こんな本を読んでみませんか 7
言葉について取り上げた一昨日の続きです。今日は漢字の本です。といっても、君たちが4月から悩まされている漢字や漢検の問題集ではありません。古代漢字の研究の第一人者である白川静さんが監修し、最後の教え子である山本史也さんが著した「神さまがくれた漢字たち」という本です。残念ながら白川静さんは昨年亡くなられてしまいましたが、大阪の公立高校の先生である山本史也さんによって、「白川文字学」とよばれる考え方が継承されています。
漢字は象形文字ですから、「山」や「川」という文字に本物の山や川の姿を見つけることができると思います。また、「人」という文字は、人と人とが支え合う形からきているのだと、某学園物のテレビ番組で知った人も多いと思いますが、「白川文字学」では「元は少し首をすくめた人を横から見た、うつむき加減の姿勢」からできた形で、神に試され、操られ、時には傷つけられた姿を意味したらしいです。今までに聞いた常識が崩されてしまいそうでしょう。身近な漢字のそんな生々しさがたくさん出てきます。漢字の創造は、人間と神や精霊との交感、つまり信仰や儀式の中から生まれてきたというのが「白川文字学」の底辺にあるのです。
「女」という文字も、単に産む「性」を表すだけではなく、「ものの豊穣なるさま」から穀物の豊かな実りとを結びつけた、古代の信仰、さらには宇宙の創生までも意味するように広がっていきます。その考え方はやがて、「母」,「身」,「免」,「后」などの漢字と関わっていく様子は、まるで推理小説を思わせるような展開で、ちょっぴりドキドキするようなスリルさえ感じるかもしれませんよ。ただし、本屋さんでは手に入りにくくなっているようです。学校の図書室か近所の図書館で探してみてください。 A.M.