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学園自然百景
2023年04月21日
63.「天の使い」
~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~
「Ledybug」は、ある昆虫の英語名です。Ledyは、聖母マリアを意味しています。Bugは昆虫です。淑女の虫と訳すのでしょうか。
次の写真は、成虫とは、似ても似つかない形をしています。完全変態(からだの形を変えるという生物学上の言葉)とはよく言ったもので、全く形の違う成虫になっていくのですから不思議です。
羽化した頃は、羽が黄色くしばらくすると、独特の赤に黒い星が現れてきます。この色がよく描かれる聖母の赤いマントの色に似ていることからladybugと呼ばれるようになったそうです。
この昆虫は、益虫として現在様々な場所で人間にも利用されています。ミツバチは、イチゴのハウス栽培等では、巣箱が貸し出されるほど重宝されています。もちろん人間が、いただく蜜を集めるという主要な役割もあります。
しかし、この昆虫は、特になにかを集めるわけでもなく、受粉をするわけでもありません。その昆虫が、害虫であるアブラムシをえさとするところから、生物農薬というぶっそうな名前が付いているのですが、環境にやさしい自然の害虫対策として利用されているそうです。
学園には、カラスノエンドウがよく茂っています。子どもたちは、その実をよく「ピーピーマメ」といって笛を作って遊びます。そこにはびっしりアブラムシが付いていることが多く、上の写真に写っているのはカラスノエンドウにいるナナホシテントウの幼虫です。よくみると、アブラムシの姿がみられ、捕食しているとおもわれます。成虫、幼虫ともアブラムシを食べるので、効率が良いのでしょう。
テントウムシ。漢字で書くと天道虫。細い葉や枝等を上っていき、行き場がなくなったときに羽を開いてとんでいくところから、太陽に向かって飛ぶ虫、太陽神の使いの虫として尊ばれました。
ナナホシテントウは益虫なのですが、テントウムシの中には、人間にとって害虫に成る種類もあります。それは、えさになる物がジャガイモの葉などの野菜の葉を食べるものです。ちなみにナスやジャガイモにつくのは、ニジュウヤホシテントウという種類です。28の星がついています。この昆虫には、農薬が使われ駆除されることになります。同じテントウムシの名前がついているのに、なんとも対照的な扱いです。
ナナホシテントウやナミテントウは、夏の季語として俳句にもよく詠まれています。
天道虫天の密書を翅裏に
堅い赤いはねの裏に折りたたまれた薄い後ろばねのことを密書に例えているところが面白いです。三橋鷹女の俳句です。テントウムシがとんで来て、はねを折ってしまっているところをよく見て詠んだのでしょうか。その様子が目に浮かびます。
4月も終盤を迎え、新入生たちも新しい環境に慣れてきたところでしょうか。太陽の光からパワーをもらいながら、元気にはねを広げ飛び回ってくれることでしょう。