危機をバネに飛躍する
東日本大震災が発生してから既に一年が経過しましたが、この大震災は我々日本人の意識を根底から覆すことになりました。大地震やこれに伴う大津波に対する備えの弱さ、絶対安全であると言われていた原子力発電の危険性、サプライチェーンの分断による効率化を追求してきた生産システムの弱点、復興対策に遅れをもたらした政府のリーダーシップの欠如等数々の問題点が一挙に噴出しました。
振り返ると、日本経済はバブル崩壊以降〝失われた20年〟と言われているように停滞が続いています。とりわけGDPは増えずジリ貧状態の中での小手先の改善に終始してきています。多くの人がこのままではまずい、何とかしなければと感じていたのは間違いないと思います。しかし、一方で、まだまだ何とかなるという甘い考えで課題を先送りしてきたということではないでしょうか。言い換えると完全に〝ゆでガエル現象〟に陥っていたのです。今回の大震災はぬるま湯から〝飛び出せ〟というメッセージを我々に突きつけました。この結果、迅速に動いたのは生き残らなければならないという危機感を持った企業です。そして、短期間のうちにサプライチェーンを修復すると共に製造拠点を見直し、工場の国内外への移転等を実施しました。しかし、この一方で、政府の対応を見ると、一年経った今も、がれき処理や原発の補償等のスピードが遅く、被災地の本格的な復興は進んでいません。また、電力供給という点でも明確な方向性を示せない状況が続いています。ビジョンやあるべき姿を明確にし、誰が何をいつまでにどうするというステップを作ることが必要ですが、これはまさに経営そのものです。
今回の大震災を真正面から受け止め、この危機をバネにして将来の飛躍に結びつけることが大切であると感じています。