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2011年12月21日

生物演習 授業の補足①

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 生物演習は前半2日間で「生化学」,後半3日間で「発生学」をそれぞれ別の担当者が行う予定です。今日は生化学の1回目ということで、ATP合成には基質レベル,酸化的リン酸化,光リン酸化の3種類があることや、基質レベルはキナーゼが、後の2つはF型ATP合成酵素が関わっていることを説明しました。授業では呼吸と光合成を別々に説明しましたが、今日の内容はミトコンドリアと葉緑体の共通性がポイントになります。H+の電気化学的ポテンシャルがATPの合成に寄与しているとする「化学浸透説」を提唱したPeter Dennis Mitchell は1978年にノーベル化学賞を受賞しました。ATP合成酵素の「回転触媒仮説」を提唱したPaul Delos Boyer も1997年にノーベル化学賞を受賞しています。

2011年12月19日

選特生物 授業の補足25

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 文系は生物Ⅰの教科書が終わりました。一番初めに戻って、細胞の単元から復習することになりました。先日の模試でも出題されていた顕微鏡操作を確認しているところです。頭では理解できているつもりでも、実際にやってみるとなかなか思い通りにはいかないようです。ミクロメーターを使ってオオカナダモの細胞の大きさを測定しているのですが、かなり苦労していました。その割には楽しそうですけどね。

2011年11月20日

選特生物 授業の補足24

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 遺伝子組み換え技術を使って合成されているペプチドホルモンの例として、インスリンと成長ホルモンを挙げました。インスリンはサンガー Frederick Sangerが最初にアミノ酸配列を決定したタンパク質です。21個のアミノ酸残基からなるA鎖と30個のアミノ酸残基からなるB鎖が2ヶ所のジスルフィド結合でつながった構造をしています。サンガーはタンパク質のアミノ酸配列(一次構造)を決定するサンガー法の確立が評価され、1958年にノーベル化学賞を受賞しています。最初に遺伝子組み換え医薬として開発されたのもインスリンで、1982年にアメリカで承認されました。
成長ホルモンは191個のアミノ酸残基からなるタンパク質です。脳下垂体前葉から分泌され、不足すると成長ホルモン分泌不全性低身長症(小人症)を引き起こします。以前は遺体から抽出されていましたが、1988年に遺伝子組み換え技術により開発されました。

2011年10月16日

選特生物 授業の補足24

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 中間考査が終わりました。最終日の試験が返却されるとは思っていなかったかもしれませんが、早急に振り返りをさせたかったので、文理とも返却しました。平均点はまずまずですが、それぞれ課題は少なくありません。特に理系では【1】【4】で扱った目や耳などの受容器が今ひとつでした。受容器が受け取る刺激の大きさが変化しても、感覚神経の興奮の大きさは変化しません。刺激が大きくなったら興奮の頻度が変化するだけという基本的なところを押さえていないといけませんね。気柱の共鳴は物理Ⅰでの既習範囲ですが、戸惑ったようすがうかがえました。週明けに解説プリントを用意しておきますが、自分でもう一度取り組んでおきなさい。
 【6】で出題したテトロドトキシン(TTX)とテトラエチルアンモニウム(TEA)について解説します。TTXは一般にフグ毒として知られていますが、真正細菌によってつくられるアルカロイドです。習慣性がないので、鎮痛薬として医療用に用いられます。TEAは電位依存型カリウムチャネルのブロッカーです。本問ではこれらの神経毒についての知識は必要ではなく、グラフから何を阻害しているのかを推定することが求められています。TTXでは活動電位が発生していないことからNa+チャネルが、TEAでは過分極undershootが見られないことからK+チャネルがそれぞれ阻害されていることを推測できます。静止電位や活動電位がどのようにして発生しているのかをイオンの動きとともに復習しておいてください。

2011年10月03日

ノーベル賞発表の季節⑤

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 今年のノーベル医学・生理学賞は、米スクリプス研究所のBruce A. Beutler博士,仏ストラスブール大の Jules A. Hoffmann博士,米ロックフェラー大のRalph M. Steinman教授の3人が受賞したようです。京都大学の山中伸弥先生は今年も選から漏れたようです。
 Steinman教授は異物をのみ込むように自らの内部に取り込み、枝のような突起を持つ「樹状細胞dendritic cell」を73年に発見しました。樹状細胞は分解した物質を白血球などの免疫物質に「抗原」として提示し、白血球が効率的に攻撃できるようにしています。2010年にトムソン・ロイターがノーベル賞候補として取り上げていました。
 Hoffmann博士は96年にTollという遺伝子が感染症予防に重要な役割を果たしていることを、ショウジョウバエを使って発見しました。Beutler博士は、細菌を認識して免疫機構を作動させるTollに似たたんぱく質「Toll様受容体」をマウスの体内で発見したことが評価されました。この2人の業績は2008年にトムソン・ロイターがノーベル賞候補として予測していました。そのときに一緒に名前が挙がっていたのが大阪大学免疫学フロンティア研究センター拠点長の審良静男先生です。ノーベル賞の同時受賞は3名までのようなので、こちらも残念な結果になったようです。

ノーベル賞発表の季節④

 今日は医学・生理学賞の発表です。トムソン・ロイター社の予想では次の3つのトピックから選ばれるというものでした。
① 「慢性骨髄性白血病(CML)に対する革新的な分子標的治療薬であるイマチニブダサチニブの開発」
② 「ティッシュエンジニアリング/再生医療分野における先駆的研究」
③ 「哺乳類における胸腺機能の発見およびT細胞とB細胞の同定 および 2つのタイプのTリンパ球、TH1およびTH2の発見と宿主免疫応答制御における役割」
昨年は「幹細胞の発見、および人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発」を手がけた山中伸弥先生の名前が上がっていたほか、「食欲と代謝の調節ホルモン、レプチンの発見」「免疫応答の主要な調節因子である樹状細胞の発見」などがトピックとして示されていました。トピックが重複していないことも驚きですが、共通して再生医療や免疫のしくみに関わるものが目に付きます。

2011年09月23日

ELCAS2011 Report1

 台風の影響で3日に予定されていた1回目の講座が17日に延期されていました。4名の参加者の専攻はそれぞれ異なります。今回は生物学を専攻したY.S.さんのレポートです。

 ELCAS第1回目はインダクション・セレモニーの後、各分野に分かれて体験コースが行われ、私は遺伝学を専門とする鹿内教授の「植物の重力屈性について」の講義を受けました。
 植物の重力屈性には、植物ホルモンの一種であるオーキシンが関係していて、オーキシンの不均等な分配によって、重力屈性が引き起こされます。また、最近の研究で、根と茎における重力感知の仕組みが異なっていることがわかってきたそうです。根では、根端にあるコルメラ細胞で感知しますが、茎では内皮細胞で感知します。これらの細胞の中にあるアミロプラストという平衡石の役割をもつ細胞小器官が重力方向の変化に対応して細胞内を転がることが、重力方向の感知に関わると考えられています。実際に、重力屈性の仕組みを確認するために、シロイヌナズナを横に倒し10分おきに写真を撮る実験もしました。撮影を10回ほど続け、その画像をつなげると徐々に茎が上を向いているのがよく分かりました。自分の目で確認することができて良い経験になりました。今後のELCASも楽しみです。

 この内容を理解するのに参考となる重力屈性の説明が大阪市立大学理学部にありましたので、リンクを貼っておきます。担当されている保尊隆享教授の名前に懐かしさを感じました。大学で植物生理学を教えていただいた方でした。
 植物細胞の環境応答

2011年09月17日

選特生物 授業の補足23

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 神経系を扱い始めたので、ニワトリGallus gallusを材料に脳の観察をおこないました。始める前にホルマリン標本などを見せて、解剖をおこなう意味について話をしましたので、生徒それぞれが生命について考える機会にもなったようです。水煮になっている鶏頭をぬるま湯で洗い、アルコールで脂を除いたものを材料にしました。生々しさはありませんが、姿はそのままなので、心理的な抵抗がある生徒もいたようですが、全員が脳を取り出し、観察・スケッチまでおこなうことができました。終了後に手を合わせている生徒が印象的でした。

 鳥類は哺乳類と同じように脳が発達した動物です。脳重量を体重比で比較すると、魚類・両生類・爬虫類は低いのに対し、鳥類や哺乳類は高いことが知られています。ただ、鳥類は爬虫類の脳構造を維持しながら脳を大きく発達させたのに対し、哺乳類は大脳新皮質が発達しました。(分子マーカーを使った研究で鳥類には大脳皮質がないというのは誤りであるといわれています。)特にヒトを含めた霊長目では脳溝Sulcusとよばれる大小の溝とそれに挟まれた脳回Gyrusの区別がある有回脳を持ちます。

2011年09月10日

選特生物 授業の補足22

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 神経の伝導や伝達を扱い始めました。研究の歴史については、新潮新書「イカの神経ヒトの脳みそ」(後藤秀機著)に詳しいので、それを参考にしてください。図書室にも置いてあると思います。

 さて、神経毒について触れました。神経細胞の興奮は細胞膜に存在する膜タンパク質によってイオン分布が変化することによって起こります。膜タンパク質であるイオンチャネルに作用する物質は神経毒として作用し、麻痺 paralysisを引き起こします。例えば、フグ毒の成分であるテトロドトキシンTTXはナトリウムチャネルを抑制します。
 また、神経細胞間は神経伝達物質によって興奮の伝導がおこります。神経伝達物質としてアセチルコリンAChを挙げました。クラーレ(ツボクラリン)は神経末端の筋接合部でアセチルコリンと拮抗するため、骨格筋を麻痺させます。放出されたアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼによって速やかに分解されますが、サリンのような神経ガスは酵素の阻害剤としてはたらくため、アセチルコリンが除かれず、神経伝達を阻害します。

2011年08月21日

チョウの写真は送りましたか

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 特進コース理系の生物選択者には問題演習の課題とは別に、自然調べを出しておきました。日本自然保護協会(NACS-J)が毎年おこなっている自然調べですが、今年のテーマは「チョウの分布 今・昔」です。どこにでもいるような気がするチョウは、気候変動や地域の自然環境の状態を知る手掛かりとなる指標生物です。全国規模でデータを蓄積することで、分布や経年変化を把握することができます。一人で取り組むには大変ですが、全国で一斉に調査する中に参加することで、生態調査を実体験してもらうのが狙いです。学校にもすでに十数人が写真を送ってきてくれました。9月末までおこなわれていますので、未だの人もこれから間に合いますよ。

2011年08月06日

選特生物 授業の補足21

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 文系に出している課題についてです。テーマが重いこともありますが、立場の違いによってさまざまな意見があり、どれが正解とは言えません。患者,患者の家族,医療者のそれぞれが自らの経験を元に正しいと信じていることを主張しているのですから、それを踏まえて自分の意見をまとめて欲しいと思います。新書を5冊以上読むように指示していますが、どこまで進んでいますか。iPS細胞から精子を作り、体外受精させることがマウスとはいえ現実に可能になっている以上、文系だから知らないではすまされないと考えています。

臓器移植
 脳死と臓器移植法
  中島みち 文春新書140
 私の臓器はだれのものですか
  生駒孝彰 生活人新書033
 腎臓放浪記 臓器移植者からみた「いのち」のかたち
  澤井繁男 平凡社新書300
 臓器移植をどう考えるか 移植医が語る本音と現状
  秋山暢夫 講談社ブルーバックスB-900
 脳死・臓器移植の本当の話
  小松美彦 PHP新書299
 先端医療のルール 人体利用はどこまで許されるのか
  橳島次郎 講談社現代新書1581
 生体肝移植 京大チームの挑戦
  後藤正治 岩波新書新赤版804
 臓器は「商品」か 移植される心
  出口顯 講談社現代新書1549

生殖医療
 生殖医療のすべて
  堤治 丸善ライブラリー285
 不妊治療は日本人を幸せにするか
  小西宏 講談社現代新書1602
 代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳
  大野和基 集英社新書0492B
 生殖革命
  石原理 ちくま新書170
 生殖革命と人権 産むことに自由はあるのか
  金城清子 中公新書1288
 生命観を問いなおす エコロジーから脳死まで
  森岡正博 ちくま新書012
 生殖医療と家族のかたち
  石原理 平凡社新書531
 遺伝子医療への警鐘
  柳澤桂子 岩波現代文庫学術83

終末医療
 「尊厳死」に尊厳はあるか ある呼吸器外し事件から
  中島みち 岩波新書新赤版1092
 患者革命 納得の医療納得の死
  中島みち 岩波アクティブ新書6
 リビング・ウィルと尊厳死
  福本博文 集英社新書0131B
 終末期医療はいま 豊かな社会の生と死
  額田勲 ちくま新書031
 安楽死と尊厳死 医療の中の生と死
  保阪正康 講談社現代新書1141
 安楽死のできる国
  三井美奈 新潮新書025
 脳死・クローン・遺伝子治療 バイオエシックスの練習問題
  加藤尚武 PHP新書086
 死にゆく人のための医療
  森岡恭彦 生活人新書090

2011年08月03日

選特生物 授業の補足20

 京大理学部の講座でも出てきた光合成反応についての補足です。光合成には太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する明反応light reactionと、二酸化炭素から糖を合成するカルビン回路Calvin cycleがあります。明反応のしくみがわかりにくかったようなので、補足しておきます。

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 葉緑体には複数の色素が含まれていますが、光合成の中心となるのがクロロフィルaです。クロロフィルbやカロテノイドは補助色素ともよばれ、利用できる光の波長域を拡げています。これらの色素はすべてチラコイドthylakoid膜に組み込まれ、光捕集系とよばれる複合体に組織化されています。ある色素分子が光量子photonを吸収すると、その色素の電子の1つがエネルギーを得ます。このことを電子が励起したといいます。通常、励起した電子はすぐに余分なエネルギーを熱エネルギーの形で失い、基底状態に戻ります。
 チラコイド膜では、クロロフィルが他の分子とともに組織化されて光化学系photosystemを構成しています。光化学系にはクロロフィルaやクロロフィルb,カロテノイドからなる数百の色素分子の集団が存在します。この色素分子の集団は光を集めるアンテナとして機能し、光量子が色素分子に吸収されると、エネルギーは反応中心reaction centerに到達するまで分子から分子へと移動していきます。反応中心はクロロフィルaとそれに隣接する一次電子受容体とよばれる分子からなります。一次電子受容体は反応中心のクロロフィルaから捕捉したエネルギーを使って、ATPとNADPHをつくります。水を分解する光化学系ⅡやNADPHを生成する光化学系Ⅰ,水素イオンの濃度勾配によってATPを生成する光リン酸化については、授業中に説明しましたね。

 詳しい説明を読みたい人は担当まで声を掛けてください。「エッセンシャルキャンベル生物学第4版」を参考にしているので購入しても構いませんが、高校生が参考書にするにはちょっと高いね。

2011年07月20日

グレゴール・メンデル生誕189年

 今日がメンデルの誕生日のようですね。Googleのtopページのロゴを見て気づきました。特進コースで生物の授業を受けているみなさんには馴染みの名前ですね。彼が1865年に発表したのが有名なメンデルの法則です。科学技術振興機構が提供しているWebラーニングプラザに遺伝の教材があるのでリンクを貼っておきます。FAQや自己診断テストもあるので、復習がてら取り組んでみてはどうでしょうか。
 ライフサイエンスの基礎-遺伝-

2011年07月18日

国際生物学オリンピック

 世の中は女子サッカーの快挙に沸いていますね。すばらしい粘りでした。

 さて、第22回国際生物学オリンピックが台湾で行われましたが、参加した高校生4名がメダルを手にしたと報道されていました。金メダルが3,銀メダルが1でこれまでの最高です。こちらも快挙ですね。
 その予選は昨日11日に全国95ヶ所で行われています。本校からも55期生が2名受験しています。彼女たちは4月から「遺伝子の分子生物学」「キャンベル生物学」「生物学オリンピック問題集」などの教材を使って個別に取り組んできました。結果は8月までわかりませんが、無理だと諦めるのではなく、チャレンジしてみようとする姿勢こそが大切なのだと思います。予選の問題がweb上にアップされているので、リンクを貼っておきます。自宅で取り組んでみてはどうでしょうか。
 日本生物学オリンピック2011 予選問題解答・解説

2011年06月26日

選特生物 授業の補足19

 選抜特進・文系の生物の授業では修学旅行で学んだ自然環境を扱っています。4泊5日の間に奥山,里山,農村,都市部を移動しながら、自然環境の中で人々がどのように生活を営んできたか、これからどのように自然と接したら良いのかを考えてもらいました。学校の周辺にも、雑木林のような里山が残されています。里山について扱ったビデオを国連大学環境省が製作しています。金曜日に書いてもらうことになっている小論文の参考になればと思い、リンクを貼っておくことにします。

 豊穣の里山 6:34
 里地里山 ~自然と共に生きる知恵・命を育む場所~ 11:21
 SATOYAMAイニシアティブ 7:15
 

2011年05月22日

選特生物 授業の補足18

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 試験前だというのに実験室の予約は一杯です。隣の生物実験室では高3が細胞周期の測定をやっていました。化学実験室では、キューネ発酵管をつかったアルコール発酵の実験と,ツンベルグ管をつかったデヒドロゲナーゼの実験をおこないました。見慣れない器具に戸惑いはありましたが、実験そのものは手早いものでしたね。
 アルコール発酵で二酸化炭素の確認はうまくできたようですが、エタノールの検出はヨードホルム反応がなかなか出なかったようです。基質の糖を glucoseとsucroseの2種類用意しました。glucoseは単糖類、sucroseは二糖類ですから、コウボキンの分解に差が出ますよね。また、デヒドロゲナーゼの実験では、コハク酸から外した水素が本来のNADではなく、メチレンブルーに渡されて色が消えます。色の変化が大きいので、やっていて楽しかったようです。

2011年05月19日

選特生物 授業の補足17

 酵素の性質を確認するために、カタラーゼを使って実験をしてもらいました。酵素液には大根おろしの絞り汁を使いましたので、実験室に結構臭いが広がったのですが、実験をしている最中はあまり気にならない様子でした。酵素と無機触媒であるMnO2を比較しながら、温度やpHの影響を調べてもらいました。大根片を使ったときに反応が低下した理由は考えてもらおうと思います。酵素と基質が複合体をつくらないと、反応は起こりません。土曜日に脱水素酵素の性質を調べてもらって、生化学実験は終了です。

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2011年05月04日

選特生物 授業の補足16

 文系は神経のはたらきに入りました。前回は神経細胞の間の伝達には化学物質がはたらいていることを学びましたね。末梢神経である体性神経や副交感神経にはアセチルコリン,交感神経にはノルアドレナリンがはたらいています。脳の中でも同じように神経伝達物質によって、興奮の伝達がおこっているのですが、これが何種類もあることを話しました。例えば、セロトニンを分泌する神経細胞は30~40%とかなり多い。このセロトニンのはたらきが少ないとハーム・アボイダンスが高い、つまり心配性で不安になりやすいことがわかっています。プロザックやブスピロンのようなセロトニンのはたらきを良くする薬も開発されています。

 感情や気分など人間の脳のはたらきを、生物学や化学で説明することが可能になってきています。先日おこなわれた薬物講習会の内容も、知識があれば防げることでしたね。興味がある人は東京大学大学院総合文化研究科の石浦章一先生「遺伝子が明かす脳と心のからくり」を読んでみてはいかがですか。実際に文系生命科学の講義で取り上げた内容をまとめています。図書室に置いているといいね。シリーズには「生命に仕組まれた遺伝子のいたずら」「遺伝子が処方する脳と身体のビタミン」があります。

2011年05月02日

大阪市立大学公開講座レポート

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 4月29日に大阪市立大学でおこなわれた「数学や理科の好きな高校生のための市大授業」に参加してきた生徒のレポートです。写真はそのときにお土産でもらった最新の国際層序表と授業をした江﨑教授の論文(英語)だそうです。大学の講義を実際に体験することで、より明確な目的意識を持って大学進学を考えることができるのではないでしょうか。

 前半後半の2科目を受けました。前半は地球学科の江﨑洋一教授による『5億年前に生じた地球生物システムの大変革』というテーマで、原始的な陸上生態系が誕生したことによって、海洋生態系に「オルドビス紀の大放散」と呼ばれる地球史上最大規模の海生無脊椎動物群の多様化現象が生じたかを解説してもらいました。後半は生物学科の後藤慎介准教授による『時間生物学への招待:さまざまな生物時計とそのしくみ』というテーマで、RNAi(RNA干渉法)といった技術を使って、コオロギやカメムシの遺伝子発現を抑制し、生物時計のメカニズムを調べる話でした。どちらも様々な研究成果を交えたもので、大学の授業のおもしろさや雰囲気を存分に味わえた一日でした。 M.I.

2011年04月30日

選特生物 授業の補足15

 生化学に入りました。タンパク質の性質を理解してもらうために、手順書だけ渡して、各自でしてもらいました。最初は恐る恐る薬品を扱っていましたが、10分もすると、手際よく進めないと終わらないことに気づいたのか、各自がてきぱきと操作するようになりました。

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 取り組んでもらったのは、次の6つの実験です。
① 試料の調製(卵白水溶液とゼラチン溶液を使用しました)
② 窒素と硫黄の検出
③ タンパク質の変性 (左端の試験管はエタノールで変性し白濁)
④ ビュレット反応(左から2番目・3番目の試験管で紫色に呈色)
⑤ キサントプロテイン反応(左から4番目・5番目の試験管。それぞれ黄色と橙色に呈色)
⑥ ニンヒドリン反応(右端の試験管で紫色に呈色)

 実験しているときは色が変わって楽しいんですね。レポートは連休明けの5月6日(金)に提出してもらうことになっています。3つの呈色反応の反応の違いが区別できていたらいいですね。ヒントは芳香族アミノ酸をあまり含まないゼラチンと一般的なタンパク質であるアルブミンの違いです。また、ニンヒドリン反応で紫色が濃くでている試験管はタンパク質ではなく、グリシンを使って実験してもらいました。

2011年04月17日

スプリングサイエンスキャンプ報告

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 東日本大震災の影響で中止となった施設も多く、春は鹿児島県にある鹿屋体育大学で受講した特進コースの1名だけとなりました。実際に研究している現場に行くことで、自分の進路をしっかりと考えるきっかけとなったようです。

今回が初めての参加で緊張や不安で一杯だった。地震の影響で参加できなかった人たちもいたので、その分頑張ろうという気持ちにもなれた。テーマが「スポーツ科学の最前線」だったので、化学物質を使用して、人間に最大限の力を与えることだと思っていた。しかし、講義を受けると、効率の良いトレーニングや運動をすること、機械を使って分析することで、力を生かすことだとわかった。
 陸上の短距離で使われる筋肉である速筋は先天的なものもあるが、中・長距離で使われる筋肉である遅筋はトレーニングで速くできる。ドーピングがよく話題になるが、筋肉を増やせばより強くなれる。血液中に含まれるミオスタチンという物質を取り除くことで筋肉の増強がおこなわれることを知った。この物質の発見のきっかけは食糧問題で、スポーツとは関わりがないことだった。そんなことを聞きながら、自分のからだを壊してまで世界一になることの意味を考えていた。
 二日目におこなった、三次元で見る人の動きやハイスピードカメラにはとても興味が沸いた。三次元で見る人の動きは、不思議なものばかりだった。普段見ることができない床から見た映像、腰や腕の位置の変化を捉えた映像などだ。ハイスピードカメラは1秒間に約1000コマという速さで撮影が出来る。自分はサッカーのシュートのフォームを撮った。他にも、いろいろな競技をスローで見ることができ楽しかった。この2つの機械を組み合わせるとさらにすごいことができるようだ。
 今回のサイエンスキャンプで学べたことはすごく貴重であり、これからの生活の中でも生かせることがいくつかあったので、活用してみたいと思った。 N.D.

2011年04月05日

春らしい陽気に誘われて

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 京都府立植物園に行ってきました。満開のサクラ…に見えるかも知れませんが、いずれもサクラではありません。上の2枚はアーモンド,中の2枚はアンズ,下の2枚はスモモです。よく似ていますね。これらはいずれもバラ科で生物学的にも近い仲間なのです。

 サクラ Prunus subg. Cerasus
 アーモンド Prunus dulcis
 アンズ Prunus armeniaca
 スモモ Prunus salicina
 ウメ Prunus mume

2011年03月22日

科学って楽しい

 関西広域バイオメディカルクラスターが中高生を対象に開いたセミナーに参加した生徒からレポートが来ましたので、紹介します。「科学の進歩が医療を変える」というテーマで、幹細胞やワクチン,クローン技術などを解説するものだったようです。科学者が生き生きと自分の専門領域を語るところを見てもらえれば、好きなことを学ぶ楽しさがわかるかなと思っています。

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写真は「マイクロマニピュレーターを使って卵子に体細胞の核を移植する疑似体験」のようすです。

三連休の最終日、3月21日に兵庫県神戸市のポートアイランドにある神戸臨床研究情報センター(TRI)にて『科学の進歩が医療を変える』という講演会がありました。様々な種類の医療技術(再生医療・ワクチン開発・クローン技術)で最先端を行く3名の先生と理化学研究所の先生によるミニレクチャーと計4つの話を聞きました。最近よく新聞で見かけるES細胞とiPS細胞の違いや特性、問題点など知っているようで知らなかったこと、またワクチン開発の難しさなどを学びました。中でも面白かったのが、クローン技術の講演でした。世界初のクローン動物「ドリー」やそれに対抗してクローンマウスをつくったことなどをおもしろおかしくお話してくれました。最後にマンモスのクローンが技術的に可能だろうとおっしゃった時には心の奥に熱いもの感じました。━太古の生き物が現代によみがえる。小さい頃夢見た世界が近づいている。━最先端の医療技術に強い関心を抱いた素晴らしい講演でした。M.I.

ちなみに、関西広域バイオメディカルクラスターは理化学研究所,京都大学,大阪大学,神戸大学,国立循環器病センター,医薬基盤研究所などの大学・研究所と、製薬企業・ベンチャー企業が連携したものです。

2011年03月19日

国連高校生セミナー

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 今日、JICA兵庫で「国連高校生セミナー」がおこなわれます。本校からは、高校2年生2名,高校1年生3名がそれぞれチームをつくって参加することになっています。今年は「国際森林年」ですので、「世界の森林を守るため、今私たちにできること」をテーマに、専門家とのワークショップや英語でのグループディスカッションがおこなわれる予定です。当初は14:00から開始する予定でしたので、中学卒業式後に様子を見に行くことにしていましたが、震災の影響で講師の先生が変更となり、10:00からの開始となりました。環境に関心をもつ生徒たちが参加していますので、どのような意見を発表してくれるのか、楽しみにしていましたが、聴くことができなくて残念です。

2011年03月06日

選特生物 授業の補足15

 金曜日におこなった学年末考査【5】の解説です。

 アミラーゼは多糖類であるデンプンを二糖類であるマルトースに加水分解する酵素です。(マルトースを単糖類であるグルコースに分解するのは、マルターゼという別の酵素です。) 酵素の主成分(アポ酵素)はタンパク質なので、高温にすると熱変性によって立体構造が失われ、酵素としてのはたらきも失われてしまいます。これを失活といいます。問2・問3ではアミラーゼは失活しているので、デンプンは分解されません。したがって、ヨウ素反応が起こり、青紫色に呈色します。
 グリコーゲンはαグルコースが長くつながった多糖類です。デンプン(アミロペクチン)よりも分岐は多いですが、グルコースどうしを結合しているグリコシド結合をアミラーゼは加水分解することが可能です。一方、セルロースはβグルコースが長くつながった多糖類です。セルラーゼで加水分解されますが、多くの動物は持っていないので、セルロースを分解することはできません。問5・問6は基質特異性を考える問題ですが、後者が分解されないことは予想できたものの、前者が分解されると予想するのは難しかったかもしれません。

2011年02月04日

「みんなで夏の川さんぽ」結果レポートが届きました

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 選抜特進コースで夏に生物の課題の一つとして、「自然しらべ」に参加してもらいました。これは、15年前の長良川河口堰運用をきっかけとして、日本自然保護協会が5年おきに実施しているものです。4回目となる今年は河原の昆虫や外来生物に注目して川の変化を調べるものでした。全国で2246人が参加し、391ヶ所の川の様子を調べることができたようです。自分で足を運んで調べたものが集計されて手元に戻ってくれば、身近な問題として関心をもつことができるように思います。送付されてきた資料は参加者だけではなく、クラス全員に配布しました。(ネットでも一部を見ることができます。)
「みんなで夏の川さんぽ」結果レポート
YOMIURI ONLINE 2010/8/14 生き物から学ぶ水辺

2011年01月21日

選特生物 授業の補足14 センター試験解説後半

続きです。
第2問
問4 実験から導かれる結論を問う問題です。知識だけでは解けません。実験1で分かることは、標識された細胞が口と骨片の周辺にしかないことから、これらが小割球に由来する細胞であることだけです。このことに矛盾しない記述は②だけですね。
問5 こんどは複数の実験から結論を導き出します。実験2では未受精卵に精子の運動を激しくする作用があることはわかりますが、未受精卵の何がはたらいているかはわかりません。実験3でゼリー層を取り除くと運動を激しくする作用が消え、実験4でゼリー層だけ加えると作用が見られることから、ゼリー層にこのはたらきがあることが予想されます。同様に先体反応もゼリー層によっておこることがわかります。以上のことから⑤が正しいと言えます。
問6 実験5では精子の運動性の上昇を引き起こす物質Xと先体反応を引き起こす物質Yの半透膜を透過する性質を調べています。半透膜は分子が小さければ透過しますが、大きければ透過できません。激しく運動したので、外側の海水にXは透過しています。先体反応が起こらなかったので、Yは透過できなかったと考えたいところですが、この選択肢はありません。透過したけれども量が少なかったかもしれない可能性も考えると、Yについては分からないとなりますから②を選ぶことになります。
第3問
問1 授業で扱っているところなので易しかったでしょう。ハーシーとチェイスの実験では、殻のタンパク質のSと内部のDNAのPを放射性同位体で標識して、菌体内に入った物質を特定したのでした。
問2 ハーシーとチェイスの実験以前に遺伝子の本体がDNAであることの可能性を示した実験は、アベリーが肺炎双球菌で形質転換を引き起こす物質を調べたものでした。
問3 常染色体上にありますから、伴性遺伝の可能性はありません。子の世代の右端の夫婦について、ウェット型どうしでドライ型が生まれていますからウェット型が優性で、bはヘテロであることがわかります。aはウェット型ですが、ホモかヘテロかは不明です。したがって⑤が正解となります。
問4 伴性遺伝の性質を考えます。女子は両親からX染色体を受け取りますから、父親が形質Hを示さなければ娘は形質Hを示しません。しかし、男子は母親からX染色体を受け取るだけですから、母親がヘテロならば形質Hを示しませんが、息子は1/2の確率で形質Hを示すことになります。
問5 組み換え価の計算です。劣性ホモを掛け合わせた検定交雑をおこなっているので、(4+4)/(21+4+4+21)*100=16%です。
問6 kv間とpk間の組み換え価が出ているので、pv間の組み換え価が出れば三点交雑によって3つの遺伝子の位置関係は求まります。リード文と同じようにヘテロと劣性ホモの組み合わせを考えればよいので、①になります。

2011年01月20日

選特生物 授業の補足13 センター試験解説前半

 大問が5問、小問が32問でした。こちらも60分間のテストですから、1問を2分弱で解くことになります。昨年度は易しくて、平均も69.7点と高かったのですが、今年は問題文が長くなり、図が増えたこともあって昨年度よりは少し難しくなりました。大問は「細胞」「生殖と発生」「遺伝」「刺激に対する動物の反応」「環境と植物の反応」からそれぞれ20点分ずつの出題です。現在の授業の進度では第3問まではできそうです。

第1問
問1 細胞の構造に関する問題です。諸説ありますが、核の発見者はブラウンです。核,ミトコンドリア,葉緑体は二重の生体膜構造が特徴です。核膜には核膜孔とよばれる穴があいていますから、正解は⑦になります。ひだ状の突起というのはミトコンドリア内膜のクリステを指しています。
問2 細胞に含まれる色素についての知識問題です。①クロロフィルは有機物合成(光合成)に関与します。③ヘモグロビンは赤血球に含まれます。④色覚に関与するのは錐体細胞です。
問3 サフラニン液は木化した細胞壁を赤く染める染色液です。
問4 体細胞中の細胞の大きさの変化とDNA量の変化のグラフが与えられています。DNA量の変化から体細胞分裂のステージを考えればそれほど難しくありません。DNA量が2倍になる時期が間期の一部であるS期、半減するのは終期が終わったときです。凝縮した染色体が観察されるのは前期なのでク,細胞質分裂が完了すると細胞の大きさが半減しますからコとなります。
問5 卵割の特徴の1つが分裂中に成長しないので、割球(娘細胞)が半減することです。DNA量の変化は体細胞分裂と同じですから、グラフは①になります。
問6 卵細胞には卵割に必要な物質があらかじめ準備されているので、G1期はなく、G2期も短いのが特徴です。分裂速度は速いので①は誤りです。また、同調分裂がおこなわれるのも特徴ですから、②も誤りです。相同染色体が対合するのは減数分裂の特徴ですから④も誤り。ウニは第三卵割まで等割で、8細胞期は同じ大きさの割球になります。(16細胞期の細胞は3種類の大きさに分かれます。)
第2問
問1 ①は雄原細胞ではなく精細胞、②は助細胞ではなく卵細胞、④は胚乳ではなく胚、⑤は無胚乳種子でも重複受精はおこなう。⑥は有胚乳種子でも子葉がある。ということで③が正解です。
問2 精細胞から精子に変形するときに細胞質の多くを失いますが、核・ミトコンドリア・細胞膜はありますから、③④⑤は誤り。減数分裂第2分裂の途中で停止した二次卵母細胞が受精しますが、精子の方は減数分裂が完了しているので②も誤りです。
問3 灰色三日月環は第1卵割が始まる前にでき、原口背唇部になる部分です。受精で消失するとする①は誤り。両生類の分化の決定は胞胚期と比較的遅い調節卵なので②も誤りですね。外胚葉が表皮と神経に分化するとき誘導に関わるのが中胚葉である脊索ですから③も誤り。眼胞が表皮を水晶体に誘導すると同時に自身は網膜に分化しますから⑤も誤りとなり、答えは④となります。初期の原腸には中胚葉の二次間充織になる細胞が含まれているのですが、この知識はなかったかもしれませんね。

センター試験生物の問題はこちら(YomiuriOnlineにリンクしています)

2011年01月10日

選特生物 授業の補足12

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 昨日の続きです。今日は核酸の分子構造について、もう少し補足をしておきます。核酸は糖・リン酸・塩基で構成されるヌクレオチドが重合してできた高分子です。糖はDNAではデオキシリボース,RNAではリボースが利用されています。デオキシリボース,リボースともに五炭糖に含まれる単糖です。この五炭糖の1位にプリン塩基やピリミジン塩基が結合したものをヌクレオシドといい、ヌクレオシドにリン酸基が結合したものをヌクレオチドといいます。

 塩基には大きく分けて2種類あり、六員環と五員環からなるプリン骨格をもつものがアデニングアニン,六員環からなるピリミジン骨格をもつものがチミンシトシンウラシルです。授業では、分子の大きさの違いと水素結合の数の違いに注目するように話をしましたが、有機化学を学んでいないので、イメージしにくかったかもしれません。それぞれの塩基の分子モデルにリンクを張っておきますので、参考に見ておいてください。

2011年01月09日

選特生物 授業の補足11

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 DNAが遺伝子本体であることの証拠として、Oswald Theodore Averyが1944年におこなった形質転換の実験と、Alfred Day Hersheyが1952年にMartha Chaseとおこなった実験が挙げられます。今年最初の授業では、形質導入について簡単に説明したのち、DNAの分子構造のうち、ヌクレオチドを解説しました。

 形質導入transductionはファージが感染した細菌に遺伝子を導入する現象です。細菌にファージやプラスミドなどのベクターを利用して外来遺伝子を導入することが可能となりました。これがバイオテクノロジーの発展に有意義であったことはいうまでもありません。大腸菌を利用した遺伝子組換えではDNAを特定の部位で切り出す制限酵素やDNA断片を結合するDNAリガーゼの発見とともに重要な基礎技術となりました。そのとき、ベクターに薬剤耐性遺伝子を導入しておくと、形質導入した細菌を選択的に得ること(スクリーニング)が可能になります。このような遺伝子をマーカー遺伝子とかレポーター遺伝子といいます。マーカー遺伝子には薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子には緑色蛍光タンパク質(GFP)やルシフェラーゼ遺伝子などがよく利用されます。緑色蛍光タンパク質は下村脩先生がオワンクラゲから抽出して有名になりましたね。薬剤耐性遺伝子としてアンピシリン耐性ampとテトラサイクリン耐性tetをもつプラスミドが最初の図に示しているpBR322です。

2010年12月12日

選特生物 授業の補足10

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 分子生物学に入りました。最初なので研究の歴史を年表でなぞりました。1958年にFrancis Harry Compton Crickが提唱したCentral dogmaがエポックメーキングとなって、一気に発展した様子は理解してもらえたと思います。Central dogmaは以前このブログで紹介していますので、復習しておいてください。
「選特生物 授業の補足 2」

 バイオの時代と言われて久しいですが、生き物に関わる研究で分子生物学の知見を無視することはできません。細胞,発生,遺伝,生理…どの分野においても、DNAやタンパク質などの高分子のはたらきを意識しながら研究を進めています。その研究が食品や医療だけではなく、材料工学やエネルギーにも関与している現状を考えると、来年、生物を選択した理系の生徒だけが学ぶ内容ではないと思います。中高生向けにバイオテクノロジーの可能性を解説したサイトを見つけましたので、参考にしてください。
財団法人バイオインダストリー協会「みんなのバイオ学園」

2010年12月04日

太陽電池を作ってきました

 期末考査中でしたが、京都でおこなわれた実験研修に参加してきました。テーマは「色素増感型太陽電池の制作」です。エネルギー問題が現実味を帯びている近年、太陽電池は非常に身近なものになりました。設置している家庭も増えていますし、本校でも高校校舎屋上に設置しています。これらの多くはpn接合型であるシリコン系のものがほとんどです。今朝の新聞にも世界最高効率の太陽電池の記事が載っていました。今回製作してきたのは、有機色素としてムラサキキャベツのアントシアニンを抽出し、それを酸化チタンに吸着させ、電解液と一緒にガラスに挟み込んでつくる「色素増感型」のものです。構造が単純で、材料も安価なため、現在普及している多結晶シリコンの1/10程度のコストで製造できると考えられています。

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 いずれ生徒のみなさんにも制作してもらうつもりですが、その前に少なくとも3つの知識を身につけてもらわなければなりません。1つ目は植物の光合成のしくみです。太古から太陽の光エネルギーを利用して来た植物から抽出した色素を使用します。クロロフィルやアントシアニンに光が当たるとどのような反応が起きるのかを理解することが必要です。これは生物の授業で生化学を扱うときに学びます。2つ目は電池のしくみです。電池は電子のやりとりである酸化還元反応によって説明できます。授業では化学反応を利用する化学電池を中心に扱いますが、光起電力効果を利用する太陽電池(光電池)にも触れる予定です。これは化学の授業で学びます。3つ目はエネルギー問題を含めた社会とのつながりです。科学の知識は社会に役立てるために使われます。社会に役立つ人材となるべき皆さんはそのために勉強しているはずです。話が長くなりました。では、月曜以降の試験も頑張ってください。

2010年11月23日

選特生物 授業の補足9

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 古典的なメンデル遺伝を一通り終えましたので、期末考査までの授業で変異や進化を扱っています。「遺伝」の単元では遺伝子は親から子へそのまま伝えられますが、「進化」の単元では遺伝子プールに含まれる遺伝子頻度が変化します。扱う時間が異なることがポイントになります。進化についての基本的な知識はJSTバーチャル科学館の「進化って何だろう」を参考にしてください。

 ヒトの進化については三井誠さんの「人類進化の700万年」を紹介しました。世界史でも最初の授業で扱いますが、新しい知見が増えるたびに書き換えられる分野でもあり、興味が尽きません。

2010年11月14日

選特生物 授業の補足 8

 授業で伴性遺伝を取り上げましたので、興味のある生徒により掘り下げてもらうために、福岡伸一先生が書いた「できそこないの男たち」という新書を紹介しました。タイトルは過激ですが、内容は、分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら≪女と男≫の≪本当の関係≫に迫る…というものです。光文社から出ています。

 福岡伸一先生の作品は専門的な内容を含んでいますが、文章が上手なので、それを意識させず、高校生にも読みやすいのではないかと思います。講談社現代新書から出ている「生物と無生物のあいだ」やNHKの番組から作られた「生物が生物である理由」などはお勧めかなと思います。

2010年10月05日

ノーベル賞発表の季節①

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 今年もノーベル賞が発表され始めました。医学生理学賞には体外授精IVFの先駆者であるRobert G. Edwards博士が選ばれました。世界初の試験管ベビーとしてセンセーショナルにマスコミに取り上げられたのは1978年のことでした。人工授精については、生殖医療についてレポートを書く夏の課題の一つとして挙げていたので、調べた人もいましたね。倫理的な問題を孕んではいますが、すでに不妊治療は一般的におこなわれており、それによって生を受けた人も珍しくはありません。

2010年09月30日

選特生物 授業の補足 7

FlowingRedBloodCells.jpg ABO式血液型の遺伝について説明したので、凝集反応についても併せて説明しました。

 ABO式血液型を決定する遺伝子は第9染色体に存在します。前駆体からH鎖を形成する遺伝子は第19染色体に存在し、それがそのまま修飾されなければO型になります。A遺伝子を持っている場合は、A型転換酵素が発現してH鎖がA鎖に修飾され、B遺伝子を持っている場合は、B型転換酵素が発現してH鎖がB鎖に修飾されます。

 A鎖やB鎖,H鎖といった糖鎖は赤血球だけではなく、通常の体細胞にも存在します。この糖鎖が免疫における抗原(=凝集原)となり、抗体形成の原因となります。例えば、A鎖をもたない人はA鎖に対する抗体が血漿中に形成されます。これが授業中に「凝集素α」と説明した物質です。凝集原であるA鎖を持つ赤血球が、凝集素αを含む血漿に入ると、「凝集反応」と呼ばれる抗原抗体反応が起こって、赤血球は互いに接着して塊状になるのです。

2010年09月20日

選特生物 授業の補足 6

 発生学を終わって、先週から遺伝学に入りました。前半は古典的なメンデル遺伝学を扱います。1865年にオーストリアの司祭であったメンデルGregor Johann Mendel がメンデルの法則を発表するまでは、遺伝形質は交雑とともに液体のように混じりあっていくと考えられていました。これを混合遺伝といいます。メンデルの業績はこれを否定し、遺伝粒子(彼はこれを element と呼びました。現在の遺伝子に相当します。)によって受け継がれるとする粒子遺伝を提唱したことです。

 国立遺伝学研究所に「遺伝学電子博物館」という生徒向けのサイトが用意されています。遺伝学がどのように社会とつながっているのかということに興味を持ってもらえればと思います。

2010年09月17日

サマーサイエンスキャンプ報告③

 農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センターで実習をしたR.H.くんのレポートです。

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 今回のサイエンスキャンプの中で最も印象深かったのは、慣行水田と有機水田における生態系の形成に大きな違いがあった点です。この二つの水田に生息する生物を調べる為、三つの方法で生物を採取して調べてみると、有機水田にはハエやヤゴ、クモなどの昆虫が多く見られた一方、慣行水田には昆虫がほとんど見られず、ヤゴなどの被食者となるカエルやオタマジャクシが多く見られました。これは、イネの害虫となるウンカの発生を抑えるために昆虫に効く農薬を使用したためで、農薬一つ使うか使わないかでここまで棲んでいる生物が変わり、それぞれの環境に応じて生物が多様な生態系をつくっていることに驚きました。
 また、水田の植物についても調べました。雑草や埋土種子の採取を行い、調べたところ、雑草は水生と陸生にわかれていて、このことを考慮すると畑から水田への転向によって埋土種子の発芽が抑えられ、元々水生雑草が少ないため、選択的な除草剤の使用で雑草の繁茂が防ぐことができ、植生を上手く利用すれば、慣行農法もありなのではないかと思いました。
 他にも、水田の全体の様子を調べるために簡易空撮気球を使って空撮をしました。上空からの写真を見ることでで、イネの生育状況がわかり、肥料の使用量を調整できるそうです。農業といっても、色々な分野が深くかかわっていると思いました。
 今、食の安全が注目されるようになり、その影響もあって有機農業に注目が集まっていると考えていましたが、実際、有機農業に期待されていることは他にもあり、半永久的に持続可能な農業というものを考えた時、慣行農業では化学肥料によって土壌荒れてしまうので限界があり、逆に有機農業は生態系を上手く利用することでそれが大いに可能だということ、農薬にアレルギーがある人が安心して野菜が食べられることなど、より広い点で期待されていて、農業でも何に対しても、広い視野で見ることが大事だとあらためて思いました。また、有機農業でも慣行農業でも作物の栄養価や味に大きな差が出ないこと、有機農業は慣行農業に比べて生産性が低くなってしまい、安定した生産を確保するために長い年月を要すること、有機農業を行っている農家に対して国からの補助が降りないことなどから、有機農業を行う農家が少ないといった問題もあるそうです。期待もあるけど、デメリットが多いのは一つの課題だと思いました。
 そして、研究者の皆さんが日々研究をしている現場に実際に行けたことは貴重な経験だと思います。本当に研究内容が多様で、それぞれとてもやりがいのある仕事だと思いました。また、この経験は自分に大きな影響を与えてくれました。とても充実した三日間でした。

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2010年08月31日

選特生物 授業の補足 5

実力考査【8】解説
 A槽のマルトース溶液とB槽のグルコース溶液を半透膜で仕切って放置するとB槽の液面が高くなったのは,B槽のグルコース溶液のほうが濃かったためです。問題文では質量濃度で与えられていましたが、ここで必要なのは浸透圧と比例関係にあるモル濃度であることに注意しましょう。ちなみにマルトースは二糖類で分子式はC12H22O11, 分子量は342ですから、単糖類であるグルコースの2倍近い質量を溶かさないと同じモル濃度にはなりません。
 次にマルターゼを加えると、1分子のマルトースは2分子のグルコースに分解します。つまりA槽のモル濃度は2倍になるので、B槽からA槽に向かって水が移動することになります。A槽の液面が高くなったのは、A槽に入っている液の浸透圧が大きくなったからなのです。

 原形質分離していたときのショ糖液の濃度は8.1g÷342g/mol÷50mL×1000mL/L=0.473mol/Lです。浸透圧と細胞の体積は反比例するのですから、等張液に浸したときの細胞の体積が1.5倍であるということから、等張液の濃度は0.473mol/L÷1.5=0.315mol/Lであると求めることができます。化学でモル濃度を学習したので、計算問題を入れてみました。

2010年08月18日

選特生物 夏の課題

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 生物の夏の課題3つは進んでいますか。3つめの「みんなで夏の川さんぽ」は、日本自然保護協会 NACS-Jが主催している参加型プロジェクトです。15年前に長良川河口堰ができたことがきっかけで、1995年から5年おきに川を対象とした自然調べをおこなっているもので、今年で4回目となります。環境保護と言っても、いろいろな目的をもって、さまざまな活動がおこなわれています。私自身は京都でおこなわれた自然観察指導員講習会に参加したときに四手井綱英先生から森林(里山)の話を聞いたことが印象に残っています。それまでは分子生物学というmicroの分野にしか関心がなかったのが、生態系というmacroの世界の扉を開いていただいた感がありました。知識も大切ですが、経験する中で何かを感じ取って、それを自分が何かを考えるときの材料にしてほしいと思います。川に触れることで、見つかった何かを2学期に教えて下さい。

2010年05月30日

選特生物 授業の補足 4

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Lynn Margulis 細胞内共生説を提唱

 生物界を5つに大きく分類する「五界説 Five-Kingdom System」を紹介しました。微生物や単細胞生物が知られるようになると、植物と動物に二分する分類体系には無理があると考えるようになりました。授業で紹介したのは、ホイタッカー Robert Harding Whittaker が提唱した「五界説」をマーギュリス Lynn Margulis らが修正したものです。

 マーギュリスは細胞内共生説を提唱したことでも知られています。これは真核生物のミトコンドリア,葉緑体,鞭毛が原核生物に由来するものであるという考え方です。(現在、鞭毛については否定されています。) ミトコンドリアが好気性細菌,葉緑体がシアノバクテリアをそれぞれ取り込んだものとする根拠は
 1 ミトコンドリアや葉緑体が二重膜で包まれていること
 2 ミトコンドリアや葉緑体は独自のDNAを持っていること
 3 ミトコンドリアや葉緑体によって生じる形質はメンデル遺伝に従わないこと(細胞質遺伝)
などが挙げられています。

2010年05月29日

環境宣言の日

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 F組では8時20分からの10分間で、なぜ今日が「環境宣言の日」なのかを、中学のときに環境大使として活動してくれた生徒たちに説明してもらいました。2年前、枝廣淳子さんに講演してもらったのが考えるきっかけになったこと、去年、カネデイアンアカデミーの生徒と一緒に活動して気づいたことなどが、55期生の中で共有されればと思います。

 生物の授業でも、なぜ「環境」に配慮する必要があるのかを考えてもらいました。「エコ」が流行だからではなく、自分たちがこれから生活していく上で「持続可能な社会」を実現していく必要があることに意識が向けばと思います。今年COP10が開催されることや高2での北海道修学旅行を意識して、「生物多様性」も学んでもらおうと考えています。参考資料として、グループごとにThink the earth paper Vol.5, Vol6を配布しました。数は限られますが、希望者に分けることができます。また、バックナンバーをウェブ上で読むことも可能です。
Think the earth paper はここをクリック

2010年05月27日

国際生物多様性年④

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 国際自然保護連合(IUCN)により立ち上げられた「Countdown 2010」によって製作された動画を紹介します。木・魚・ミツバチ・カエルのキャラクターが「生物多様性が私たちの生活とどのように関連しているのか?」についてコミカルに解説しています。生物多様性への取り組みは「2010年目標」のような政治レベルでの取り決めも重要ですが、私たちひとり一人が生物多様性の大切さを認識し、この保護に向けた行動を積み重ねていくことも大切であることに気づかされます。
生物多様性に支えられる私たちの暮らし

2010年05月25日

国際生物多様性年③

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 今日は海の生物多様性について紹介したビデオです。東京湾に棲むアナジャコという甲殻類が干潟の浄化作用に影響を与えているという内容です。普段、生き物のつながりを意識せずに生活している私たちにとって、身近な生物から学べることは多いのではないでしょうか。
いきもののつながり~海の生物多様性について学ぶ

2010年05月23日

国際生物多様性年②

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 月曜日から中間考査が始まります。目の前の勉強で忙しいかもしれませんが、何の為に学ぶのかを考えることも大切です。なぜ国際的なレベルで環境問題に取り組むのでしょうか。29日の環境宣言の日まで、参考になりそうなサイトや動画を紹介していきたいと思います。
 今日は国連環境計画(UNEP)が作成した5分間のビデオです。音声は英語ですが、日本語字幕がついています。
2010年 国際生物多様性年

2010年05月22日

国際生物多様性の日

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 「国際生物多様性の日」(International Day for Biological Diversity)は,国連の提唱する国際デーの1つで,1993年,地球上の生物の多様性の保全などを目的とした「生物の多様性に関する条約」が発効したことを記念して設けられました。2000年までは条約の締結された12月29日でしたが、生物の多様性が失われつつあること、また、それに纏わる諸問題に対する人々の認知を広めるために5月22日に変更されました。今年は名古屋で生物多様性条約第10回締結国会議(CBD/COP10)も開催されます。 →生物多様性

 また、翌週土曜日5月29日は雲雀丘「環境宣言の日」です。環境問題を意識せずに生活することは難しくなってきています。機会あるごとに自分たちで取り組めることは何かを考えてもらおうと思います。生徒会では「マイエコ運動」を提唱しているようです。知ること,考えることも大切ですが、それを行動に移して初めて意味をもつのではないでしょうか。

2010年05月12日

選特生物 授業の補足 3

 細胞膜の構造として「流動モザイクモデル」を説明しました。生体膜は二層のリン脂質でできており、そこにさまざまなタンパク質が浮かんでいます。タンパク質は、膜を通じて物質を移動させるゲートの役割をしたり、外からの情報(化学的シグナル)を受け取ったりします。細胞への物質の出入りの調節をタンパク質がおこなっているという話は次回にします。

 大きな分子が膜を通過するには、その分子を膜で包んで小胞をつくる方法を取ります。細胞外にあるタンパク質やウイルスなどは細胞膜に包みこんで細胞の中に取り込み、リソソームと融合して細胞内消化されてしまいます。これをエンドサイトーシスといいます。マクロファージの食作用や原生動物の食胞が例としてあげられます。一方、細胞内のタンパク質は合成された後、ゴルジ体に貯蔵され、小胞に包まれて細胞膜の方へ移動し、細胞膜と融合して細胞外へ分泌されます。これをエキソサイトーシスといいます。ニューロンでの神経伝達物質の分泌などが例としてあげられます。細胞膜という境目があるのではなく、ダイナミックに活動していることに注目してほしいと思います。

2010年05月02日

選特生物 授業の補足 2

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Francis Harry Compton Crick(右) 1962年ノーベル生理学・医学賞受賞

 遺伝情報の流れを「セントラル・ドグマ」ということばで説明しました。ちょうどYouTubeに、国立科学博物館の企画展「DNAの先へ!生命の暗号・ゲノム解読の歴史と未来」で流していた動画「セントラルドグマ ~ゲノム情報からタンパク質ができるまで~」がアップされているのを見つけましたので参考にしてください。制作は事業仕分けで話題になっている独立行政法人理化学研究所です。小中学生の男の子には受けそうなナノマシーンでメカニカルに描かれていますが、知らない言葉がたくさん出てくるかもしれません。雰囲気だけ感じ取ってもらえれば…と思います。

2010年04月25日

選特生物 授業の補足 1

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Albert Claude 1974年ノーベル生理学・医学賞受賞

 土曜日の授業では、「細胞分画法 Cell fractionation」 について説明しました。この方法は、1930年にアルバート・クラウデによって考案されました。細胞膜が壊れて内容物が溶出するように細胞を破砕し、ろ過して細胞膜を取り除き、質量によって分画されるように遠心分離に供するというものです。クラウデは遠心で得られた液を特定の質量ごとの分画に分け、特定の分画が特定の細胞小器官を含んでいることを発見しました。細胞の構造と機能に関する発見によって、1974年にクリスチャン・ド・デューブらと共にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。