選特化学 授業の補足26
芳香族の学習も終わりに近づきました。反応については暗記するのではなく、合理的な説明ができるように求めています。そのためにもベンゼンに対する求電子置換反応は理解しておく必要があります。
フェノールは石炭から得られるコールタールから発見されました。そのため石炭酸の別名があります。その後、医薬品や染料の合成材料として需要が増すと、ベンゼンを原料として大量合成する必要が生じました。しかし、H+をOH-で置換するのは容易ではありません。そこでClのような陰性原子を使って、求電子置換反応によってクロロベンゼンをつくり、求核置換反応によってフェノールに置換する方法が考えられました。陽イオンが電子を求めて芳香環の水素原子と起こす置換反応を「求電子置換反応」というのに対し、芳香環に結合する陰イオンが入れ替わる反応を「求核置換反応」といいます。
現在はクメン法が主流です。まずベンゼンにプロペンを求電子置換反応によって付加させてクメンをつくります。これはルイス酸によるアルキル化でフリーデルクラウツ反応ともいわれます。クメンを酸化して、より陰性の強い原子団に変え、陰イオンで脱離させてOH-と置き換えることによってフェノールが合成されます。