ出すことから付いたようです。花嚢の中で、たくさんの花を咲かせるものの、外に出ることはなくいろいろ思いをはせているのかも知れません。この植物を調べるとますます疑問が溢れ出してきます。みなさんはいかがでしょう。