2006年10月31日

節をつくる

 本校には、数多くの大学から指定校推薦枠をいただいているため、これを利用して受験する生徒も相当数います。
 これらの生徒に対しては、必ず校長が推薦書や入学志願書に目を通し、全員と面接を実施しています。その理由をあげると、1つには大学に対して雲雀丘学園として責任を持って生徒を推薦すること。2つには生徒に対して将来の進路等も含めて動機づけを行うということです。とりわけ個々の生徒についてはこれから高校卒業までの時間の過ごし方は極めて大切です。このため高校時代にしかできないことをしっかりとやるということを自覚し積極的に行動していくための色々なアドバイスを行っています。
 この入試においては学科試験がなく、願書を提出すればほぼ全員が合格することになるため、ややもすると受験が終了した時点で気がゆるみ、勉強する気持ちが薄れてしまうケースも見受けられます。これでは、センター入試を目指して努力をし続けている人とは、大学入学時点で大きな学力差がつくことになります。
 大学への進学は、あくまで手段であって最終目的ではありません。そして、大学受験というのは人生にとって“大きな節づくり”の機会です。節のないまま高校時代を終えるのではなく、最後のしめくくりとして、是非自ら目標を設定し、充実した日々を送って欲しいものです。

2006年10月29日

日本人の名著

 読書週間にあたって書斎や倉庫がわりになっているガレージを整理し、書物の整理をしました。おかげで読み直したい本や買っただけでほとんど目を通していない本をたくさん探し出すことができました。
 その中で、『日本人の名著を読む』という一冊の著書を見つけました。この中にはこれだけは知っておきたい日本人の名著23人23冊が紹介されています。
確かに、戦後の日本は献身的な努力と勤勉によって世界第二のGDPを有する経済大国へと発展させました。しかし、物質的には豊かになったものの失ってきたものも数多くあります。戦前と比較して、今の日本人は何をなくし何を忘れてきたのか、それはかつての日本人が持っていた「伝統精神の喪失」です。人が人として健全に生きていくための「志」「気概」「誇り」「道徳」といった根っこの部分が失われてきています。言い換えると、自分を磨くための教育や躾が家庭や学校、社会からも消えてしまったのが原因ではないかと思います。日本がこれから繁栄していくためには、日本人一人ひとりがしっかりとした人間力を身につけなければなりません。
 この著者である岬 龍一郎氏は〝今、われわれが日本人とは何か、日本の精神とは何かを知りたければ、わが国の歴史を学び、日本人ならびに日本人の生き方をつくってきた先賢・先学の「名著」を読むことである〟と言っておられます。
 私もまだ読んでいないものが数多くありますので、これから時間を見つけ出してこれらの名著と接していきたいと思っています。
 少し難しいものも含まれていますが、この23冊を紹介します。
1. 吉田兼好 『徒然草』        2. 宮本武蔵 『五輪書』
3. 中江藤樹 『翁問答』     4. 山鹿素行 『山鹿語類』
5. 伊藤仁斎 『童子問』       6. 貝原益軒 『養生訓』
7. 松尾芭蕉 『奥のほそ道』     8 .新井白石 『折たく柴の記』
9. 山本常朝 『葉隠(はがくれ)』   10. 石田梅岩 『都鄙(とひ)問答』
11. 恩田木工 『日暮(ひぐらし)硯』 12. 杉田玄白 『蘭学事始』
13. 佐藤一斎 『言志四録』       14. 頼 山陽 『日本外史』
15. 二宮尊徳 『二宮翁夜話』     16. 佐久間象山『省けん録』
17. 橘 曙覧(あけみ)『独楽吟』   18. 勝海舟 『氷川清話』
19. 西郷隆盛 『南洲翁遺訓』 20. 吉田松陰 『講孟(もう)余話』
21. 福沢諭吉 『学問のすすめ』   22. 内村鑑三 『代表的日本人』
23. 新渡戸稲造『武士道』

2006年10月28日

読書の薦め

 10月27日から11月9日までの2週間にわたる読書週間が始まりました。
 今年はこの週間が制定されてから第60回という記念すべき節目にあたっており、標語は『しおりいらずの一気読み』です。このルーツをたどると戦前にも図書週間や図書館週間という名称のものがあったようですが、戦争により中止されていました。その後昭和22年、戦火の傷跡がいたるところに残る中で《読書の力によって平和な文化国家をつくろう》という決意のもとに出版社、書店、公共図書館、新聞・放送等のマスコミが中心となって第1回の読書週間が開催されました。その時の反響は素晴らしいものがあり、翌年からは文化の日を中心とした2週間と定められ全国的に広がり今日に至っています。
 私は毎日片道1時間以上の電車通勤をしていますが、車内の光景は10年前とは隔世の感があります。朝は若干新聞を読んでいる人の姿も見られますが、ほとんどの人が目を閉じて眠っていますし、夜は携帯を手にしてメールをしている人が目に付きます。残念なことに本を読んでいる人の姿は極端に少なくなってきました。いつの時代にも「子どもが本を読まなくなった」と言われ続けてきましたが、昨今の状況を見るとこれは子どもだけのことではないように感じます。
 本校にも図書館があり常に多くの生徒が利用できるようになっています。先日、学年毎の本の貸し出し数を見たところ一番多いのが中学一年生、二番目が高校三年生です。中だるみの現象と共に貸し出しの総数は少なくあまり本を読んでいるようには見えません。近年、受験や映像・電子メディア等の普及に伴い読書の時間が狭められてきていますが、何といっても活字文化はメディアの基礎です。今後子ども達にも読書の楽しさを感じさせることが必要であると感じました。
 また、読書週間の初日である10月27日は『文字活字文化の日』にも制定されています。半世紀以上かけて継続してきている読書週間にあたって、今一度本とのふれあいを見直し〝世界有数の本を読む国民〟と言われている日本の伝統を大切に守っていきたいものです。

2006年10月27日

日本のエネルギー事情

 10月26日(木)、大学受験にのぞむ生徒に「将来どのような仕事をしたいのか」という質問をしたところ「是非エネルギー関係の仕事をしたい」という答えが返ってきました。現在の日本におけるエネルギー事情を考えると、子ども達がこのような夢を持って勉学に励んでくれることは大変頼もしいことです。
 たまたまですが、今日は日本のエネルギー事情を大きく変えることになった日なのです。つまり1963年茨城県の東海村の日本原子力研究所日本で初めて原子力発電が行なわれた日にあたります。これを記念して翌1964年(昭和38年)、当時の科学技術庁(現在の文部科学省)が『原子力の日』と定めました。現在日本では各地域の電力会社原子力による発電が主流になってきていますが、昨今放射線漏れ等の事故が相次ぎ社会問題として取り上げられるケースも散見されます。しかし現在は原子力に変わる代替エネルギーの確保はほとんどできていない状況です。
 日本のエネルギーの自給率は何と17%しかありませんが、この中で原子力の占める割合は13%であり、これを除くとわずか水力発電の4%ということになります。厳密に言えば、現在日本は石油や天然ガスをはじめ大部分を海外に依存しており、これらが入ってこなくなれば日本は成り立たない状況なのです。従ってわが国にとって新しい代替エネルギーの確保は今後の最大の課題であると言えます。昨今、これらの代替エネルギーの研究が盛んに行なわれるようになってきました。太陽光、バイオマス、風力、潮力の利用、オイル・サウンド、石炭の液化、エタノールの促進等さまざまな芽が出始めていますが、まだまだエネルギーの主流になるには大きなハードルがあります。
 子ども達がこれからしっかりと勉強してこれらの芽を大きく育てていって欲しいと思っています。

2006年10月26日

後期生徒会役員認証式

%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E5%BC%8F%20003[1].jpg
 10月25日(水)、後期生徒会役員の認証式を行ないました。本校においては前期と後期の年二回、全校生徒による選挙による生徒会役員の選出を行なっています。最初に私から会長、副会長(2名)、書記(2名)、会計(2名)と自治、風紀、美化、厚生、体育、文化、図書委員の代表である委員長13名にそれぞれ認証書を手交しました。その後、前生徒会長から挨拶があり、続いて役員を代表して新会長から「後期は行事が少ないが、球技大会等もあり生徒会活動を盛り上げていきたいので宜しくお願いします。」という所信表明がありました。私からも「役員任せにするのではなく、すべての生徒一人ひとりが自ら雲雀丘学園を創りあげていくという気持で取り組んで欲しい。」旨の話をしました。
 今回は本日認証書を手交した人以外にも自治から文化、図書にいたるまでの委員長7名、書記7名、更にクラス毎に12名のホームルーム委員が選出されています。
これらの人を合計すると総数は約400名、実に全校生徒の三分の一を占めます。言い換えると約三人に一人が何らかの形で生徒会の活動に関わっていくことになります。
多くの方から〝昨今の若者は言われたことはやるが自主的に行動することは少なくなってきた〟ということをお聞きしますが、現在中学や高校に在籍している生徒達も10年以内にはほとんど全員が社会人になることでしょう。実社会において最も求められているのは《課題を発見し解決していく力》です。学校における生徒会活動はこのような力を育てる絶好の場であると思います。一人ひとりが自覚を持って積極的に生徒会活動に取り組み、自らの成長をはかってくれることを期待しています。

2006年10月25日

日本を知る

 今後ますますグローバル化の進展が予想され、世界のさまざまな国の人々との交流が活発に行なわれるようになってきます。その時に大切なのは日本のことをしっかりと理解し説明できるということです。我々はややもすると現在起こっている政治や経済面だけに目を奪われがちですが、それぞれの歴史や伝統、文化、宗教、著名な人物等をしっかりと把握しておかなければなりません。
かつてアメリカのジョン・エフ・ケネディー大統領が日本で尊敬する人物として「上杉鷹山」* をあげた時に、その場に居合わせたほとんどの日本人記者がこの名前を知らず非常に恥ずかしい思いをしたということが話題になりました。
私も以前、外国の方から日本の古都である奈良や京都のことを細部にわたって質問されて十分な説明ができず冷や汗をかいたことがあります。
国際社会においてはお互いに相手の立場に立って物事を考え行動するという『共生』の思想が不可欠ですが、このためには日本のことを知っていることが前提です。しかし、残念ながら今大人達が子ども達に日本の歴史や伝統、文化といったものを伝えきれているかどうかは疑問です。私も最近になってまだまだ知らないことがあまりにも多いと感じています。これから自分自身も勉強しながら機会ある毎にこういったことを生徒達に話していきたいと思っています。

 *上杉鷹山  江戸時代、当時では稀な民主主義的な政治哲学で現場重視の姿勢を貫き衆知を集めて窮乏の極みに陥った米沢藩を見事に復活させた人物

2006年10月23日

推薦入試受験者への指導

10月中旬より、大学の推薦入試を受験する生徒たちに対し、校長として個別の面談指導を行なっています。お蔭様で本校は多くの大学から学年の在籍者を上回る指定校の推薦枠をいただいていますが、受験者の選定にあたっては安易に本人の希望を優先するのではなく、本人の能力・適性を勘案すると共に将来の進路に対する意思確認を行なった上で決定しています。生徒達は授業があるため、どうしても面談の時間は昼休みや放課後になりがちですが、本日も4人の生徒とお会いしました。この面談を通じて私は三つのことを話しています。
一つは雲雀丘学園高等学校の生徒として、学園を代表しているという気持で受験にのぞんで欲しい。さすがは雲雀丘の生徒であると言われるよう服装、言葉づかい等身だしなみには特に留意すること。
二つは将来どのような仕事に就きたいのかという明確な目標を持つようにして欲しい。目標を持つことにより勉強に対する意欲が高まってくるのは間違いないということ。
三つは大学への進路が決まったからといって安心するのではなく残された高校生活を充実したものにすること。
私の好きな言葉に『萬年初歩 今日出発』がありますが、大学受験が終着点であるということではなく、常に新たな気持で取り組んで欲しいと願っています。

 今日は「二十四節気」では霜降(そうこう)にあたります。半月毎の季節変動に対応して定められた個々の名前はその季節の特徴を言い当てるものが多数ありますが、霜降とは霜が降りると言う意味です。すっかり秋も深まり、鮮やかな紅葉が見られる素晴らしい季節を味わいたいものです。

2006年10月22日

入社後の離職

厚生労働省が発表した2005年春に大学を卒業し就職した人の退職率については少なからず衝撃を受けた人が多かったのではないかと思います。その率は何と15%、約6人に1人が入社後わずか1年で退職しているのです。また、今年の就職内定者に対する企業の説明会に無断で欠席する学生も数多く見られ、無責任な行動や就職への関心の低さが指摘されています。
私は社会の動きを把握するため、時間を見つけてできるだけ企業の方との情報交換をするようにしていますが、「最近の若者は少し気に入らないことがあるとすぐに退職してしまう。我慢することができなくなってきた。」と嘆いておられます。また、入社後3年で4人に1人が退職するという別のデータもありますし、潜在的な転職希望者を加えるといかに現在の自分の仕事に対してやりがいを感じていない人が多いかがわかります。どのような仕事にも困難や苦労はつきものですが、これらを避けるのではなく克服することにより次第に興味が湧いてくるものです。
「学校は将来社会で役立つ力を育てるトレーニングの場」と位置づけるなら、学力の伸長は当然のこととして、キャリア教育の充実と共に忍耐力を身につけさせることが重要になってきますが、今後、これらの課題に果敢に挑戦していかなければと思っています。
高校三年生にとってはまさに大学受験の正念場、高校二年生も志望校を絞り込む段階、また中学三年生も高校受験が迫ってきました。それぞれの学年の生徒達が目先のことだけにとらわれることなく、将来のことを視野に入れて積極的な学校生活を送って欲しいものです。

2006年10月21日

あきらめさせない指導

10月初めより、先生方との個別面談を続けていますが、その中でよく聞く悩みは大きく分けると、繁忙からくる疲労感と生徒の意欲低下への対応ということになります。この二つは全く別の問題ではなく、互いに密接な関係があります。自分がやっていることの成果がはっきりと目に見える形になってくれば大きな達成感が得られます。そうすればいくら課題があっても、更に新たなチャレンジに向けて取り組もうという姿勢が生まれてくるものです。
生徒の意欲の低下という現象は、本校だけの問題ではありません。また、これは学校だけの問題ではなく、一般社会においても同様のことが起こっているのです。進路環境研究会が全国の先生方に対して行なった「最近の生徒の特徴として問題だと思うことは何か」というアンケート調査によると次のことがあげられています。
(1)計画的な学習ができる生徒はきわめて少ない。勉強の仕方を一から指導しなければいけない。
(2)受身な姿勢が目立ち、やれと言われたことはやるがそれ以上のことには取り組めない。
(3)やりたいことがわからない、またわかっていても行動に結びついていかない。
(4)周囲に言われたからやるといった自意識の低下が目立つ。
(5)こだわりがなく、すぐに諦める、安易に志望を下げる傾向が強い。
(6)全体指導では話が伝わらず、まるで他人事のように聞き流す。
このように今、全国にあるすべての学校の先生方にとって〝あきらめさせない指導〟を徹底していくことは共通の課題なのです。
しかし、これらの課題を羅列していくだけでは物事は解決しません。また、個々の先生の努力だけに頼っているだけでは限界があります。
これから学校全体の仕組みやシステムを変えることと教職員の能力を高めていくための具体策を検討していかなければならないと思っています。

2006年10月20日

漢検を明日に控えて

漢字検定2006.10.21 008.jpg 漢字検定2006.10.21 009.jpg

ここ数日、必死に漢字のテキストを手にしている生徒達が目立つようになってきました。明日10月21日(土)は高校3年生を除き全校一斉に漢字検定を実施することになっています。
この検定は財団法人日本漢字能力検定協会の主催で日本特有の漢字に対する理解を深め、漢字の普及につとめるという趣旨で毎年実施されています。本校では平成7年から全校生を対象に受検しており、実に10年以上の歴史を有する伝統の取り組みです。当時は受検者も少なかったこともあって、平成7年と8年には優秀団体賞や個人賞を受賞しました。
この漢検は次第に高校における単位認定や大学受験の際に人物・能力評価の基準としても活用されているようになった結果、最近では実に年間240万人以上が受検するようになってきています。受検者の内訳は中学生と高校生がそれぞれ40%と全体の8割を占めていますが、最年少は4歳、最高齢は94歳と幅広い年齢層の人が検定にチャレンジされているようです。大学入試に関する最新データによると「漢検」の取得を人物・能力評価の基準にとり入れているのは、479大学、973学部に及んでおり、今後ますます増加していく傾向にあります。
本校では、中学1年・5級、中学2年・4級、中学3年・3級、高校1年・準2級、高校2年・2級を基本の受検級とし、個々の能力に応じて上級を受検することにしています。合格率は3級まではほぼ90%、高校2年で2級に合格する者は40%になっていますが、高校卒業までには全員が英語検定と漢字検定の2級以上の取得を目指しています。
日常生活において漢字を使うケースは頻繁にありますが、これからも漢字のおもしろさを知ると共にあらゆる学習の基本として漢字の習得につとめて欲しいと思っています。

2006年10月19日

はかれない能力を育てる

 私はこれまで民間企業で勤務していたこともあり、社会で活躍されている数多くの方々とお会いしてきましたが、これらの方にはいくつかの共通点があるように感じています。
(一)人間としての土台である人生観や職業観、社会観、倫理観といったものが確立している。
(二)お金や地位、名誉、名声という個人的な野心や野望というものを超えた世の中のために尽くすという〝高い志〟に立脚した夢や目標を有している。
(三)この目標の実現に向けて自らを律し、日々血の滲むような努力を傾注している。
(四)絶えず素直に反省し、常に感謝やお詫び、思いやりの気持ちを忘れず行動している。
(五)挨拶やルール、時間・約束の厳守等の凡事徹底をはかっている、等
といったものです。
これらは、すべて一朝一夕に修得できるものではなく、その人の人生におけるさまざまな経験の中から培われてくるものであり、『点数ではかれない能力』なのです。私の経験から言っても、実社会においては単なる知識はほとんど役に立ちません。何故なら課題(問題)に対して、こうすれば良いという正しい答えはないため、自分自身で見つけ出さなければならず、また多くのケースでは問題そのものを探し出すことから始めなければなりません。しかし、現在の学校教育は『点数ではかれる能力』を重視する「知識偏重型」になっており、上級学校への進学そのものが目的になっているように感じます。人間を木に例えるとしっかりと根を伸ばすよりも枝葉を繁らせることに注力しすぎているのです。今後益々グローバル化が進展する中にあっては、学歴ではなく何ができるのか、何をしてきたのかという能力や実績が問われる時代になってきます。二十一世紀における最大の課題の一つは教育ですが、人間力に代表される『点数ではかれない能力』の養成から始めることが大切であると思っています。
       《2006年10月 兵庫県教育新聞への投稿文》

2006年10月18日

日本の常識?

食券購入風景2006.10.19 004.jpg 食券購入風景2006.10.19 007.jpg
(中高食堂での食券購入風景)

10月18日(水)、爽やかな秋晴れの下、全校朝礼を実施しました。部活動の表彰を行なった後、前回予告してあったインドネシアの食文化というテーマで話をしました。インドネシアの話は今回で4回目になります。当初はこれまで訪問した世界の色々な国のことを順次話していくということも考えました。しかし、気候・風土や宗教、生活習慣において日本の対極にあるインドネシアのことを集中して紹介することにより、日本という国のことを生徒達が知って欲しいという思いから一つの国に絞ることにしました。
インドネシアでは食事の際、赤唐辛子を蒸してすりつぶした《チャベ》という香辛料をふんだんに使います。初めて口にする日本人には驚くほどの辛さで、簡単にはなじめません。また、豚肉やイカ、タコ等鰭(ひれ)や鱗(うろこ)のない魚は食べませんし、日本の鮨(すし)や刺身に代表される生の魚料理もありません。私も日が経つにつれ当初はあまり口に合わず敬遠していたインドネシア料理を好んで食べるようになりました。年中酷暑の中で生活していると食欲増進のために不思議とスパイスの効いた辛い食べ物を身体が求めるようになるのです。この他にも断食月(ラマダン)、富める者が貧しい者に与えることが当たり前の相互扶助、四人まで許されている妻帯、毎日五回の礼拝等独特の生活慣習や決まりがあります。このように日本人から見れば不思議に思うことは数え切れませんが、これらのルーツを紐解くと、すべて気候風土や宗教といったものとの密接な関係が認められます。
インドネシア.bmp インドネシア2.bmp

 私達には知らず知らずの間に日本人としての価値観や生活習慣が刷り込まれており、これらが「日本の常識」になっているのです。そして自分達と異なる価値観や生活習慣については非常識と考え排除しがちなのです。
しかし、これからグローバル化が進展する中にあっては、相手のことを十分理解し異質なものを受け入れるという柔軟な姿勢が必要です。
生徒達が社会に出る頃には、日本以外の人と共に生活や仕事をすることがますます増えてくることでしょう。「共生」という気持ちを育てて欲しいと思っています。
 次回からは日本の文化と言う切り口で話をする予定です。

2006年10月17日

公開授業旬間始まる

授業風景2006.10.18.2限 012.jpg 授業風景2006.10.18.2限 006.jpg

今週月曜日(16日)から公開授業旬間がスタートしました。本校ではお互いに授業を参観することにより、他の良いところを取入れるという趣旨で研究部が主催して授業の公開を行なっています。実施の方法は、(1)職員室内に時間割表を張り出し希望者が参観にいきたい時間に名前を記入する (2)授業参観後はコメント・カードを作成し、授業者に手渡すと共に質問があれば記入する (3)授業者は質問についての回答を参観者にフィードバックする (4)コメント・カードを研究部が回収し整理する というものです。また、授業参観の際の参考とするため授業者はあらかじめ自分なりの「課題・目標」を授業目録カードに記入の上、提出することになっています。
今回のテーマは、最低一人一回は他の先生の授業を見に行く。一人一回は他の先生に授業を見てもらうということですが、あくまで先生方の自主性を尊重しています。
授業風景2006.10.18.3限 002.jpg 授業風景2006.10.18.3限 008.jpg

 本日、私も何人かの先生の授業を参観しましたが、それぞれ創意工夫を凝らしておられるのがわかりました。先生方にとっては自分の授業の合間を縫っての参観となるためなかなか時間がとれないというのが悩みですが、他人の授業を見ることは多くの点で随分参考になる筈です。先生にとってまさに〝授業は命〟。他の良いところは積極的に取入れるという姿勢で、先般実施した授業アンケートの結果等も考慮しながらそれぞれの授業を磨いていって欲しいものです。
 この旬間は26日までとなっていますが、私もこの機会に多くの授業を見学し気の付いたことを伝えていきたいと思っています。

2006年10月16日

なせばなる

 人間であれば誰でも「充実した人生を送りたい」「成功したい」と思うのは当然ですが、何も努力せずじっとしていては、いつまで経っても夢はかないません。現在、スポーツ、文化、芸術、政治、経済、医学といったさまざまな分野で活躍している人は数多くいますが、これらの人達から直接今日までの経緯をお伺いしたり、自叙伝を読み返してみると必ずしも順風満帆であったわけではありません。むしろ失敗の連続であり、これらを乗り越えてやっと成功したということがわかります。まさに〝今成功している人はこれまで最も失敗の多かった人〟と言っても間違いはありません。
 松下電器の創業者である松下幸之助氏はよく周囲の人に「僕には失敗がない。何故なら成功するまでやり続けるからだ。」と言っていました。またある時に
代理店の社長が「商売がうまくいかない。儲からない」と嘆くのを聞いて「あなたは血の小便をしたことがありますか。それまで真剣に商いをしているのですか。」と答えたそうです。これを聞いた代理店の社長は言われるほどの努力をしていない自分自身を恥ずかしく思い必死になって働き立派に会社を立て直したとのことです。
もうひとつ、「一%の才能と九十九パーセントの発汗」で有名な努力の人であるエジソンのエピソードについて紹介します。彼が発明したものの中で白熱電球は人類への貢献度が非常に高い発明品のひとつですが、彼はこの発明を完成するまでに万をはるかに超す失敗をしたと言われています。白熱電球の完成のための最大の難関はフィラメントでしたが、これに最適の物質を探し出すために世界中から集めた数千にものぼる物質を試し、ついに日本の京都でとれる竹を使用することで白熱電球を完成させたのです。
 何事も途中で諦めてしまえば失敗で終わってしまいます。〝なせばなる〟という強い気持ちを持ち続けていくことが大切であると思っています。

2006年10月15日

鉄道の日

SL画像2006.10.16 002.jpg SL画像2006.10.16 003.jpg
SL画像2006.10.16 005.jpg SL画像2006.10.16 006.jpg
日本には多くの記念日がありますが、10月14日は「鉄道の日」と定められています。わが国の近代化に大きな役割を果たした鉄道は明治5年(1872年)新橋から横浜間を時速30kmで走ったのを記念して、1922年に「鉄道記念日」として制定されましたが、国鉄という色彩が強かったため、1994年に鉄道関係者が集まり名称を『鉄道の日』として今日にいたっています。
今回この鉄道の日を取り上げたのは、実は本校にとって鉄道との縁は極めて深いからなのです。
本校の敷地の北側には阪急宝塚線、南側にはJR宝塚線(福知山線)が通り、南西には阪急平井車庫がある等鉄道とは非常に近い位置になっています。
通学する生徒は、安全面を考慮し阪急雲雀丘花屋敷駅から専用通路・改札を通って学園内に入ることができるようになっており、〝駅から直結〟という交通の便の良さは、本校の大きな特色の一つになっています。
また、学園を訪問された方は、鉄道関連のモノがいろいろ保存・展示してあるのに気づかれると思います。文化館横にはSL車両、体育館前にはSL動輪、小学校下駄箱には列車のプレートがあり、これらを見るだけで日本の鉄道の歴史を学ぶことができます。
そして、鉄道と関係の深い本校には他の学校ではあまり見られない「鉄道研究部」があり、中学1年から高校3年まで15人の部員たちが活動しています。活動の特色は、学園外でのさまざまなイベント参加です。去る10月8日(日)も阪急川西能勢口駅ホームで、鉄道模型運転会を開催しましたが、300名以上の方々が来場されました。次回は、来年の春に川西能勢口駅で開催されるイベントに参加の予定です。
現在はモータリゼーションが急速に進んできていますが、日本の近代化をもたらした鉄道の歴史や素晴らしさを改めて見つめ直してみたいものです。

2006年10月14日

第一回高等学校入試説明会

P1010727.jpg P1010746.jpg
10月14日(土)、本年度二回目となる高等学校の体験授業と第一回の入試説明会を開催しました。午前中の体験授業には約80名の生徒が参加し、二班に分かれて国語と理科の授業を受講しました。多くの生徒にとって高校の授業は初めてですが、熱心に興味深く先生の話を聞いていたようです。
授業の後は見学を兼ねて食堂で昼食を摂っていただき、午後1時からは講堂で入試説明会を実施しました。この説明会には400名を超える生徒と保護者の皆さんに参加いただきました。土曜日ということもあり、ご両親でお越しになっておられる方も多かったようです。
今回の説明会では先般の中学の入試説明会とほぼ同様、最初に私から日本と世界の現状と10年、20年後の姿について話した後、各先生方から来年度からスタートするコース制の変更やカリキュラム、授業時間数についての詳細、進路状況、入試制度における留意点等の説明を行ないました。約1時間半にわたる説明会でしたが、終了後保護者の方から多数の質問が出され、進学に対する関心の深さが感じられました。説明会の後は、いくつかのグループに分かれて校舎内の施設見学やクラブ活動を見ていただきましたが、各人がそれぞれの印象をお持ちになったのではないかと思います。
受験生にとって高校入試は人生における最初の大きな試練かも知れません。しかし、これからの人生においては様々な試練が待ち受けています。悩んでいる人もあると思いますが、今は「人生における節づくりの絶好の機会」であると前向きに受け止めて欲しいものです。
受験までにはまだまだ多くの時間が残されています。これから地道な努力を続けていけば学力は必ず伸びます。来年度、雲雀丘学園でお会いできることを心より願っています。

2006年10月13日

上(将来)から物事を見る

10月に入り、AOや推薦入試を受験する生徒が増えてきました。これらの生徒に対しては進路部や担任が自己紹介書や志願書の作成、面談等の個別指導を行なった後、最終的には私が動機付けも含めた面談指導を実施しています。生徒の中には助言に基づき自分なりの考えや発言の内容を整理し、再指導を依頼してくる者もありますが、授業との関係もありなかなか時間の調整がつきません。そのため本日も昼休みを利用して面談指導を行ないました。入室の仕方や挨拶、頭髪、服装といった基本的な指導から受験志望の動機やこれまで特に注力してきたこと等の質問を行ないましたが、前回に比べるとかなりの成長の跡が見られ心強く感じました。しかし、気になるのはほとんどの生徒にとって将来の夢や目標といったものは、まだ明確になっていないということです。勿論これから大学での勉学を通じて将来の道を探ることになると思いますが、“とりあえず”という考え方ではやるべきことを絞り込むことはできません。まず将来の目標を設定する。その上で「いつまでに」「何を」「どうする」といった具体的なタイムスケジュールを作成するということが必要です。言い換えると、上(将来)から物事を見ることなのです。現状(下)から物事を見るとどうしても積み上げ方の無難な取り組みになってしまいます。
上から物事を見る習慣を身につけることができれば、将来どのような道に進んでも目標を達成する可能性は大きくなると思います。生徒達ができるだけ早く自分なりの目標を設定したうえで、上から物事を見るようになって欲しいと願っています。

2006年10月12日

天高く馬肥ゆる秋

新学年になって半年が経過し、まもなく前期の成績が各人にフィードバックされます。中学1年生や高校1年生にとってはそれぞれ入学後初めての通知簿を受け取ることになります。恐らくこの成績を見て一喜一憂することになると思いますが、考えて欲しいのは結果としての評価点よりもこれが導き出されるにいたったプロセスです。勿論、〝結果良ければすべて良し〟〝結果がすべてである〟という考え方もあります。しかし、結果だけを重視する姿勢には大きな落とし穴が待ち受けています。何故なら長い人生の中にはたまたま運が良くてうまくいったということがありますが、この経験は努力することの大切さを忘れてしまうからです。平均してみると努力なしに立派な成果が得られ続けることはまずありません。また仮に思わしくない結果であったとしても悲観する必要もありません。これをばねにして改善すれば良いのです。
大切なことは常に自分自身の取り組みを素直に反省したうえで、課題を明らかし、次に新たな計画を立て行動していくことなのです。「計画する」⇒「実際にやってみる」⇒「反省する」⇒「次の行動に結び付ける」ということは、学校における勉強だけではなくスポーツや芸事、仕事等においてもレベルアップのためには不可欠なのです。私のこれまでの経験を振り返っても、社会で活躍している人には必ずこの行動パターンが確立しています。学校は将来社会で役立つ力を育てるトレーニングの場であり、とりわけ中学、高校時代はすべての面において大きな成長が期待できる時期です。
 まさに今は天高く馬肥ゆる秋。前期の取り組みをしっかりと反省し、学業においてもスポーツにおいても大きく成長して欲しいと思っています。

2006年10月10日

オーストラリアの生徒をお迎えして

PA080040.jpg
10月10日(火)、オーストラリアのHennessy Catholic College(ヘネシー・カトリック・カレッジ)とMount Carmel School(マウント・カーメル・スクール)の学生9名と付き添いの先生方3名が来校されました。彼らは9月28日から10月11日迄日本に修学旅行に来ており、既に東京、広島、京都を歴訪し、先週末の7日から本校生徒の家庭でホームステイしていました。このホームステイ先の選定にあたっては、今年度のオーストラリア研修旅行参加者とこれまでのホームステイ登録者より募集しました。研修の趣旨は「それぞれの家庭での体験を通じて日本文化・生活を知る」ということでしたが、それぞれ貴重な経験をしたようです。職員朝礼で付き添いの先生を紹介した後、図書室で本校のオーストラリア研修旅行に参加した19名の生徒との交歓会を実施しました。歓迎のセレモニーにあたっては、司会者の指示に従ってあらかじめ用意していた新聞紙で作った兜(かぶと)の前にオーストラリアの生徒を案内したうえで、歓迎のスピーチ、続いて折り紙の実習を行ないました。まず折り紙について説明した後、紙鉄砲と立方体の作成にチャレンジしましたが、悪戦苦闘しながらもどうにか完成したようです。最後に、私がスピーチを行ない、『高い志が道を拓く』という直筆の色紙を記念にお渡ししました。しかし、この意味を説明するのが私の語学力では実に難しく、一応 “The strong will shall lead to a successful life“と訳しましたが、何かしっくりしなかったように感じました。
近年、急速にグローバル化が進展してきています。日本国内そのものが国際化することに伴い、益々相手の国のことを理解し積極的に受け入れていくことが重要になってきます。
本校においても、今回のようなホームステイの受け入れや海外留学、ニュージーランド・オーストラリア・カナダへの研修旅行等を通じて国際教育に注力していきたいと考えています。

2006年10月09日

体育の日の由来

校長通信を掲載するようになって半年が経過しました。本校は他校に先駆けてホームページを開設していましたが、その後随時の更新が行なわれていなかったため学校の教育活動の状況を十分お伝えすることができていませんでした。
そのため、今年度に入ってホームページの充実をはかるための体制づくりを進めることにしました。しかし、体制が整いさまざまな情報提供ができるようになるまでにはかなりの時間がかかります。従ってその間は私が「校長通信」という形でできるだけ学校情報をお知らせするということでスタートし、ある程度の体制が出来上がった以降は一週間に一度の頻度にしようと考えていました。ところが情報を発信すると多くの皆様からご意見やご感想が届けられるようになり、これが励みになってこれまで続いてきています。
情報は双方向性という特徴を有していますが、まさにこのことを実感している昨今です。その中にもっと学校で日本の文化や生活慣習といったものを教えるべきではないか、日本には素晴らしい四季があるにもかかわらず今は季節感がなくなってきている、服育も大切だが日本食の良さを伝える食育が必要なのではないかといった声が何人かの方から寄せられました。私もこれまで世界の多くの国を訪問していますが、その国の歴史や文化を理解するための手っ取り早い方法は暦を調べることです。
 今日は体育の日なので、この由来について紹介します。
最初は1961年に制定されたスポーツ振興法により、10月の第一土曜日を「スポーツの日」としていましたが、この日は祝日ではありませんでした。その後、1964年(昭和39年)に開催されたオリンピック東京大会の輝かしい成果と感動を記念して開会式が行われた10月10日を「国民がスポーツに親しみ、健康な心身を培う日」として1966年国民の祝日に定めました。その後2000年(平成12年)からは『ハッピーマンデー法案』の制定により第二月曜日が体育の日とされています。参考までに、日本の観測史上晴れる確率が最も高い日が10月10日で、この前後に運動会をする学校・団体が多いようです。
 また節分を基準に一年を24等分して約15日ごとに分けた『二十四節気』というものがあります。代表的なものは「春分」「立春」「夏至」「立秋」「秋分」「冬至」といったものですが、暑い盛りの挨拶である「暑中見舞い」を立秋以降は「残暑見舞い」に変える等日常生活のあらゆる場面において二十四節気と接しているのです。なお10月8日は「寒露」で草花に冷たい露が宿るという意味で秋も深まり、農作物の収穫も行なわれます。これからも機会を見つけてこのような事柄にも触れていきたいと思っています。

2006年10月08日

慶應義塾大学に3名が入学内定

「先生、内定の通知を受け取りました。本当に有り難うございました。」はち切れんばかりの笑顔で生徒達が報告にやってきました。本年度の大学受験は、先日慶應義塾大学のAO入試にチャレンジしていた3名全員が合格という幸先の良いスタートとなりました。AOとはAdmissions Officeの略であり、単なる点数ではかれる学力を判定するペーパー試験重視の従来型の入試とは異なり、受験生の個性の掘り起こしを狙った論文や面接、ディベートを中心とした選抜方法を採用する等新しいスタイルの入試です。慶應義塾大学では、時代を先取りし日本で初めてAO入試を導入されましたが、今では多くの大学で実施されるようになってきています。
 私は、「おめでとう。良かったね。でも大切なのはこれからだよ。気を抜かずに今にしかできないことをしっかりやるようにして下さい。」ということを伝えました。今回は慶應義塾大学との連携講座を受講した生徒の中から受験者を選抜し、進路指導部や学年団が中心になって指導を行なってきました。最終段階においては私自身も個別に指導を行ないましたが、AO入試への対応についてはこれからも改善していかなければならない点が多々あると感じています。
近年、大学受験においてAO入試を目指す生徒が増えてきていますが、一部には基礎学力の修得をおろそかにし、受験テクニックに走る傾向も見られるようです。しかし、基礎・基本が身についていなければ、折角大学に入学しても期待した成果は得られないと思います。あくまでしっかりとした基礎学力がベースになければなりません。
本校においてもAO入試や推薦入試を選択する生徒に対して、来年度以降しっかりと基礎を固めた上で早い段階から個別指導を行なっていきたいと考えています。

 また今日にいたるまで、慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部の先生方には実にきめ細かい暖かいご指導をいただきました。心より感謝申し上げます。

2006年10月07日

鳥取県校長総合研修

鳥取講演.jpg
10月6日(金)、鳥取県研修センターにおいて校長総合研修が開催され、〝特色ある学校経営~学校経営のビジョンとリーダーシップ~〟というテーマで講演しました。今、校長通信を書いていますが、帰り大雨のため列車の到着が遅れたため本日中に掲載することができないかも知れません。
鳥取県での講演は前回(平成17年)の教頭総合研修に続いて二回目になります。現在、鳥取県では『「ありがとう」素直に言える豊かな心』をスローガンに掲げ、心の教育を推進されており、今回の研修には約130名の高校・中学校・小学校の校長が参加されました。
最初に教育長から〝鳥取県教育の目指すもの〟というテーマでの話がありました。鳥取県の財政は非常に厳しいが、本年度当初予算の18.6%が教育費に当てられている。教員の配置率は全国2位であり、この中の大部分が人件費で占められている。教育の目指すものは〝社会で生きていく力〟を育てることであり、自分の人生を切り拓いていくための学力の養成が必要である。高校を卒業して就職した者のうち、3年後の離職率は51%であり、二人に一人が退職している。この実態から見ても社会の一員としての自覚が欠落し、我慢することができなくなっている。といった内容を紹介されました。そして、このような状況を改善していく鍵は家庭・地域を巻き込んだ教育にあり、そのためには教員の資質向上をはかることが何よりも大切であるということを話されました。
続く分科会において私は、社会のトレンドをしっかり押さえた上で、どのようにして新しい学校づくりを進めていくべきかという切り口で講演を行ないました。学校づくりのポイントは、「どのような学校にするのかというビジョン」「戦略の構築」「中期の視点に立った計画」「当該年度計画とスケジュール」「計画したことがどのように実施され、その反省として次なる手をどのように打っていくかというPDCA管理」です。約2時間にわたる講演でしたが、「3つの小学校を再編統合することになっているが、どのような点に留意したら良いか」「体力・気力共に衰えてくるベテラン教員をどのように活性化していけば良いか」「評価育成システムを学校づくりに生かしていくために校長として心がけていかなければならない点は何か」等の質問が出されました。
 鳥取県はこれといった私学がなく公教育が主体です。過疎化が進む中で教育の果たす役割は極めて大きなものがあります。IT化やグローバル化が進展する中で、県民が一丸となって活性化をはかる、言い換えると地球規模の視野に立って地方の良さを生かす《グローカル》な取り組みが求められているように感じました。

2006年10月05日

第4回教員研修会の実施

 10月4日(水) 駿台予備学校の吉田知史(さとし)氏にお越しいただき、本年第4回目となる教職員研修会を開催しました。テーマは“進学実績向上への取組事例と今後のご指導に向けて”です。同氏は西日本教育事業推進部の統括責任者をされており、全国の学校での講演は、年間実に50回を超えるとのことで、色々な学校での取組事例をつかんでおられます。
 最初に、2006年度の大学受験を振り返って、“受験人口が’92年121.5万人から75.3万人に減少”“現役主体の試験が鮮明に”“科目の平均点が大幅アップ”“国公立大全体の志願者は0.5%減にもかかわらず、難関10大学は3.1%増”となっており、2007年度はセンター試験が難化するのは必至であるとの現状を説明されました。
 続いて、昨今教育制度が大きく変化する中で、多くの学校で実施されている独自の取り組みを紹介されました。具体的な事例として、優秀な生徒確保のための広報活動の強化や学力の向上をはかるための個別指導、とりわけ自学自習に向けた取り組みや早期における進路目標の設置、保護者への対応等を説明いただきました。更に、本来の生徒指導は“生徒の自己実現に向けて出来る限りのサポートをすること”であり、そのためには基礎を徹底すること、継続した仕掛け作りを行なうこと、目標を最後まで下げさせず諦めさせないことが不可欠である。また、高い学力はきちんとした生活態度にこそ立脚するものであり、生徒の育成のためには先生が迫力で生徒に立ち向かうことが何よりも重要であるということを約一時間半にわたって話していただきました。
 色々な意味で参考になることが多かったように思いますが、本校においても学力向上をはかるための早期のオリエンテーション、勉強合宿、練成講座、各種の補習等さまざまな取り組みを実施しています。また、部活動においても剣道部、硬式テニス部、ギター・マンドリン部、放送部等は顧問の先生方のひたむきな努力で全国大会に出場できるレベルになっています。学業においても部活動においても先生方の情熱がなければ決して成果には結びつかないのは当然です。何と言っても教員の“ゆるぎない志”や“熱意”がポイントであり、
一人ひとりの教員が“無限の可能性を引き出す”という強い思いで生徒に接していけば必ず良い方向に進んでいくということを改めて痛感した一日でした。

2006年10月04日

ゆでガエルになるな!

10月4日(水) 後期の始業式にあたって次のような話をしました。
 
「いよいよ今日から後期が始まります。始業式にあたって、今日は『ゆでガエルになるな!』という話をしたいと思います。おたまじゃくしから大きくなるカエルの話です。カエルは敏感なようですが、実はものすごく鈍感な生き物です。カエルにとって一番快適なのは23℃位の温度ですが、この状態ならいつまでも水の中でじっとしています。ところが、このカエルを10℃高い33℃のお湯に入れると驚いてすぐに飛び出します。次には時間をかけて1℃ずつ温度を上げていきます。24℃、25℃と温度が上がり、33℃になってもカエルは飛び出しません。そして、飛び出さなければと思っていながら温度が40℃、50℃になっても飛び出すことが出来ず、最後には“ゆでガエル”になってしまいます。 
 月日の経つのは本当に早いもので、新しい学年になって既に6ヶ月が過ぎてしまいました。この4月には中学生に入学した人、高校に入学した人、2年生や3年生になった人もそれぞれの思いを持っていた筈です。
 〝皆さんはこの4月にどのような目標を持っていましたか。〟それぞれ、中学生になったら、高校生になったら、2年生になったら、3年生になったら自分はこうしたい、このようになりたいと考えていたと思います。6ヶ月経った今はどうですか。目標は達成できていますか。5月のゴールデンウィークが終われば頑張ろう、夏休みになったら始めよう、夏休みが終わったら・・・、前期が終わったら・・・と次々と先延ばしにしていませんか。このままでは駄目だ、何とかしなければ、飛び出さなければと思いながら飛び出せずにお湯の中につかっていませんか。
 このままの状態が続いていけば、ゆでガエルになってしまいます。“自分がぬるま湯につかっている”“駄目だ”、と思ったらすぐに行動に移すことが大切です。後期のスタートにあたって、これまでの生活を反省し思い切ってぬるま湯から飛び出してください。必ず道は拓けると思います。」

 生徒達が自分自身の目標を持って、力強くスタートしてくれることを祈っています。

2006年10月03日

私学の特色

10月3日(火)、昨日に続いて何人かの公立高校と中学の校長先生や教員の方とお会いしました。約1年ぶりの方や初対面の方もありましたが、皆さんからは異口同音に「この数年間の教育界の変化は過去2、30年に匹敵するように感じる。その上教育の基本が『ゆとり教育』の方向に進みだしたかと思うと今度は逆に見直しの動きが出始める等揺れ動きすぎる。また次々と施策が打ち出されてきているが、現場になじみにくいものが多いため、校長や教頭といった管理職の精神的な負担は以前に比べ格段に大きくなってきている。また一部の府民や市民の声を気にするあまり、さまざまな制約があってやりたいことができない状況がある。その点、私学は良いですね。」というような言葉が発せられました。私も4年間、公立高校で勤務しましたが、それまで民間企業で勤務しており、過去の教育界の実態を知らないこともあって正直なところそんなに急激な変化であるという印象は受けませんでした。ただし、縦割り行政で各部署からそれぞれ指示が出されるため、教育現場でシステム化していく力がなければ学校経営はうまくいかないと感じていました。
これに対して私学の場合は裁量の度合いも大きく自分達の学校に合った独自の施策を選択することができますが、当然のことながらその前提は〝生徒を育てる〟ということでなければなれません。そのためには、世の中のトレンドや教育界の動きをしっかりとつかんでおくことが必要です。私学の場合は公立に比べて転勤がないため、どうしても同質化しがちです。常に教職員がアンテナを張り巡らして、新しい情報を入手し日々革新していくという風土づくりが大切であると思いました。

2006年10月02日

総合力の発揮

9月30日(土)、午後から雲雀丘学園としてのPTA協議会が開催されました。本学園には雲雀丘と中山台の二つの幼稚園と小学校、中学校・高等学校があり、約2600名の児童・生徒が在籍しており、今回の協議会には各校種のPTA役員代表と校園長、教頭等22名が出席しました。PTA会長、常務理事からの挨拶の後、それぞれの校種毎に4月以降取り組んできたPTA活動の内容についての報告があり、続いて各校園長から現在抱えている課題と取り組んでいる教育活動についての報告を行ないました。最後に質疑応答や提言という形で閉会しました。会議終了後、PTA役員の方との立ち話の中で、〝これまでこの会議は報告に終始しており、今回のように色々な意見が出たのは珍しい〟ということをお聞きしましたが、正直なところ学園全体という視点に立ってもっと掘り下げた話し合いが必要なのではないかと感じています。
私も丁度、本校での勤務が半年になりましたが、雲雀丘学園を取り巻く環境が大きく変わってきていることを実感しています。これまでは幼稚園から小学校、中学・高等学校にいたるまでそれぞれの校種で独自の取り組みを推進してきています。しかし、これからは児童・生徒の募集から教育活動の充実、進路の実現にいたるまでの学園としての中期の視点に立った展望いわゆる『グランド・デザイン』が不可欠です。
そのためには互いに課題を共有し、この解決のためにどういう施策を展開していくかについての徹底的な論議をしていかなければなりません。まさにこれからは「学園としての総合力の発揮」が重要になってきます。
どうか皆様からも忌憚のない前向きのご意見をいただきたいと思っています。