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学園自然百景
2024年11月08日
136.「ちいさないのち」
~雲雀丘学園小学校教諭 天井比呂~
この写真の生き物名前を検索すると、2種類出てきます。一つは貝です。これはかなり出てきますので、とても重宝されているのでしょう。中でも宍道湖のこの貝はとても有名です。食にも関係するので、よけいに多いのかもしれません。この名前の貝は、貝塚からも出てくるので、古くから人間と関わって来たと言えます。一方、チョウの方もほぼ同数の検索結果。このチョウはとても身近でたくさんいるのです。都市部でもよく見られます。そのためその数も多いのでしょう。しかしながら、そんなに身近な割にメジャーとは言い難いチョウです。タテハチョウの仲間のように茶色く見栄えの良くない種類と比べると、派手ではないものの素敵な紋が翅に並んでいて、翅を広げると鮮やかな青い色をしてるきれいなチョウでもあります。
ヤマトシジミ。がそのチョウの名前です。ヤマトは、日本を表します。シジミは、最初に述べた貝のヤマトシジミのシジミから来ているようです。小さいという意味を含んでいます。日本の小さいチョウということになります。
このチョウの名前を使った絵本があります。「ヤマトシジミの食卓」という本です。(吉田道子作、大野八生絵)
女の子がカタバミが周りに茂った丸い平たい石に座っていた1人の老人との奇妙な出会いから始まる物語です。平成22年には、読書感想コンクールの推薦図書に選ばれているので、記憶に残っておられる方もいるのではないかと思います。その中で、老人がヤマトシジミの食卓と見立てた丸い石を中心に話は進んでいきます。その物語の中で、ヤマトシジミの生態にも触れています。カタバミを食草とする幼虫のこと、葉の裏に卵を産んでいること、卵の形状も正確に書かれています。なぜヤマトシジミだったのか。モンシロチョウではなかったのかはわかりません。ヤマトシジミは、小さく、薄いグレーの翅に黒い斑点がありますが、よく見ないとわかりにくいです。羽を広げているところは、あまり見ないので、鮮やかな色もわかりにくいところがあります。目立ちにくいところをこの物語の主人公の「じっちゃん」にかぶせていたのでしょうか。
ヤマトシジミを追いかけていくと、カタバミに止まって、腹をまげて、葉の裏に卵を産む場面を見ることができます。機会があれば、この目立たない小さなチョウですが、チョウを追ってみてはいかがでしょう。その生命に感動を覚えるかもしれません。