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2007年10月31日

ちょっとした話

 昨日、11年前に卒業した卒業生(私が初めて担任を持った学年です。)が学校に訪れました。彼は、本校を卒業し、国公立大学に入学し、その卒業後、大学院に行っていたそうですが、10年以上音沙汰がなく、本当に久しぶりでした。今回、訪れた理由は、留学するそうで、英文の卒業証明書と成績証明書を取りに来たのです。元気そうで何よりと思いました。今年は、懐かしい卒業生に会う年ですね。実は、同じ11年前の卒業生に文化祭の時にも会ったのです。本人は、久しぶりに母校に遊びに来たそうなのですが、この学年の生徒に会うのは、ここ数年来です。2回も会うとは、すごい偶然だと思います。しかも、高3で私のクラスの生徒ばかりとは驚きでした。
 ところで、話は変わりますが、最近の子供はコンピューター(ゲーム)ばかりやっていませんか。携帯やコンピューターがこれだけ普及した時代なので、仕方がないかも知れませんが、昔ながらの遊びを少し思い出す今日このごろです。少し前に数楽パズルをいくつか紹介しましたが、今回は、紙と鉛筆さえあればちょっとしたときに遊べるものを紹介しておきましょう。3ます×3ます(4ます×4ます)の方眼を書きます。そこに順番に○と×をつけていくゲームで、一直線に並べば勝ちとなるものです。やったことはありませんか。ほとんど勝負はつきませんので、これを発展させましょう。正方形を線で書き、対角線を引き、さらに、真ん中に縦と横の線を書きます。(つまり、合計8本の線を書きます。)そうすると、線の交わりに9個の点が出来ます。その9個の点に駒を置いていきましょう。(駒は、白と黒を3個ずつ用意しましょう。)順番に置いていき、3個が一直線に並んだら勝ちです。ただし、全部で6個置き終えたら、次に線に沿って一個ずつ移動していくのです。ただし、駒を飛び越えることは出来ません。また、同じ動きが3回続くと、引き分けで終わりです。やってみてください。

2007年10月28日

大学だより

 大学は今、「大学祭」のシーズンです。
大阪教育大学に在籍する卒業生からのメッセージが届きました。

fig20071028.jpg こんにちは!46期生のA.H.です。
 現在大阪教育大学の4回生で、来年春から念願の小学校の先生になることが決まりました。今日はそんな私から後輩のみなさんに、大教大についてお知らせします。教育に興味がある方はもちろん、大学ってなに?と思う人も参考にしていただけたら幸いです。
 大阪教育大学は「大阪」と言う割に、キャンパスは奈良とのほぼ県境、緑豊かな柏原市に所在しています。学生はこの環境によくお似合いの、ほんわかした人が多いかな?教育大学というだけあって、教師を目指す人間が多いので、同じ夢を持った仲間との出会いが大学生活をとても豊かなものにしてくれるでしょう。
 また、
  1回生から観察実習
  2回生には介護等体験
  3回生で基本教育実習
  4回生では参与観察や研究のための実践
など、直接学校現場に行く機会も大変多く、充実しています。
 私の所属する学科は「小学校教員養成過程・総合認識系」といって、簡単にいうと「未来の学校を支える教師を育成する学科」といったところでしょうか? この「小総」の特徴は、学生が主体となって様々なプロジェクトを企画することです。
 私は1回生の頃から畑仕事で泥まみれになったり、それで育った野菜を教材に地域の子どもたちと触れ合うイベントをつくりあげたり、はたまた、表現豊かな子どもを育む授業作りのために、大阪府の研究校で度々授業をさせていただいたり…と、本当に様々な角度から「教育」について学ばせていただいてきました。
 これは一例で、他にも学科ごとに特色があるので、自分が何をしたいか考えて選択したらいいと思いますよ。学科によって受験科目なども様々です。人間性を問われる面接などを取り入れている学科も多いです。ちなみに私は国公立ではめずらしい推薦入試組です。(10分間の自己PR+10分間の面接)

 大教大に関わらず言えることは、大学の4年間は人生のターニングポイントであるということ。高校の時から「大学で何をしたいか、そのためにどこのどの学科に入りたいか」を明確にしていたら、ホントにすばらしい4年間になると思います!
あ、もちろん、恋やバイトやサークルも大切。その話はまた機会があればします。
長々と語ってしまってスミマセン。
とにかく大学の4年間は大きいです^^
進路について頭を抱えることも多いと思いますが、行き詰まったときは、じっくり自身と向き合うことも忘れないで下さいね。

さて、最後に大阪教育大学に興味をお持ちのみなさん、そしてこの記事を読んで興味を持たれたみなさんに大学祭のお知らせです。
11月の初めに、大教大でも学祭があります。素朴であったかな学祭です。
同時に受験生対象の説明会も行うようですので、ぜひ一度遊びに来て下さい。
実際にキャンパスに立つと、見えてくるものがあるかもしれませんよ。(学祭の詳細は大学HPをご覧ください)

寒い日が続きます。
あったかくして風邪などひかないようにしてくださいね。それでは…。

2007年10月26日

キャリア教育(最終)

 キャリア教育の取り組みを紹介してきましたが、現在、もっとも急ぐべきことは生徒のコミュニケーション能力の育成だと考えます。
「褻晴れ」のけじめという言葉がありますが、昨今「褻」と「晴れ」が混迷した世の中になってきました。「褻」の場面での若者たちのコミュニケーションは活発です。メールでは、今までにない表記法や絵文字が取り入れられ、「新しい文体の創造」と評価する評論家もいて、読み物としてはなかなか楽しいです。また、仲間内でのおしゃべりは、際限なく繰り広げられます。しかし、「晴れ」となると、書けない・話せない。家庭における「お友達」の親子関係を考えると、学校教育の中でのコミュニケーション能力の育成は急務だと思います。そして、それは「職業人インタビュー」などの企画物のみならず、各教科学習の中で意識されることで実を結ぶのだと思います。
 以前、卒業生が語ってくれました。彼女は、大学に指定校推薦で合格し、入学当初、自分は学力的に劣るのではないかと随分不安だったそうです。しかし、すぐにその不安は吹っ飛んだそうです。中高校での体験・・・・・教科での調べ学習・PCを使ったレポート作成・パワーポイントでの発表会・修学旅行など各種行事の企画運営・・・すべて大学での研究に役立ったとのことでした。
 教科・分掌にとらわれない全学的な取り組みがキャリア教育推進の鍵と言えるでしょう。

2007年10月25日

キャリア教育(3)

高校生には、進路を意識した取り組みを行っています。
高校1年生
 6月に実施する「卒業生に学ぶ」で、大学の3・4回生から大学生活についての話を聞きます。生徒たちは大学名は知っていても、高校までとはがらり変わる大学生活についてほとんど知りません。大学が「自ら主体的に学ぶ場であること」や、ゼミの話、サークル活動どとても興味深く聞いています。卒業生たちは、高校生のときにしっかり勉強するように力説してくれます。毎年、約15講座ほどなので、受講人数は20人弱です。希望の2講座に参加します。
7月に高校全体で、「1Day College」を実施しています。これは、25~30の大学からさまざまな学部・学科の教員の方々にお願いし、本校で模擬授業をしていただきます。東京・九州・四国からも特徴ある学部の先生にお越し頂いています。この企画をはじめて3年目になりますので、生徒たちは卒業までに6講座を受講できるわけです。
12月に「職業人に学ぶ」を実施しています。6月の「卒業生に学ぶ」と同じやり方で、職業人の方の話を聞きます。職種は生徒たちにあらかじめアンケートをとって決めますが、「弁護士・社会労務士・会計士・医師・薬剤師・看護師・デザイナー・新聞記者・アナウンサー・ホテルマン・IT企業など」社会の第1線で活躍されている方々です。そのお話は、生徒のみならず、私達教員にとってもたいへんプラスになることが多いです。
高校2・3年生
7月、上記の「1Day College」と前後して、校内で「21~25大学・大学校説明会」を実施します。各大学の入試担当の方によるガイダンスです。生徒は2つの大学の話を聞いて、あとは個別ブースで相談できるようにしています。ここで、志望を決めて、夏休み中の各大学のオープンキャンパスに行くように勧めています。

2007年10月23日

キャリア教育(2)

 本校での進路指導部を中心に実施している取り組みを紹介します。
 中学一年生
夏休みを利用して「生い立ちの記」を執筆します。
これは、保護者の協力を得て、誕生から中学1年生までの自分史作りです。「誕生」「幼児期」「幼稚園・保育所のころ」「小学校低学年「小学校中学年」「小学校高学年」「中学生になって」というような項目に分けて書きます。具体的には「名前の由来」「初めてしゃべった言葉」「弟や妹の誕生」「運動会などの行事」・・などです。全体で原稿用紙(400字詰め)15枚程度の作品が仕上がります。
今年の生徒たちの「あとがき」を読むと、「いろんな人に支えられて大きくなったと思った」「小さい頃の話を聞くのは意外と楽しかった」と、ふだん作文が大嫌いな生徒たちも、「あとがき」までたどりついた時には達成感で満足していたようです。
中学二年生
保護者に「職業インタビュー」をして、文章にまとめます。
最近は、保護者の氏名・年齢(生年月日)・職業(勤務先の名称)といった事がらをきっちりと記述できない生徒もけっこういます。
今日の中学1年生の教室でのことです。先日の加古川での小学生の痛ましい事件のことを話題にしましたら、まったく知らないという生徒が少なからずいました。昔に比べて、親も子も多忙ではあるでしょうが、家庭内での親子のコミュニケーションのなさを感じます。「生い立ちの記」もそうですが、まずは家庭でのコミュニケーションが大切だと思います。3月に「わたしのしごと館」に校外学習に行きます。
中学三年生
この「進路のへや」でも、何度か掲載しましたが、「職業人インタビュー」を実施します。今年は、29の職種の方々の所へ夏休みにインタビューに伺いました。単にインタビューだけでなく、「生徒自らがアポイントメントをとる」ことを重視しています。現在の生徒たちはコミュニケーション能力が育っていません。インタビューは3~5人のグループなので、心強いようですが、アポイントの電話は一人でかけなければならないので、班長はとても緊張するようです。生まれて初めて見ず知らずの大人の方に電話する体験です。
「インタビュー」では、単に職業のことでなく、「プロとしてのありよう」「人生について」教えていただくことが多く、生徒たちは感動して帰ってきます。事後アンケートの「インタビューはどうでしたか」の解答で「よかった」が毎年99%に達しています。
卒業時に、一年生で執筆した「生い立ちの記」に、中学生になってから記した文章を加え、パソコンで活字化して、「世界で一冊」の本作りをします。
 

2007年10月22日

キャリア教育(1)

 中学3年生の「職業人インタビュー」や高校1年生の「職業人に学ぶ」でお世話になっている宝塚・武庫川ロータリークラブの例会で、「キャリア教育--本校での取り組みについて」、お話しさせていただく機会がありました。以下、内容を一部掲載します。

キャリア教育とは・・
「キャリア教育」という言葉が、私たち教育関係者の間で流布するようになって久しいですが、一般の方々には耳慣れない言葉かもしれません。
 キャリア(職業・経歴)が、教育とどうつながりがあるのか。というところから、生徒に対し、「職業に関する知識や技能を身につけさせる」「適切な職業選択をさせる」教育だと思われているようです。
 文部科学省のリーフレットには、「児童・生徒一人一人の勤労観や職業観を育てる教育」とありますが、私は「生徒自身が、現在と未来をつないで生きる力をつける教育」「将来にわたって社会の中で生きていく力をつける教育」と考えています。
キャリア教育の背景 
「キャリア教育」の必要性がいわれるようなったのは、「フリーターの増加」、「モラトリアムの低年齢化・長期化」など、仕事に関する若者たちをとりまく問題が表面化してきた頃からです。なぜ、こうした問題が起こるのか。世の中で何が変わったのか。子どもが変わったとは考えにくいですから、変わったのは子どもたちが生きる環境の方だと思います。環境が変わったのに、教育内容が昔のままであるというこのギャップが、いろんな問題を引き起こしているのだと考えられます。
 たとえばIT化。携帯電話の普及は、言葉の単純化を生み、きちんとした文章表現をしなくてもよくなり、むしろ、文章表現にしない方がよいとして新しい言語形態を作り出しました。そういう子どもたちが、いざ、社会に出ていったとき、単純化された言語では当然通用しません。 日本語を習得済みの大人が日常的に携帯電話やパソコンを使うのとは意味が違います。日本語の能力と文章表現力とが不足した子どもたちは、社会で他者とのコミュニケーションがうまくとれないまま、過ごさねばなりません。
 つまり、ここ数年、大人と子どもが大きな環境変化による刺激を同じレベルで浴びているといえます。社会で必要とされるさまざまな能力を育てられる機会が得られないまま、大人と同じものに接しているというのが現状です。
 現在の教育の枠組の中で、生徒にコミュニケーション能力を含む社会性をもたせたいと考えたのが、私の「キャリア教育」の始点です。(明日に続く)

2007年10月20日

答案の品格

答案は,自分の考えを採点者に伝えるメッセージ。そこには,採点者への配慮がなければならない。驕らず,暴れず,大人しすぎず。はやりの言葉で言えば「答案の品格」,かな?

「漢字の試験は、トメハネまできっちりと書くこと」
入試で漢字の書き取りの問題が出たら,トメ・ハネまできっちりと書くこと。あってたらいいというものではない。採点者はトメ・ハネまできっちりと採点するそうだ(文章題等,他の問題については出題意図が違うから,そう神経質にならなくてもいい)。

「答案に余計なことは書くな」
 いくら,メッセージだといっても,イラストや顔文字で表現するのは御法度。いつものノリでコメントを書いたつもりだろうが,場所が場所だけに,ブチッてキレる採点官もいるのだそうだ。
 日本で3本の指に入る国立大学の先生は「ふざけている,よほどマイナス点をつけてやろうかと思った」と,後々まで憤慨されていた。神経がピリピリしている採点官に余裕はないのである。顔文字を見てニコッてする人はまず,いない。

「薄い字,濃い字はダメ」
 字の濃さは採点に全く関係ないかといえば,そうではない。微妙にあると考えた方がいい。
 薄い字は、とにかく読みづらい。さらに,小さい字だったらもう最悪である。何百枚(いや,千枚は超える場合も)もの答案を短期間に処理しなくてはならないのだから,判読するために時間を費やされると思うと,採点官の心情はマイナスに働く。もし,こういうくせのある人がいたら,今からでも遅くはない,鉛筆の芯の固さを変えよう。
では,濃い字を書けばよいかというと,そうでもないらしい。濃すぎて目がチカチカし,頭がぼーっとしてくるのだそうである。何でも度を超えると得するどころか,損する方が多い。
 マークシートでも事情は同じ。機械だjから疲れはしないが,読み取り不能だと言って,ペッて吐き出すんだそうだ。鉛筆の芯の固さに指定があるのは,そう言うミスを少なくするためなのである。よく売れているからHBにしたのではない。
 答案を「読んでもらう」という謙虚な気持ちを忘れず,標準的な濃さで書くということを心がけておきたい。

「丸文字,ミミズ,斜めに走る」
 最所はその形から正しい文字を推測し,一字一字,つい,声を上げて読んでしまう。それでやっと意味がつながる。そのとき,まるで象形文字を解読,大発見でもしたかのよう。当然,採点が厳しくなる。

「数学の答案」
fig20071020.jpg文章を図やグラフで表現するということは大切だ。何を問われているのか,問題の内容把握の手段としても大切だと思う。これができている答案とできていない答案では,明らかに出来具合に差がある。

記述式の問題では,やはり筋道立てて論理的に記述していくことが大切だ。計算の羅列のみでつなぎ言葉がひとつもない記述の答案がよくあり,やはりどこがどう繋がるのか,なにが理由でその結果どういう結論が導かれるのか,読み手にわかるように書いてほしい。

計算は一行一行ていねいに進めること。ケアレスミスが非常に多く,方針は正しいのに残念だという答案が毎年かなりあるそうだ。

2007年10月19日

入試の採点はどのように行われているか。

 記述問題の採点はどのように行われているのだろうか。もちろん,採点基準に則り,公正に行われているのだが,実際に担当する大学の先生はどうしているのだろう。

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fig20071019.jpg ともかく、今年も、「おお、こんな勘違いをする人がいるんだ、これは、この部分は理解しているわけだから、半分くらいの点はあげよう」とか「ううむ、ここまでわかっていないのは、受けた教育が悪いんだろうなあ。どこまで部分点をあげたものか・・」などと延々と議論しながら採点基準を決めて点をつけました。ともかく、まちがい方のパターンというのは、われわれ出題者(というか、プロの物理屋)の想像をまったく越えてバラエティーに富んでいます。個別のまちがえた答案に直に接してみて、どこでどのように混乱して、どうまちがえたかを考えて、汲み取るべきものを汲み取っていくのが、採点でしょう。

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ぼくらは、今でも、筆記試験をおこない、物理の教員が総出で採点する。一枚、一枚、答案を読み、計算間違いや勘違いがあれば、それも解読し、そこから先の(間違った結果にもとづく)計算も付き合ってフォローし、考え方が正しければ部分点を与える。新しい間違い方のパターンがみつかるたびに、採点グループ全員で相談してどれくらい評価するかを検討する。もちろん、判読不能に近い悪筆や汚い図なんかも、一生懸命に解読するのだ。

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入学試験では,正しい方向にはっきりと向いている答案にドンと点を与え,ちょっとその中で使う公式を覚えていたから書いておいた,というようなものには,たとえそれが確かにその問題の解答の中で利用するものであっても,それで1 点2 点を与えるというような採点の仕方はしないようにしています。

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採点者は,答案に書かれていない行間を自分の頭で補って,その補ったことに対して点を出す,というようなことは決してしません。入学試験の答案は,書かれていることだけが受験生の考えたことであって,書かれていないことは考えていないことである,という扱いがされるものです。必要なことはきちんと言葉で書き入れておくことが大切です。

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例年のことなんだけれど、文字はぐちゃぐちゃ、計算も完璧とは言えずしょうもないところでポカミスをする、しかし、妙に物理に対するセンスは鋭くて、ぼくらもびっくりするようなショートカットで本質をぴたりと見抜いているという、いわゆる「くせのある」答案をみると、「ああ、これって、きっと○○君みたいな奴だぞ」と今の学生さんや卒業生の顔が浮かぶ。こいつはきっと入学してくるから、大いに鍛えて励まして、このセンスを磨いてやろうなどと思って、みんなでそういうことを話したりもするのだけど、もちろん、入試の採点のときには名前はもちろん受験番号さえわからないシステムになっているから、そういう「追跡調査」はできないのだ。ちょっと残念ではある(もちろん、入試の公正はすべてに優先するから仕方ないのだけど)。

2007年10月18日

センター試験はどのようにして作られているか。

 毎年行われているセンター試験。こんな大きな試験を一体誰がどうやって作っているのだろう?もちろん,作成の方法については一切秘密なので,細かい部分まではわからないが,おおよそ次の通りのようだ。

1 問題作成
fig20071018.jpg まず,問題作成には,大学入試センターから任命され委員となった大学教授でつくる「教科科目第一委員会」があたる(構成人数は640名以内と定められている。任期は2年。試験教科に応じて24部会に別れている)。この人選については,大学入試センターが文科省から委嘱されており,イギリス人,アメリカ人を含めて全国国立大学から極秘に選ばれる。数学の作問委員会はメンバーが14人で毎年半数ずつが入れ替わる。
 作成は,該当卒業年度に関わる文部省指導要領(たとえば,20年度入試は17年度の高校指導要領)とそれに準拠した検定教科書の分析からはじめる。出題の難易度および範囲が高校教科書を超えないのはこのためである。したがって,結果的にセンター試験は平均点が60点前後(100点満点の場合)に納まるよう,各問の難易を調整している。この作業がかなり難しい。
 問題ができあがるのに数年かかる。このことは,たとえば英語では読解問題に時局的な話題が取り上げられない最大の理由になっている。
 
2 問題の点検
 つぎに,問題がほぼ絞りこまれた時点で、過去数年内に出題された大学入試問題や特定教科書に出題されていないかどうかチェックする。これには,100名を超える教科科目第一委員会経験者である国公私立大学等の教員及び学識経験者で組織された「教科科目第二委員会」があたる。出題教科・科目ごとに21の点検部会が置かれ,データベース化された過去の問題や教科書に掲載された文章の出典などと照合する。また,「点検協力者」として高校関係者を各科目に3~4人配置している。国語では,問題チェックは約15次にわたる段階が設けられているとのこと。 それでも,17年度の国語で,第一学習社の教科書に掲載されたものと同じものが出題されたことがある。作成以上に膨大な労力を必要とする作業だが,実際この時点で問題のさしかえを余儀なくされることはある。

3 印刷・保管
 どこで印刷されているのか,公表されていないが,問題の漏洩を考慮して,国立印刷局などで行われているのではないかと考えられる。印刷された試験問題は,これも公表されていないが,24時間警備されている保管倉庫に輸送され,実施数日前まで保管される。試験が間近となったある日に厳重警備のもと,全国735会場に送られ,当日まで厳重に保管される。
 なお,入試問題は,本試験用と追試験用,および問題の漏えいに備えた「緊急対応用試験問題」が準備されている。ちなみに,印刷代約17億円,保管・輸送代約1億円である。

2007年10月17日

変わるセンター試験

fig20071017_2.jpg 大学入試センターは,現行のセンター試験「地理歴史」と「公民」のそれぞれの試験枠を同一枠に統合し,“地歴2科目選択”を可能とする時間割の改編案をまとめ,本年度内に告示する予定のようだ。早ければ22 年度(現高1)からの実施も考えられる。
 今回の改編案によると,現行の「地歴」と「公民」各1コマの試験枠を統合し,「地歴・公民」1コマ(試験時間は例えば100 分~120 分)にまとめ,計9科目の中から2科目以内を選択(同一科目のA・B科目選択は不可),受験するとしている。
 また,理科についても現行の3コマを1コマ(6科目)に統合し,2科目以内を選択,受験させるとしている。

 今回の時間割の改編案は,大学入試に関する根本的な制度変更とは別に,現行の運用面での改善策として早期実現を目指しており,これまでの経緯から類推すると,”19 年度告知,22 年度実施”も十分あり得る。

 ただ,問題がないわけではない。たとえば,“2 科目受験者”と“1 科目受験者”をどう振り分けるのか。現行のように,混在方式だとすると,途中退席ができないため,“1 科目受験者”は結果的に2 科目受験者の2倍の試験時間となる。
 また,現行の「公民」は3 科目とも全て2 単位科目だが,「地歴」のうちB科目は4単位であり,これらを同等に扱うことになる。 

 現在,中教審で次期学習指導要領改訂に向けた審議がなされており,議論の展開に注目したい。

fig20071017_1.jpg

2007年10月16日

2008年度入試予測

fig2.jpg センター試験まで100日を切り,また,私大の公募制推薦入試の願書受付も始まるなど,20年度入試に向けて,受験者・大学双方ともに本格的な動きが目立ってきた。この辺りで,来年度入試を予測してみようと思う。


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予測その1 受験者数そのものが減少する。 
 これは予測とは言うよりは,予めわかっている事実だが,20年度入試受験生総数は,19年に比べ672,000人→629,000人と,約43,000人(約6%)減少する見込み。前年度よりも減少幅が大きく(約3%→約6%),その影響は偏差値50前後の中堅校で現れるのではないかと予想される。
 当然,大学もこのことは予めインプットされていることであり,推薦入試の受験者数によっては,かなりボーダーを下げてくるところも出てくると思われる。
 推薦入試の枠が小さい国公立大についても,受験者数の減少による影響は避けられないだろうが,むしろ,センター試験の平均点によって大きく変わる。

予測その2 センター試験の平均点が少し上がる? 
 20年度のセンター試験は,19年の平均点が大幅にダウンした反動で国語や数学Ⅱ・Bなどがやや易しくなり、平均点は少しアップするのではないか。となると,受験者は強気の動向となり,上位校に人気が集中する。その結果,国公立だけでなく,私大の中位校は影響を受け,倍率を下げるところが出るのではないか。

予測その3 国公立大難関校は,逆に「広き門」?
 後期日程の廃止に伴い,前期集中化が続く。当然,後期実施校は高倍率になる。
 センター試験の平均点がアップすると,「強気出願」になるが,志願者が分散し,倍率面では難関校もやや「広き門」となるかもしれない。
 私立大は19年の志願者増の反動に加え,国公立大志願者層が「強気出願」で私立大の併願を減らすことも考えられ,3~4%程度の志願者減が予想される。ただし,難関校は逆に併願を増やしてくるだろう。

予測その4 揺り戻しのところは大きく減少
 19年度志願者を集めたところは,たいてい,揺り戻しの影響を受けて倍率を下げる。これに,受験者数の減少,およびセンター試験の平均点が上がった影響を受けて,大きく落ち込むところが出てくる可能性がある。

2007年10月15日

2008年度センター試験 志願者数

2008年度センター試験の出願受付が先週金曜日(10月12日)に締め切られた。大学入試センターから発表された,同日17時現在の出願状況は以下のとおりである。
●出 願 総 数 518,565人(528,898人;-10,333人,2.0%減)
<内 訳>
○高校等卒業見込者 418,423人(424,579人;-6,156人,1.4%減)
○高校卒業者等    100,142人(104,319人;-4,177人,4.0%減)
(注) ( )内は,前年締切日(18年10月13日17時現在)の志願者数,及び増減数と割合を示す。

 なお,12日消印まで出願を受け付け,重複出願等の確認後,確定志願者数が発表される予定であるが,最終的な志願者数は,今後消印有効分の2万人程度が加わり,54万人前後になるとみられる。これは2年ぶりの減少で,昨年度の553,352人の2~3%減となる。

 18歳人口・高卒者数が平成11年以来9年ぶりに5%近い大幅な減少が見込まれる中で,1.4%減に留まっているのは,主に現役の大学進学率がアップしていることと,私立大のセンター試験参加増(17大学44学部増の467大学1,287学部)と短大の参加増(8短大増の156短大)によるものと思われる。

 一方,浪人等は4,177人(4.0%)減で,16年から5年連続の減少である。これは,浪人生数そのものの減少によるものと思われる。”広き門”であるが故に,ますます浪人しなくてすむ状況が生み出されている。

下は,センター試験出願最終日出願数(水色)と確定志願者数(橙色)の推移(横軸:年度 縦軸:人数)
fig20071015.jpg

2007年10月13日

成功者列伝 4  撞球狂的英語達人

 Mは元よその県の定時制高校の教諭をしていた。正確には、勤務校が定時制ももっていたので、年によっては定時制を教えていたということである。彼に会ったのは彼が27歳くらいの時、ともに大学院で英語教育学をやっていた。
 入学後すぐ指導教官を決めるために開かれた、「研究テーマを述べる会」で彼は中心的な教授からテーマについて厳しく批判された。
「えらいきついなあ」
「あすこまで言うことないで」
 教室の後ろに座っていた我々は恐怖を感じながら囁きあった。そしてその会が終わると、肩を落としたMを励ますのだった。
 Mは数日後、新しい研究テーマを見つけて勉強をはじめた。しかし、我々同期生には前述した会でMと教授たちとの間で何が議論されていたのか、目の前で起こったことながら、はっきりとはわからないのだった。
 Mはビリヤードに凝っていて、空き時間ができるとビリヤードに行こうと仲間を捜す。誰もが相手にならないでいると、近くの居酒屋の親父を誘い出す。そして夜中まででもビリヤードをするのである。
 一度などは千里で行われたビリヤードの全国大会に連れて行かれた。初めのうちこそ私もその独特の雰囲気を楽しみ、鮮やかな技の数々に目を奪われたが、やがて疲れてくる。Mはというと、見ている間に自分が観察すべきは誰かを決めたようで、その選手を徹底的に見続け、帰ろうとはしない。付き合いきれないので私は先に帰った。翌日Mは目を輝かせて、私の帰ったあとの戦いがいかにすばらしかったかを語るのであった。
 さて、授業がすすむとともに我々は思い知らされることになったのだが、Mの英語力は私を含めた他の院生よりも頭一つ抜けていたのである。外大の英語学科の卒業であったが、複雑な論文を緻密に読む力をいったいどこで身につけたのか、また卒業後あまり優秀でもない生徒を教えながら秀でた語彙力をどうやって維持してきたのか、不思議と言えば不思議であった。そして教授陣は入学試験の結果からそのことを十分に認識しており、それが「研究テーマを語る会」の厳しい指導につながったのであった。
 いろいろ話をしてみると、Mは英語の論文を読むのが楽しいという。私の場合、勉強が好きというよりも恥をかきたくないという思いが強く、予習など恥をかかない程度に仕上がってしまうと満足してしまうのだが、Mの場合は学問をすることはビリヤードをするのと似た楽しさらしい。私のように県から派遣されているという面子のため頑張るのではなく、学問すること自体が楽しいらしいのだ。ここでも私は自分の学問にたいする適性の無さを思い知らされる。同時にこんなヤツに勝てるわけないと思ってしまう。
 2年後、Mの修士論文は高く評価され、アメリカの学術雑誌にまで掲載された。世間はいったん高校に戻ったMを放っておきはしなかった。公立大学の講師から国立大学の助教授になり、現在もエネルギッシュな研究活動を続けている。(田畑保行)

2007年10月12日

成功者列伝 3 不死身の銀行マン

 Uは大学の同期生でESSの仲間。学部は私と違って法学部だった。特に親しくなったのはある宗教団体の主催する英語キャンプ。3日間すべて英語で生活すると聞いて、Uに誘われて同級生4人と行ってみた。大学1年の秋である。3日間のキャンプのあと、なんと彼は神を信じることになってしまった。懐疑心の強い私は、「英語の練習にきました」という姿勢を崩さなかったが、純粋でのめり込むタイプの彼はそこで聖書を読むことを決心した。
 そのキャンプの後、我々はバスで伊豆を周遊したが、その間中、彼はキャンプで直された英語の発音を何度も確認する。朝と夜に英文の聖書を開く。英語のことを忘れて遊びモードに入っている私とは大違いだった。
 大学在学中から彼の社会での成功を疑うものはなかった。性格が温厚で安定しているし、集中力があり、恒常的に努力を続けることができる。私は舌を巻いた。一瞬の集中力では私もひけをとらないと思ったが、それを持続することではとても勝てない。気力の差か、体力差か、あるいはその両方か?
 Uは卒業してF銀行に就職した。そこでも早くから頭角をあらわし、選抜されてアメリカの大学院でBusiness Administration を学ぶことになる。既に結婚していたが、1年目は新妻を日本に残して、一人渡米。2年目にやっと奥さんが合流して二人暮らしになる。かなりの覚悟をしていったらしいが、それでも苦しい生活だったという。大学院で毎週だされる課題が半端じゃない。やってもやっても課題は山積みになった。
 先日、Uと奥さんに会って昔話をしたら、やはりこの大学院の2年間が最も苦しい時で、何度も辞めたいと思ったそうだ。2年目に行った奥さんは、彼の勉強ぶりを見て体をこわさないか心配で仕方がなかったという。優秀なヤツは優秀なだけ大きな試練に見舞われるということか。
 Uはエリート社員として、その後、ロンドン、ニューヨークの支店に勤務。4年ほど前に退職して、系列の会社で管理職をしている。現在はシンガポールにある日系企業の社長。相変わらずよく働いているらしい。「仕事中毒じゃないかしら」と奥さんは心配するほどである。
 子供は3人。音楽家あり、商社マンあり。娘に子供ができ、その娘婿がたまたまシンガポールに派遣されているので、娘夫婦と同居している。
 「シンガポールは天国やで。ニューヨークよりは治安がはるかにいい。働きやすい」
 歳とともに髪の毛の大半を失っても、ますます働く男である。(田畑保行)


2007年10月09日

成功者列伝 2  踊る大学教授

 私のよく知っている人で、その道の成功者を紹介するこのシリーズ。今日はその2回目。
 Rさんは従姉が宝塚歌劇に夢中で、そのおつきあいで宝塚についていくことがあった。しかしあまりその舞台には魅力を感じず、高校1年の時、「これがもう最後ね」と言ってつきあいで観た「カンカン」で人生が変わってしまったという。
 中学・高校とバレーボールに汗を流していた彼女は、なんとか踊る方のバレエを習いたい、と機をうかがう。母親は理解があったが、父親は「あんなとこは不良の行くところ」とハナからとりあってくれない。とうとう仕方なく、父親にはバレーボールと偽ってバレエの練習に通いだしたのが高校3年の春だった。常識ではこんなに遅くバレエを始めて1年で通るはずはないのだが、人生何が起こるかわからない。高3の最後に1回だけ受けた試験に通り、宝塚音楽学校の生徒になる。父親との交渉をどうしたのか、知りたいところである。その後、彼女はひたすらダンスの道を究め、宝塚歌劇団でダンサーとして一世を風靡することになる。
 この人、せっかく台詞をあてがわれても、「いりません」と平気で断る。台詞はきらいなのだそうだ。ところが踊ることにかけては、誰にも負けたくないという根性の持ち主。かつてトップスターをリフトしていて一瞬バランスが崩れ、無理な姿勢で相手を支えた。その結果、脚の筋と血管が切れ内出血。片足が紫色に腫れ上がったが、それでも踊り続けたという。
 世間に広く注目されたのは、長谷川一夫演出の「ベルサイユのばら」。そこで彼女は宝塚史上はじめて
臍を出して踊ることになる。これは全国的な話題になり、毎日グラフにも写真が載った。私も本人から写真を見せてもらったが、美しく、かつ妖しい。鍛えられた肉体と精神で踊る姿は人間の極限の美を表していた。
 その後宝塚を退団し、小さなレッスン室を開いて、指導者の道を歩む。大きくなったり小さくなったり、教室の場所も移動したりしながら、指導を続けた。全く素人の高校生にも県から頼まれて振り付けをした。
 ある日、芸大から声がかかり、ダンスの講師になる。そしてそこから力を認められて助教授、教授と上り詰めた。
 「これしかできません」と謙虚に話すが、振り付けの幅は広がる一方。もう還暦をすぎておられるのに倒れるのではないかと周りを心配させるほどエネルギッシュに活躍中である。好きこそものの上手なれ、ということでしょうか。(田畑保行)

2007年10月06日

面倒見のよい大学?!

雲雀丘学園のよさは面倒見のよさだと行っていただくことも多くあります。卒業してから、それを実感する人も多く、「大学ってほったらかしだ~!」(当たり前なのですが)と嘆きにくる卒業生も。
そこで、今日は河合塾が高校の進路指導教員を対象に実施した07年度のアンケートから「面倒見のよいと感じる大学」ランキング。質問は「偏差値はあまり意識しないが学生への面倒見がよいと感じる大学」で回答数586だそうです。
 ◆学生への面倒見がよい大学
(1)金沢工業大(石川)     93
(2)名古屋商科大(愛知)    32
(3)武蔵大(東京)        15
(4)聖学院大(埼玉)      11
(5)大同工業大(愛知)     10
(6)高知工科大(高知)     9
(7)立命館アジア太平洋大(大分) 8
(8)大阪女学院大(大阪)       7
(8)近畿大(大阪)           7
(10)千歳科学技術大(北海道)   6
(10)津田塾大(東京)         6
(10)産業能率大(神奈川)      6
(10)中村学園大(福岡)       6
 上位の大学は、地元だけでなく全国の先生から支持を集めたそうです。  
 1位の金沢工業大は、1年時に「修学基礎」を必修にしています。また、図書館の使い方や各研究室の活動を教える一方で、欠席・遅刻の状況からアルバイトの日程まで週1回パソコンに入力させ、自分の生活をチェックさせるそうです。
 これによって学生たちは、自ら学ぶ姿勢を自然に身につけるということです。教員に自由に質問できる工学基礎教育センターの利用は、年間1万5000件近くにもなるとか。
 2位の名古屋商科大の授業は完全座席指定。出欠を厳重に管理し、欠席4回で試験を受けられない!全員に配るパソコンを使って就職指導も徹底し、今春の就職率は98.5%。
 ただしこれは大学選びの一つの指針にすぎません。
「面倒見のよさ」を求めない人もいるだろうし、どんな「面倒見のよさ」を求めるかもその人次第。ランキングは一つのデータとして、自分の目で最終的には大学選びをしてくださいね。

2007年10月05日

卒業生、現場緊急レポート!~阪大になった大阪外国語大学は今!!

ご存じのように10月1日に大阪大(大阪府吹田市)と大阪外国語大(同府箕面市)が統合されました。統合により大阪外大のキャンパスは阪大の「外国語学部」となり、阪大は学生数約2万5000人で、学部の定員レベルでは国立大で最大だそうです。統合にともない、阪大は外国語学部外国語学科と法学部国際公共政策学科、大学院に文化動態論、グローバル人間学、言語社会の3つの専攻が新設されます。

そこで、統合直後の旧大阪外国語大学の様子はどうなっているのか?この春の卒業生で大阪外国語大学に入学した先輩にその様子をレポートしてもらいました!

統合後、何が一番大変かというと学生証の交換でした。外大の学生証を渡せば阪大の学生証が交付されるのですが外大の学生証は、背景に25の言語で「大阪外国語大学」と書いてあり、とてもおしゃれで、外大生にとっては誇れるアイテムだったのです。そこから自分の専攻語を探すのがなんともいえない楽しさでした。
「(外大の学生証を)渡さんといけんらしい!(←広島出身の子)」
「はぁーー?!そんなん【無くしました】って言い張るし!(←栃木出身の子なので標準語のイントネーション)」
外大生の9割以上が「学生証絶対渡さない宣言」をしていたようですがいざ交付!となると事務の流れを止めてはいけないという気持ちが皆の中に生まれたのでしょうか、あっけなく外大の学生証を渡してしまった人がかなりいたそうです。
しかし、「記念にほしい!」と言い張ったツワモノもいたようで、記念にほしい人はパンチで穴を開けたあとで返却する、というお達しが1日午後に出ました。私はそのお達し後に交換に行ったので一度も外大の学生証を奪われることなくすみましたが、律儀に1日の午前中に交換に行った友達は教務課に大激怒!
「返して!」と学生が押し寄せたらしく、教務課の掲示板には「外大の学生証の返却を希望する人は申し出てください。来週、返却します。」という張り紙がはられました。
ちなみに新しい阪大の学生証は本当にシンプルで皆ぶーたら言っています。
自動で発行される在学証明書も英文のものは鷲田清一総長(注1)のローマ字直筆サインが入っているのですが、「なんやこのミミズののたうちまわったような字は!」とあの『モードの迷宮』の鷲田総長のサインにまでイチャモンをつける外大生もいます(^^;

阪急バスの行き先も、停留所も「阪大外国語学部前」となって、バス通学の外大生は切ない思いをしながら通学しています。ただし、バスの運転手さんは無線連絡中、まだまだ「外大~外大行き込んでます~」とか車内アナウンスで「まもなくーおおさか・がいd・・・こくご学部前です。」とかいってくれます。

統大学名の言い方については、友達の意見を聞いてもかなり差があります。
「いやいや、一生外大生やねんから、大阪外国語大学です!って言い張るし。」派がなかなか多いです(笑)
こんなことを書くと、外大生は阪大を毛嫌いしているように絶対思われますが、「統合」の話題になったとたん、こんなことになるだけで普段はいつも通り、重たい辞書を持ちながら専攻語のテストに泣きながら、キャンパスライフをエンジョイしています。

統合直前の9月30日は、本当に切なかったです。
「阪大生になった?!ラッキーーー♪」なんていう気持ちは、本当に、本当に起こりませんでした。4月の初め、オリエンテーションが終わった帰り道、学生証を見つめながら「本当に外大に入れたんや...」と感慨深かったことを思い出します。
半年でここまで愛着を抱かせる外大、自分でもすごいと思います。

レポートをお願いした先輩は本当に外大が気に入っていて、念願かなって入学。それだけに外大に誇りを持てているようです。単科大学だったからこそ結束感もあったと聞きます。いずれにせよ、これだけ自分の大学を愛せているっていいですよね。
ちなみに蛇足ですが、新生阪大の総長に就任されて学生証にもサインが入っているという(注1)鷲田清和さんは入試現代文界では超有名人ですね。鷲田氏の評論はたびたび入試問題に使われています。高1のみなさんには最近教科書で学習し、期末考査の範囲にも入っていた「〈顔〉という現象」の筆者として身近ですよね!鷲田清一のサイン入り学生証もかっこいいと思うのですが…。

ということで、レポートに快く協力してくれた49期生のNさん!どうもありがとう!多謝!


2007年10月04日

今日から後期!いよいよ受験シーズン到来!

雲雀丘学園中高等学校では今日から後期スタートです。
10月1日からはセンター試験願書の受付が開始され、今月後半からは公募制推薦入試が始まります。関西圏の中堅私大はほとんど条件なしで公募推薦を受験できる状況になっていますので、公募推薦入試から私大入試のスタートとも言えます。いよいよ受験シーズン到来ですね。
なお、現役生のセンター試験の出願は高校で一括して行いますので、雲雀丘学園の高3生はもう出願をすませています。
ということは高2のみなさん!1年後には早くもセンター試験の出願をすませているわけです。過去の統計からも高2の秋から受験勉強を意識し始めた人は志望校に入学できる割合が高いことが判明しています。下級生も、ぜひ志望校を心に持って(=目標を持って)充実の後期を過ごしてください!
志望校とまだ出会っていない人、このブログを読んで「えっ?公募推薦って指定校と違うの?」という疑問を持った人、高3生だけに進路指導室を独占させるのはもったいない!下級生も進路指導室に足を運んでくださいね。昼休みと放課後(水曜除く)に開室しています!日替わりで進路指導の先生が詰めています。どの先生に会えるかもお楽しみ?!

2007年10月01日

大学改革

 大学・短大側としては質の良い学生が欲しいと思い、学生側はできるだけ質の良い大学・短大に入りたいと思います。少子化に伴い、大学・短大側が危機感をもつのは当然で、今までどおりのことをやっていれば、同年齢の人口が減った分だけ質が低下することになるからです。そこで、学部の新設や改組ということになります。
 一方、受験生側としては、むしろ好都合で、同年齢人口が減れば、その分だけ競争相手が減ることになり、従来なら望むべくもない「高嶺の花」の大学が入学可能になってきます。これが前項で述べた二極化の一要因でもあります。従来なら、もう少し偏差値の低い大学にを受験するはずの学生が難関校に殺到した結果、競争率は加熱することになります。今年度の入試では「全入時代の到来」とはやされ、私立大学はかなり易化するものと予想されたものが、いざ、蓋を開けてみると、4%も増加し、特に関西圏では8%と全国でも最も増加率が高く、中でも都会に集中する私立総合大学で、いわゆる関関同立、産近甲龍と呼ばれる有名校・伝統校は依然として人気があります。特に今春は関西大学が政策創造学部の新設、工学部の改組を、更に、新方式の入試を行ったためか人気が集中しました。
 このように、積極的に学部の新設、改組を行っている大学は、定員割れに苦慮している大学だけではなく、難関私大も例外ではありません。現に、来年度には同志社大学が生命医科学部、スポーツ健康科学部の新設とともに理工学部の改組を予定しており、立命館大学はびわこ・くさつキャンパスに薬学部を新設予定、関西学院大学でも人間福祉学部の新設を予定しており、09年度には聖和大学と合併の予定です。甲南大学は知能情報学部を新設、京都産業大学はコンピュータ理工学部と外国語学部に国際関係学科を、近畿大学は文芸学部に英語多文化コミュニケーション学科と文芸学部文学科に2つのコース新設予定です。まさに、大学改革花盛りといった感じですが、こういう新設学部・改組の加熱は難関大の危機感の反映で、その改革の意図は成功していると言えます。危機感といえば、慶応大学と共立薬科大学が合併が話題を呼んでいますが、これも両大学当局の危機感の強さを物語るものでしょう。関西圏では大阪大学と大阪外国語大学の合併という大型の大学改革があります。二極化の要因を先ほど受験生側の心理から考えましたが、大学側のこういう姿勢が受験生を呼び込み、二極化を加速させる要因になっています。
 今年4月末までに届け出のあった学部増設は28大学40学部、学科増設が30大学32学部41学科となっています。5月以降の届出分は、最終的には11月末に正式に認可されますが、その数は学部増設が14大学14学部、学科増設が13大学14学部14学科で、これに加えて大学そのものの新設もあり、私立大学全体の定員は3千人増加ということになります。新年度の増設分だけでこの数ですから、総体的にみて、少子化の最中にこんなに数を増やしてどうなるのだろうと、余所事ながら心配になります。25日の項で「あだ花の狂い咲きの奇観を呈している」などと皮肉めいた表現をしましたが、受験生にとっては好都合なことに違いありません。新設学部・新設学科の中には名称だけでは見当のつかないものがあるので、よく確かめる必要があります。その内容は大学の発行している案内などで検討してください。
 大学改革の中で、組織改革以外に大学は様々な入試改革を行っています。キャンパス移転もその一つです。入試方式は年々複雑さを増しています。試験日自由選択制、地方試験、全学統一試験、大学入試センター利用入試など様々でこれも受験生にとって好都合です。受験の際はいろいろ工夫を凝らして併願作戦を立ててください。
 ともあれ、従来の難関校が易化していると単純に考えるのは禁物ですが、新設学部を考慮に加えれば、全体としては定員増加になるわけで、以前より少しは入り易くなっているのは事実です。果敢に挑戦してみてください。併願作戦,、「滑り止め」作戦など工夫をして、なにしろ頑張ってください。

文責 山本正彦