学園ブログ

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学園自然百景

2023年11月10日

90.「先入観」

~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~

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 ついこの間、汗をかくほどの夏日になり、秋は遠いのかとため息をついていたかと思えば、急に肌寒さを感じるようになりました。

 いつもの通り、早朝にひばりの里へいくときに白いマイクロバ2台が止まっていました。どうやら園児の園外保育のためのものでしょうか。

 ふと見ると、その真っ白な車体に傷らしきものが見えたのです。白い車体なので、遠くからもよくわかりました。気になるので、近くに寄って見ると、少し削られたような感じにも見え、汚れているようにも見えました。せっかくの白い車がと思いもう少し近寄って見てみると、きれいな形をした蛾でした。

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はじめは、傷か汚れに見えました。
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よくみると蛾でした。

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折り紙で折ったひな人形のような
ツマジロエダシャク
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名前の由来となる白い模様
 
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白く横に伸びる触角
 

 ガというとどうしてもマイナスイメージです。なぜなんでしょう。まずその呼び名である濁点のついた音でしょう。ところがなぜそのように呼ばれるようになったかはわからないようです。蛾の漢字は、中国で呼ばれていたガをその音に当てはめた漢字だそうです。嫌われるもう一つの理由にその色にあります。よく言われるのは、茶色いような色ですが、夜の電灯に集まる様子がまた拍車をかけているのでしょう。ただ、ガの色は様々です。チョウは、きれいというイメージですが、チャバネセセリなどは、蛾と呼ばれる茶色いイメージに似ています。しかしながら、蛾と呼ばれるものには、とても鮮やかな色をしたものもいます。オオミズアオは、薄いグリーンでとてもきれいなのですが、夜に翅を大きく広げてとまっているだけで不快と感じでしまう方も多いですね。

 6000種類いるチョウ目の中でチョウと呼ばれるものは約250種類といわれ、それ以外のものはガと呼ばれますが、その違いは遺伝子レベルとされはっきりと区別される特徴はないそうです。どちらかといえば人間の感覚的なものとも言えそうです。ですから、名前の知らないチョウ目が飛んできたときに「あれはガです」というと嫌がり、「チョウです」というとホッとする経験もあるのではないでしょうか。

 ガは、人間ととても深い関わりがあります。特にカイコガは、お蚕さんと呼ばれ、絹糸を作る貴重な蛾として世界中で重宝されてきました。もとは、ヤママユガと呼ばれる種類のものを人間が、人間のために育てて利用してきました。成虫は、白くかわいらしい顔をしています。

 話を戻します。車についていたガは、ツマジロエダシャクという種類です。直線で引かれたようなフォルムは、かっこよささえ感じます。はねの先に白い模様があることからこの名前がついています。ひときわ白く横に伸びた触覚もなかなかなものです。

 シャクとついているのは、尺取り虫とよばれる幼虫の様子からです。他の蛾の幼虫についている真ん中の足がなく、まるで、指で長さを測っているように動くことからこの名前がついています。

 もし、私が、車の傷だと思い込んでしまったら、このガには気づかなかったことでしょう。先入観だけでものを判断すると、見えるものも見えなくなってしまうので、気をつけたいものです。